*** 音が良い部屋悪い部屋 ***
残響音の低域特性が音の品位を決める 音が良い部屋悪い部屋を4つに分類

 機器を新たに導入したいと思ったとき、好みの音になるのか、実際に自分の部屋、システムで聴かないとわかりませんが、貸してもらうことでさえなかなか困難です。ましてや遠方まで持ってきていただきセッティング、アドバイスまでしていただいたこと、本当に感謝しています。

 パネルの効果に驚きました。欲しかった、音がぐっと前に出る感じ、解像度が見事に出て、確実で、比較的安価なチューニングだと思いました。できるだけ少ないパネルで最大の効果を得ることができれば、と思います。

■パネルを配置した状態の写真を取り損なっておりましたが、記録が残っていました。先日のデモで必要最小限となった構成は下記の通りです。

 1.SPの後ろからサイドに回りこむパネル ●1800sp × 2
 2.正面センターのパネル ●1200ct
 3.横側面のパネル。片側各1枚 ●1100 × 2 (自立脚が必要です)

 パネルはLV、SV(ステンベール)の2種類があり、SVは低音〜超低音が上昇するステンレス強化形です。

 ルームチューンで背丈がもっともシビアなパネルがサイドパネル
 1.自立脚は横側面のパネルに使う物ですか?なくても
かまわないけれど、使った方が安定すると、考えれば良い
ですか。
 ■600mmのパネルであれば倒れても怖くないので脚は不要ですが1000mm以上は何らかの対策が必要です。ホームセンターで売っているL金具などが安価で良いと思いますが、できれば木製を選んでください。移動が頻繁な場合は床に傷が付きます。

 2.横側面のパネルは1200でも良いですか。

 ■ルームチューンで背丈がもっともシビアなパネルがサイドパネルです。デモで1100がベストになりましたので変更しないほうが良いでしょう。背が高いと左右方向の解像度がデモのときより悪くなります。低いとサウンドステージの奥行きが浅くなります。

 ブーミング帯域は125Hz〜250Hz
 レコード棚の外側(リスニングポイントから見てレコード棚の奥)の壁がほかの場所と比べても異常に弱く振動するのに気づいたのですが、壁振動は我が家では、かなり問題となっているでしょうか。

 HPで見ますと、壁振動は100Hzと125Hz にブーミングの原因となる残響時間の盛り上がりになるそうですが、我が家ではこの盛り上がりは無かったように記憶しているのですが。
 ■ブーミング帯域は125Hz〜250Hzです。ここに盛り上がりができると低音楽器がボンついて超低音の密度感が低下し、低音が出なくなります。空間の見通しが霞んで楽器の音色の微妙な変化などは全く聞き取れません。壁振動が大きい場合は125Hz〜400Hzがブーミング帯域です。

 この場所の弱さは異常ですので補修(できるかわかりませんが)することも考えているのですが、いっそのこと、ここからコーナーを経て、窓の外側までステインベール(あるいはLV)状のパネルを貼り付けるのはどうでしょうか。パネルを置くのと同等の効果が得られるでしょうか。

その利点として、
● 1.スペースにゆとりができる。(左のSPの奥は将来、D.Cubeを置こうと思い、床はコンクリートで補強してある場所です。) ● 2.転倒の危険性がない。 ● 3.見た目が比較的良い。

欠点として、
● 1.SPからパネルまでの距離があり、また角度を調整できないので、自立式のパネルを置いたデモのときと同じ効果が得られない可能性がある。 ● 2.コストが掛かる。

 パネルを貼り付ける場合、右SPの後ろ(窓の外側のみ。その手前はのこぎり状の壁になっているので)も同様にする必要があると思います。その場合、高さは天井までとすべきでしょうか。それとも1800mmでいいでしょうか。

 また会話の中で、レコード棚の外側の部分は、反対側と同じように、のこぎり状の壁にしたほうがよかった、SP周りは左右対称がいいとおっしゃいましたが、ステインベール(あるいはLV)状の壁にするより、のこぎり状の壁にする方が良いでしょうか。


 斜め壁がフラッターを防ぎ、拡散パネルがサウンドステージを作る
> @: その場合、高さは天井までとすべきでしょうか。それとも1800mmでいいでしょうか。
http://www.salogic.com/home.files/
RoomBuild/RoomBuild2.htm

のなかに、回答がありました。1800mmがいいのですね。
■この部屋に当てはまる回答ではありません、横幅がある部屋の場合、斜め壁と拡散パネルが両方必用になります。のこぎり壁は天井まで、拡散パネルは1800mmが正解です。

 広い部屋の場合、右の壁が6度傾いていれば、左壁ののこぎりは省略可能ですが、**さんの部屋では強いブーミングが発生しているので、GalleryWaveまたは変形StainVeilパネルを使うとブーミングが解消方向に向かい、低音不足も解消方向に向かいます。

> A:
http://www.salogic.com/home.files/
RoomBuild/RoomBuild2.htm

> を見ると、右SPのSP近くの壁はのこぎり状の壁でなく、ステインベール(あるいはLV)状にすべきだったのですね。
■横幅がある部屋では(概ね3間以上)、のこぎり壁が正解です。その内側にStainVeilを設置します。

