オーディオルームには音質を決定する多くのパラメータがありますが、音楽を
クリアに鳴らすための基本要素はたったの二つ。
1.床・壁・天井が振動してまき散らす振動音の量が少ないこと。
2.フラッターエコーの量が少ないこと。

楽器演奏者のオーディオルームや音楽制作を行うスタジオであれば、三つ目の要素として、
定在波が原因の低域の伝送特性の凸凹が少ないこと(特に小さい部屋の場合)。が加わります。理由は下記表の周波数が強調されたり、聞こえにくくなったりするからで、イコライザを使う音楽制作では大きな障害要因です。
<聴感への影響が大きい基本定在波の周波数 29〜77Hz/12〜4.5畳> MJ 2014.04 前田欣一郎

但しコントラバスの基音が表の数値と重なったとしても倍音まで同じ影響を受けるわけではないので、基音と倍音から成る楽器の音が完全に消えたりはしません。
音楽鑑賞用のオーディオルームであれば定在波を弱める対策(定在波パネル:STW1500の設置)で必要十分な聴感特性が得られます。
因みに、24畳の広さがあれば、12畳の表にある横51Hzは34Hz、縦34Hzは26Hzに低下し、定在波の影響が無視できる帯域にシフトします。
また上記表には高さ(天井〜床)方向の定在波の周波数が含まれていません。定在波による音抜けの影響が最も大きい位置が上下の真ん中なので、団地など天井が低い部屋ではソファーなど座面が沈み込む椅子にして耳の高さを床に近づけると定在波による低音不足を最小限にできます。斜め天井であれば天井が高い方にリスニングポイントを設ければ、真ん中から遠ざかるので低音不足が防げます。
左右の壁から等距離の真ん中、上下(天井/床)の真ん中、のように、リスニングポイントに真ん中が二つ重なると低音が消える音域が広くなり、低音不足が顕著に表れます。
低音不足を感じたなら、部屋を横使いにして後ろの壁にリスニングポイントを近付けましょう、定在波の影響で壁際は低音が増加するエリアです。
それでも低音不足が少しも改善されなければ、大きな壁全体が一体となって100Hz以下で振動したときに発生する、共振音域の音圧ヌケの可能性を疑う必要があります。部屋中どこの場所でも特定の音域の音が聴きとれなくなります。
この症状の部屋で残響時間を測定し周波数特性のグラフを描くと、ノーマルな部屋であれば低域に向かって滑らかに上昇を続けるはずの残響時間に、上昇カーブの折れ曲がりが発生します。
耳で低音不足を感じ、測定で折れ曲がりが発生すれば、低音不足の原因は定在波ではなく、100Hz以下に発生した壁振動が原因と判定します。
<残響時間の周波数特性の特徴>
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残響時間の周波数特性の100Hz以下に不自然な折れ曲がりが顕れる部屋は、折れ曲がり前後に音域ヌケが発生する。
10件に1〜2件の発生事例があるので、別項を設けて解説します。 |
定在波だけが原因で発生するリスニングポイントの低音不足は、部屋中歩き回ってみれば他の場所で必ず上昇します。
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低音の音圧を受けると、住宅の作りの壁板一枚々は150〜200Hzを中心に振動します。柱も強度が足りないので壁面全体が一体となっては100Hz以下で振動します。
その振動音が限度を超えて大きいとき、低音楽器にブーミーなゆるゆる感が目立つようになり、ベースやバスドラムがだらしなくコモって音楽にとってなによりも大切な躍動感が削ぎ落されるのです。ボーカルもおぼろな佇まいとなって心に染み渡る輝きを失います。
既設の部屋をリフォームでオーディオ専用ルームにするのであれば、上記二つの要素が可能な限り減るように、床構造・床材、壁構造・壁材、天井構造・天井材の変更を行って振動音を元から絶つてしまえば最良の結果が得られますが、ハードルが高過ぎて実行に移せるケースは限られるでしょう。
<STWF1500 STW1500 SVE1200 ミッドバスの余分な響きを吸音する>

そこで代案が調音パネルによるミッドバスの吸音です。SVパネルやSTWパネルを設置して振動音を吸音する方法で、振動の強さに応じて設置数量を適正化すればリフォームに匹敵する効果を得ることができます。
低音楽器がクリアになり、演奏ステージの楽器の佇まいが見通せるほどの透明度を発揮します。

