戻る  お問い合わせを頂きました  無償ルームチューン実施  S.V.パネル導入後のレポート


 前略

 お忙しい中、掲示板でなく、メールで失礼いたします。貴社のホームページで勉強させて頂いているものです。ルームチューンの必要性を感じ、色々試行錯誤しておりますが、よくわかりません。


 田舎に住んでおり、仕事上地元を離れることが困難なため、一人で悩んで、同じ事を繰り返している現状です。セッティングの専門の方にもお願いしたこともあるのですが、やはりまだ悩んでいます。またダイポール型SP( MartinLogan CLS ) を使用している ため、セッティングも通常のSPとは少し異なるようです。

 ただし、じゃあ何が不満で、何をどうしたいと悩んでいるのだと質問されると困るのですが。

 現有のシステムでセッティングなど何かを変えると音が変わります。ある曲ではそれがプラスに作用し、マイナスに作用する曲もある。全てがプラスに変化する事はないのでしょうか?音楽を聴いていて(最近はヴォーカルが多いですが、クラシックなど何でも聴きます)ふと物足りなさを感じセッティングを変更し、一時的に満足しますが、また同じ事を繰り返しています。最近は高域の寂しさを感じることが多いです。これは日本オーディオの測定器(RC−2)で測定するからかもしれませんが。
 
 自分で言うのもおかしいのですが、何が不満かはっきりさせることが、私に一番必要な事でしょう。それならばどうすればよいか?生の音楽を聴く、人の音を聴くなどがその回答になるのでしょうか?これがなかなか出来ません。それならば、人の勧めることを色々取り入れてみて、好き嫌いを判断していくうちに自分の不満がはっきりしてくることはないでしょうか?
 
 こう考えている時に貴社のホームページを知り、拝読させて頂き、納得し、試してみたいと考えましたが、いくつか疑問もあります。下記疑問にお答え頂けませんでしょうか?
 

 1)ダイポール型SPにLVパネルを導入する場合はどの様な配置が基本になるのでしょうか?フリースタンディングのパネル配置と同様の手法でよろしいのでしょうか?

 2)ルームチューニングの記事を拝見すると本来のSPの設置位置にはあまりこだわらなくても、LVパネルの設置を工夫することによりSP配置の自由度は広がるのでしょうか?ダイポール型のSPにもあてはまるのでしょうか?
 
 3)貴社のユーザー様の中で、ダイポール型SPを使用されておられ、実際にルームチューニングをされた方のレポート等がございますでしょうか?
 
 以上、お手隙きな時にご回答願えれば幸いです。
 
 とりとめのないことを長々と書き込み申し分けございません。自分のシステムがどれくらい機能しているか、宝の持ち腐れになっていないか、確かめる機会もなく、不安も強いため悩んでいるところもあります。ご教授よろしくお願いいたします。


 ただし、じゃあ何が不満で、何をどうしたいと悩んでいるのだ
 と質問されると困るのですが。

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■再生音楽のクオリア(言葉では表現できない微妙な質感)を決定づけるものは、ほぼ100%の確率でルームアコースティックです、そしてオーナーの嗜好にクオリアを合わせるところまでアドバイスするのがネット通販であらゆるものが安価に手に入ってしまう昨今の販売店の経営戦略であるはずだと思います。

 しかしクオリアが肌に合わないとき、10万円にも達するような高価なケーブルが何本いや何十本も売れるかもしれないし、数百万円もするスピーカーだって、ひょっとすると二度、三度と買い替えてくれるかもしれない、と勘繰ると。販売店にクオリアを制御する能力があったとしても、100%のアドバイスは期待できないのかもしれません。
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■ルームアコースティックは二つのカテゴリーの五つのパラメータで制御できます。そしてNo.4の初期反射音でクオリアの制御が可能です。

●Sパラメータ(Structure)
1.定在波
2.フラッターエコー
3.床・壁・天井の振動

●Rパラメータ(Early Reflection, Reverberation tim)
4.初期反射音
5.残響時間



 現有のシステムでセッティングなど何かを変えると音が変わります。
 ある曲ではそれがプラスに作用し、マイナスに作用する曲もある。
 全てがプラスに変化する事はないのでしょうか?

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■例えばカーテンやカーペットを敷き詰めることで、2.のフラッターエコーが激減して個々の楽器の解像度が上がります、プラスの効果です。しかしカーテンやカーペットでは吸音しきれないミッドバスのフラッターエコーは相変わらず残っており、高音域の響きが減ったことも手伝って音楽が弾まなくなります。直ぐには気が付かないかもしれませんがマイナスの効果です。そしてミッドバスが厚めに録音された楽曲では、再生音にブーミー感を伴い、改善されない、または悪化する楽曲のひとつになります。しかもRパラメータはクオリアを維持できないほどに酷く低下してしまい、トータルではマイナスに作用します。

 Sパラメータは減らせば減らすほど音の解像度がアップする要素です、しかし建物の躯体強度への依存割合が高く、柱を追加する、壁や天井に傾斜を与える、などの大改築を実施しなければ大きく改善することができないパラメータです。
Sパラメータをカーテンなどで安直に制御しようとするとマイナスの効果が必ず発生します。

■全てをプラスに変化させるには、Rパラメータの作用を熟知したうえで、4.の初期反射音で制御しつつ、最適残響時間を実現するのが最も近道であると断言できます。カーテンなど高音域の吸音材は百害あって一利なしと心得るべきです、壁紙や壁ビニールも吸音材として作用します。ただしフラッターエコーはオーディオルームの完成度の上限を大きく下げるので、質量の大きいパネルを置くなど、壁に傾斜を与える方法で対処する必要があります。

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■お問い合わせいただいたオーディオルームがどんな音を出せる可能性があるのか?あるいは問題点は何処にありそうか? という事を現地に行かずに判断するとしたら、

@:残響時間の周波数特性を測りグラフを送ってもらう。このデータからパラメータ”5”と”3”のミックス値が読み取れます。

A:電話口で壁を叩いてもらい、その音を聞く。この音からパラメータ”3”の予測を立て、@のグラフから差し引く。

 以上でRパラメータ”4”,”5”の処理のためのStainVeil(ステンベール)パネルの量が決まります。

1.の定在波と、2.のフラッターエコーも重要なパラメータですが、多くの場合、Rパラメータを適正値に追い込む時に一緒に解決されます。

 定在波による低音過多と通常言われているブーミングは、3.の床・壁・天井の振動が原因の大半で、木造では125Hz〜250Hz(壁がぶかぶかだと〜400Hz)の残響時間が盛り上がるブーミングが発生します、定在波がブーミングの発生源になる可能性はほぼ0%です。スピーカーの背後にStainVeilパネルを置き、ミッドバスが吸音されるとブーミングは解消します。

 RCでは低域の伝送特性が盛り上がる形のブーミングが発生します。RCむき出しのオーディオルームでは、伝送特性の盛り上がりを抑える低音域の吸音を実施したうえで、残響音のミッドバスの盛り上がりはStainVeilパネルを置いて対処します。

 また定在波による伝送特性のディップは木造・RCともに発生の可能性がありますが、2〜6枚のStainVeil 600パネルを左右〜後ろの壁沿いに立てると解消傾向になります。

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下記は
No.8のオーディオルームの実測データです、最適残響時間のラインがリスニングルームと試聴室で異なる点に注目してください。


 私が最初に選んだ職業は東芝EMI(当時は東芝レコード)のレコーディングエンジニアで、10年ほどレコーディングに没頭して録音スタジオの音響特性が如何に大切であるかが身にしみた後、”東芝EMI本社(東京都港区溜池)の第三スタジオ、東急文化村(渋谷区渋谷)の文化村スタジオ(基本設計)などの設計を担当しました。その経験からオーディオルームのチューンを始めた当初は残響時間の周波数特性はフラットが正しい特性である、と思い込んでいました。試聴室の最適残響時間の形です。

 ところが、聴覚だけでルームチューンを終了し、確認のために残響時間を測定すると、まったく不満が無いと思われる部屋の残響時間の周波数特性は、例外なく超低音域が半端ではないレベルで上昇していることに気が付いたのです。リスニングルームの最適残響時間の形です。

 そして最も重要なポイントは、125Hz〜250Hzのブーミング帯域のレベルの扱いで、この帯域の扱い如何がオーディオルームの成否を大きく左右します。ブーミング帯域の残響時間は、上記グラフの測定値のように中高音域と比較してフラット〜多少下がり目の範囲に収める必要があります。

ところで「新築のオーディオルームを作ろう」と考えたとき、二つある最適残響時間のどちらか一方を選択しなければなりません。中間の特性にしておけば両方の長所がミックスされるのでは?・・ との甘い考えで施工すると、スピーカーをとっかえひっかえする原因を自ら作ることになります。