フラッターが限度を超えて大きいと、楽器やボーカルに、耳に刺さる騒がしさや、ざわめきが付き纏い、ゆったりくつろげるはずの音環境が破壊されて音楽鑑賞から遠ざかる原因を作ります。
フラッターエコーは平行壁があると必ず発生します。平行壁をなくすリフォームがベストの対策ですが、ハードルが高く実施例はわずかです。
代案は、ハンドクラップでフラッターが強いポイントを探し出し、タオルやTシャツをぶら下げるピンポイント吸音です。ピンポイントなら吸音の弊害である音楽の躍動感の減少も最小限に抑えることができます。

フラッターエリアが広く、ロールカーテンなどで吸音する場合でも、カーテンを耳より少し高い位置から下げ、高い位置のフラッターは許容した方が躍動感とフラッターのトレードオフのバランスが取りやすいでしょう。

低音楽器がクリアに姿を現したなら、次は音楽を楽しく鳴らす手立てです。
楽器の発音は360度方向に音を送り出す無指向性系が多数を占め、スピーカーの発音は前方に向かって音を送り出す単一指向性系が大多数です。
例えばヒトの声(ボーカル)は前方に向かって音を送り出す単一指向性です。この声を無指向性のスピーカーで再生すると、肉声を超える超リアルなボーカルになります。不自然か? そんなことはありません、肉声を超えるリアリティーがとても心地よく爽快なのです。
つまり無指向性系が多い楽器類の中に単一指向性の楽器やボーカルが混ざっていたとしても、それらのすべてを無指向性スピーカーで再現する方が音楽がより快適になるのです。
音楽再生用のホーンスピーカーが、ラッパ型の狭指向性からマルチセルラなどの
広指向性に発展した歴史とも一致します。
マスター音源をCD化する過程で多少なりとも失われる生々しさの復活にもなります。

無指向の音場は、スピーカー後方の壁面に反射系の調音パネルを置き、水平拡散反射音の中高音域を増強してリアとフロントのエネルギーバランスを近似させれば実現できます。フロントとリアの周波数特性を揃えるのです。
硬い平面からの鏡面反射は虚像が出来て音像がボケてしまうので、水平方向の拡散反射であることが必要条件です。
拡散反射音は定位の情報を持たないので、スピーカーが送り出す前方の音のみで楽器方向が定まり、スピーカーシステム本来の定位特性は崩れません。
スピーカー前方の音と、調音パネルからの後方の音のいいとこ取りで音場を仕上げれば、生のステージのグルーブ感を宿す佇まい豊かなサウンドステージが再現されます。
ルームチューンを体感するには 1800spx2, Wasin1200x1(または1200ctx1)の同時設置が必須の条件です。加えて 900side,
Basso, 1200rear, 600side を加えることでサウンドステージが充実します。
<SVE1800sp、Wasin1200、SVE1800sp> ブーミングパネル設置手順
ベースやバスドラムの鮮度が低ければSTW1500を設置してください。
<STWF1500、STW1500>

フロントが石膏ボードの壁面であれば、新製品(H19.07新発売)のSVE1800(ブーミング吸音)をフロントに置くとサウンドステージの透明度が格段に向上します。
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Wasinの左右に置く(SV1200裏返しと同じところ)
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<SVEパネルのミッドバス吸音特性>
<SVEパネルの水平拡散反射特性>

<STWパネルの低域吸音特性>
調音パネルの詳細は「ルームチューニング徹底解明」参照
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リフォームはご相談いただければ工務店への情報提供などいたします。地域は限られますが、設計、監督、業者さんのご紹介などもいたします。
簡易実施はプライベートチューニングをご利用いただければ、十分な時間をかけて調査を行い適切なご提案をいたします。

















グラスールを仕様どうりに壁裏にフワッと入れ、石膏ボードや合板で壁面を仕上げると、低音楽器の音圧に共鳴する癖をもつ石膏ボードや合板が125〜250Hz(ミッドバス)で振動し、その振動音が音楽演奏に混じりこむ部屋になります。
ブレーキが無い壁振動は、部屋の空間による残響音が鳴り終わっても振動が鳴り止まず、見かけ上の残響時間が長くなります。これがブーミングの原因のほぼ全てです。残響時間の周波数特性を計測すると<グラフ1>の@の盛り上がりになって姿を表します。
<グラフ 1> 残響時間の周波数特性 ミッドバスが盛り上がる

幸い部屋固有の残響音の中でミッドバス帯域の残響時間は<グラフ2>の@のように若干短かめがオーディオ再生には好都合なので、板振動が出てしまったら振動音と残響音をひとまとめにして吸音してしまえばブーミングを押さえ込むことが出来る。
つまりブーミングに代表されるミッドバス帯域の不具合は、何処かを直すとその反作用で何処かが悪くなるようなトレードオフを気遣うことなしに改善することが可能です。
<グラフ 2> 残響時間の周波数特性


<グラフ3>がSVパネルのミッドバス吸音特性。この調音パネルをブーミングの強さに見合う数だけオーディオルームに持ち込むと(設置場所は何処でも良い)ブーミングが解消されます。
SVパネルは中高音域の水平拡散反射特性も併せ持っているので、持ち込んだパネルを指定位置に配置すれば、演奏会場の拡がりや奥行きも再現される立体的なサウンドステージを作ります。
<グラフ3> SVパネルのミッドバス吸音特性>








<グラフ2>のBのように高音域の残響時間が若干長めであると、高揚感のある密度の高いアンサンブルでありながら爽快な解像度を伴って浸透力溢れる音楽鑑賞を楽しむことができると分かっています。
しかしながら広葉樹の銘木を部屋中に張り巡らせる単純構造の部屋ではこの特性にはならず、壁面の上部と天井に高域のみの拡散反射構造を加えて実現します。
從って既存の部屋を利用したオーディオルームでは全ての部屋が<グラフ4>のBの高域下がりの特性を示します。
<グラフ 4> 残響時間の周波数特性

この中高音域の残響音不足は絶え間なく音楽を浴びたいという欲求を萎えさせてしまうくらいの影響力をもつのですが、一旦出来上がってしまった部屋の残響時間を長くすることは部屋を半分壊すくらいの覚悟がないと実行不可能でしょう。
ところで中高音域の残響音が足りないことによる躍動感やグルーブ感の不足は、同じ帯域の初期反射音を増やすことで解消されることが判明しています。
但し増やし過ぎるとトンネルサウンドになってしまうので、少ない反射音で大きなインパクトが得られるポイントを選択する知識が不可欠で、<図1>がそのポイントの一覧。所謂一次反射のポイントと重なります。
<図1> 一次反射エリア




コンサートホールの設計者が長い残響時間を確保しようと残響2秒を掲げるように、吸音は一般に音楽鑑賞にとってマイナスに作用します。しかし空間の広さに限りがあるオーディオルームでは、吸音がプラスに作用する帯域があります。
しかし吸音のしすぎはサウンドステージの陰影や躍動感の減少を伴うので、少ない反射音を効果的に加えることが音楽の浸透力を高めるテクニックであるのと同様、少ない吸音で最大のプラス効果が得られるポイントを選定する知識が颯爽と鳴り響くサウンドを作り上げる手掛かりになります。そしてその吸音ポイントも<図1>の一次反射のエリアと重なります。



從って中高音域を拡散反射する特性と、ミッドバスを吸音する特性の二つを兼ね備えた調音パネルを<図1>で示したエリアに配置すれば、分厚いアンサンブルを堅持しつつ、隅々まで見渡せる透明度が同時に達成できるのです。
<図2>が中高音域の水平拡散反射とミッドバスの吸音を兼ね備えたSVパネルの設置手順です。
<SVパネル>

<図 2> 調音パネルの使い方

上記6箇所の中で最もドラスティックに音場を改善するポイントがスピーカー後方の左右のコーナーなので、音楽に陶酔できない再生音の不具合や、もっさりしたブーミングに悩まされたなら、迷う事なくSV1800spの設置を検討してください。
ブーミングが解消して楽器の音にキレが復活し、再生音場に三次元の奥行きと拡がり・透明度が加わって、ボーカルには明確なメロディ・ラインとその佇まい、バッキングの楽器にも奏者の感性が見える佇まいが醸されます。オーディオルームの調音はまずここから入門です。