どちらの傾向の部屋に仕上げるのかを決めるには、施主が好むスピーカーのジャンルを知る必要があります。


スピーカーのジャンル1.(ビンテージ)
 箱鳴りを積極的に利用したシステム。例えばビンテージもののアルティック、タンノイなどに代表されるスピーカーシステムでは、試聴室タイプの残響特性でもミッドバスを多少抑え目にすると豊かな低音を感じ取ることができます。本件の残響特性はこちらに属しています。

スピーカーのジャンル2.(現代スピーカー)

 箱鳴りを徹底排除し低音のスピード感を追求したシステム。現代スピーカーは殆んどこのジャンルに入ります。フレッチャーマンソンの等感度曲線からも分かる通り、ミッドバスと同じレベル、同じタイミングの低音域は、聴覚感度が20〜30dBも高いミッドバスにマスクされてしまいます。例えば映画の効果音の超低音には、ドサ〜〜ンが故意に入れてあるではないですか。サ〜〜ンに相当する部屋の響きが加わって初めてスピード感のある豊かな低音と感じ取れるのです。現代スピーカーを設置するオーディオルームの残響特性は、リスニングルームの最適残響時間の形に仕上げる必要があります。

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■フレッチャーマンソンの等感度曲線の低音域(音楽鑑賞レベル(60〜90Phon)の拡大図)
 15Hzと150Hzでは、28dB(平均)の聴覚感度差があります、15Hzの音に150Hzの音を重ねて鳴らすと15Hzは確実にマスクされてしまう。





 1)ダイポール型SPにLVパネルを導入する場合はどの様な配置が
 基本になるのでしょうか?
 フリースタンディングのパネル配置と同様の手法でよろしいので
 しょうか?


   2)ルームチューニングの記事を拝見すると本来のSPの設置位置には
 あまりこだわらなくても、LVパネルの設置を工夫することにより
 SP配置の自由度は広がるのでしょうか?
 ダイポール型のSPにもあてはまるのでしょうか?

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■ダイポール型SPの発音の特徴は、逆位相の音が背後に出ることです、従ってSPの直後に壁を作る方式のルームチューンは理論的にも成立しません。ダイポール型SPは実施例が少なくて確実な結論は得られておりませんが、可能性があるのはフリースタンディングのルームチューンの応用で、部屋のコーナーに拡散反射面を作る方法です。

■フロント側の壁面が反射性なのか、吸音性なのかによって必要量が変わりますが、基本セッティングは正面コーナーに2〜4枚のStainVeil 1800パネルです。

壁に沿って置いた例が下記ページです。
http://www.salogic.com/home-select.files/home-64.htm

下記ページの最後のイラストもダイポール型に向く配置です。
http://www.salogic.com/home-select.files/home-26-sub3.htm

> 最近は高域の寂しさを感じることが多いです。
■高音域の初期反射音が不足しているのではないでしょうか? 初期反射音の高音域を増やし、高音域の残響時間を最適残響時間くらい(後日いただいた図面によると約0.6秒)にしたうえで、100Hz以下の残響時間を超低音域に向かって長くする(1.5秒程度まで)ことができれば、うきうきするような躍動感溢れる音楽を楽しむことができます。
http://www.salogic.com/Basic-RoomTuning/Basic-RoomTuning.htm

下記の記述に思い当たるところはありませんか?

2005.4/29、石田健一さん<その3>*サーロジック効果”を聴く!*
http://www11.ocn.ne.jp/~otokiti/musyasyugyou.html#9

写真があれば的確なご返事が差し上げられると思います。遠方ですので実行までに時間がかかるかと思いますが、下記もご利用下さい。
http://www.salogic.com/home.files/campaign/campaign01.htm

使用機器(CDのみです)
 CDトランスポート:CECベルトドライブ
 D/Aコンバータ、プリアンプ、パワーアンプ:SPECTRAL
 スピーカー:Martin Logan CLSII
 サブウーハー:ENTEC
 
リスニングルーム
 RC 1F、四隅に柱の突出あり、二重ドア、二重窓
 床:コンクリート40cmの上に赤松無垢材(30mm)
 壁、天井:四方コンクリート壁に約30cmの吸音構造
 吸音部:ジャージクロス
 反射部:しな合板



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