壁天井ともに15mm厚のパイン集成材にしたところ、部屋自体の響きは悪くないものの響きが多いためか、定位が散漫で、音源の多いポップスなどを聴くと少し騒々しい感じがあります。
かと言って、小さめでも吸音材を設置すると、明らかにそこに(聴感上)デッドスポットを感じてしまい、音場の広がりに違和感を覚えます。
また、聴くソースはボーカル入りのポップスがほとんどですが、ベースやバスドラなど量感的には十分なもののキッチリ切れない様な、もう一つカッコよさが足りません。
今回、SALOGICさんのパネルに挑戦しようと思いますが、私の環境において、手始めとしてのセットは注文内容で問題ないでしょうか。
塗装色: カラーレス, ジョイント穴: なし StainVeiL1300ct x 1
塗装色: カラーレス, ジョイント穴: なし StainVeiL1800sp x 2
塗装色: クリア・ホワイトメープル ギャラリーバッソ 2枚組 x 1 |
下記が水平拡散パネルの設置順序です。
●1.スピーカーパネル ●2.センターパネル ●3.サイドパネル ●4.バッソ ●5.リアパネル(リスナーの後ろが吸音性であれば必須) ●6.リスナー左右のパネル(低音の包容力が欲しいとき)
サイドパネルを飛ばしてバッソのご注文を頂いたので、デモ用の<サイドパネル>と<リアパネル>を商品と一緒にお届けすることにしました。
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パネルを設置してから早1週間が経ちました。
昨年、部屋のリフォームをして以来、
●定位感が散漫。
●響き自体は悪くないが強すぎで、吸音材を使えば逆にその存在が目立ってしまう。
●低音の一部が大きくこもる。それゆえ、ベースやバスドラが気持ちよく決まらない。
という現象に悩まされ、いくつかのルームチューン製品を試してきましたが、なかなか思うようなチューニングができず、手をこまねいていました。
このリフォームは失敗だったのかな、と混沌としながら、最後の砦としてサーロジックさんのパネルを導入。という経緯でした。
丁寧に製作されたことがジーンと胸に伝わってくる美しいパネルをしばし見つめてから
いざセッティング。

音出しの瞬間、すべての悩みが一瞬にして消え去りました。
これは想像以上に良いというレベルではなく、想像できなかった素晴らしさです。
ベースの音程が明瞭でキレが向上しますが、音痩せせず深みがあって安定感抜群です。
響き過ぎず、デッド過ぎず、大変気持のよい空間の中で、各楽器はピンポイントに定位が決まり、しかも実像的な立ち方がとてもリアルで、、、といいますか理屈抜きで、
とにかく、どの音楽を聴いても気持ち良いのです。
いつまでも音楽を聴いていたくて、 夜更かし気味になっています(笑)
もっと早く導入すればよかった!

ついつい音楽鑑賞が先行してしまい、セッティングとしてはラフな状態ですが、フリースタンディングというのでしょうか、1800spを部屋のコーナーまで押し下げ、90度よりわずかに開いた状態が今のところ好みです。
1300ctの開き角は小さめで、ギャラリーバッソは定位置。
お借りした900のパネルは、スピーカーバッフル面と面一で、リスナー側へ出しています。また600×2はリスニングチェア後ろ40cmの所に、開き角大きめで設置しています。
お借りした計4枚のパネルはもはや、はずすことができません。
スピーカーからリスナーまでの空間にも心地良い音場が広がり、さらに定位感と低域の 明瞭度が向上します。
ちなみに、リスニングチェアの後ろに設置するパネルに、キャスターを付けていただく特注はできますか? 普段は畳んで隅にしまっておき、音楽を聴くときだけ、定位置に設置できれば理想です。
パネル構成としては、この状態で十分に幸せを感じますが、さらにパネルを増やすことで、もっと高みがあるのかな、などと欲が出てしまいます。

スピーカーサイド用のSV900パネル(以下サイドパネル)と
リスナー後方用のSV1200SPパネル(以下リアパネル)、無事に到着しました。
「SP側コーナーパネル+センターパネル+バッソ」にサイドパネルとリアパネルが追加されることで、SPとリスナーまでの空間、そして、リスナーの後方にまで(つまり360°)音場空間が広がるようになりました。
(今回、オーディオルームの後ろに続くデッドな部屋が、相当影響していることが分かり勉強になりました。)

パネルの拡散を利用した音場形成というと、多少の不自然さがあるかな、と思っていたのですが、今ここで包み込まれている立体的な音場空間、そして明瞭で実像的な定位感は、不自然さの欠片もなく、ちょっとこれは筆舌に尽くしがたいリアルで心地よい空間表現であります。
心地よく感じるのは空間表現だけでなく、こもってダブついていた低域が、立ち上がりが早くなり、アタック感や芯のある状態でローエンドまで伸びるようになったことも挙げられます。
どのジャンルの音楽でも危うげなく、安定したサウンドです。
なにか評論的になってしまいましたが、いまは只々、音楽を聴くことに没頭できています。音に対してのストレスが無い、リアルなサウンドは、必然的に気分が乗ってきますね。
寝る時間が迫ってくると、なんとも名残惜しく、アンプの灯を消す日々です。
このたびは素晴らしいオーディオ・音楽ライフを提供していただいた村田さんに感謝します。東京方面へおいでの際、お時間がありましたら是非お立ち寄りいただければと思います。

リアパネルは、音楽を聴かない時に片付けられるよう、いただいた全方向キャスターを取り付けました。下穴を開けて取り付けたところ、木が割れたりすることも無くきれいに取り付けることができました。
180度開いたりしなければ、実用上、安定性もほぼ問題ありません。
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