 オーディオルームは頑丈でフラッターエコーが出なければ良いだけ
 たとえば下記の部屋は**さんより 1〜2年前くらいににご質問をいただき、基本だけ押さえてもらって出来上がった部屋です。
●1. 壁を丈夫にしてください、24mmのバーチ合板をダンプしながら重ね張りするのがベストとですよ。
●2. 傾斜天井が可能なら、リスナー側に向かって高くしてください。ダンプと強度も必要です。

という2点のみを強調して若干の雑談をした結果1年後に出来上がったバーチ合板とレンガで囲まれたオーディオルームです。

 部屋は単に頑丈でフラッターエコーが出なければ良いだけです、枝葉ばかり見ずに幹を見てください。考え過ぎてこまごました指示を連発すると工務店も枝葉ばかりに気を使ってしまい、肝心な基礎強度が劣る躯体になってしまうようです。

 頑丈でフラッターエコーのない部屋だけで理想的な音場が完成するわけではなく、必ず拡散処理と大抵ミッドバスの吸音が必要になります。これらは本来工務店に依頼すべきものですが、施工の打ち合わせや現場監督が必要になり現実的ではないので、拡散と吸音を兼ねるSV(ステンベール)パネルで仕上げを行います。

 パネル方式のメリットは微調整のし易さにあり、SVパネルで初期反射音を最適化をした結果、実に音の良い部屋に仕上りました。


 壁振動とフラッターエコーがあると、完成度の限界ができてしまう
●無償ルームチューン後に沢山のご質問を頂いていますが、まず基本を理解していただかないと説明のしようがありませんし、間違った解釈をされてしまうと失敗の上塗りをすることになりますので下記ページを読み直してください。
http://www.salogic.com/Basic-RoomTuning/Basic-RoomTuning.htm

 大事な点を補足すると、「 壁・床・天井の振動 」 と 「 フラッターエコー 」 があると、超えることが不可能な完成度の限界ができてしまいます。もちろんその限界点まではLVやStainVeilパネルで到達可能で、出発点と比べれば格段にグレードが上がるため、お客様の満足が得られるのが普通です。

 しかしその限界を超えようとすると、Gallery(ギャラリー)パネルが必要になり、一気にコストが跳ね上がります。

> レコード棚の外側(リスニングポイントから見てレコード棚の奥)
> の壁がほかの場所 と比べても異常に弱く振動するのに気づい
> たのですが、壁振動は我が家では、かなり 問題となっているでしょうか。


 壁強度は拳(こぶし)強度と関節強度で判定する
■ 壁強度は、「拳(こぶし)強度」と「関節強度」で判定します。拳で叩いたとき、ドワ〜ン、ドワーンと揺れがでれば柱の強度が不足です。関節強度は指1〜2本の関節で叩いた時の音質で判断でき、通常コツンコツンと硬い音がすればOKです。しかし拳強度との組み合わせによっては例外もあります(後述)。

 両方の強度を高くするのが設計の基本で、一部強度の低いところを作って(吸音で置き換えても良い)残響時間の周波数特性を最適値に追い込むのが常套手段です。

<低音域>
 拳強度が高いと100Hz以下の残響時間が急激に長くなり(RC打ちっ放しの部屋など)、拳強度が低ければ100Hz以下の残響時間が急激に短くなります(振動音が重乗するので、測定データの裏を読まないと長くなったように見える)。

<高音域>
 関節強度が高いと中高音域が盛り上がり、低ければ中高音域がだら下がりとなります。

<相対残響時間周波数特性>
 拳強度が高く(低域上昇)、関節強度も高い(中高域上昇)とき、相対的にミッドバスがフラットまたは短めとなって理想的な周波数特性の残響音になります。

*** 音が良い部屋悪い部屋を4つに分類 ***
■ 拳強度と関節強度の組み合わせは4通りあり、下記に挙げた<1>が理想ですが拡散と吸音のバランスを取るテクニックが必要で、プロの手を借りなければ完成しません。

 <2>が最も無難な作りで、StainVeilパネルによるチューニングを実施すれば100Hz以下の低音の揺ったり感を除き<1>に迫る出来映えの部屋になります。

 音響設計の経験がない工務店に施主から情報を提供して作ったオーディオルームは、ほぼ<3>に仕上がると思って間違いありません。

 一般の工務店に<1>の仕様を要求したときに陥りがちな失敗例が<4>です。施主の意向は中々伝わりません。見えないところが手薄になります。

■<1>■.拳:強、関節:強、 ◎ (RCまたは太い柱をふんだんに使った躯体強度が高い部屋。内装は板張り。)

■<2>■.拳:強、関節:弱、 ○ (躯体強度が高い、内装プラスターの部屋)

■<3>■.拳:弱、関節:弱、 × (躯体強度が低い、内装プラスターの部屋)

■<4>■.拳:弱、関節:強、 ×× (躯体強度が低い、内装板の部屋)

 <1>は ** さんにお勧めした作りで、この仕上がりであればStainVeilパネルと若干の吸音材で完璧な音楽ルームになります。

 <2>は空っぽの部屋の状態で残響時間がすでに最適値を下回ります(フラッターエコーで長く聞こえることもあるが)。そこに家具類が入ると最適残響時間の半分くらいの響きになります。音楽の楽しさだけを完成度の尺度として<1>と比較すると、<1>の30%くらいが完成度の上限です。

 残響が短目で特に100Hz以下の低音上昇が少ないので、クラシックであればコンサートホールで感じるの超低音の揺らぎ感が不足。ジャズであればライブハウスで体に感じる低音の臨場感が不足します。

 <1>と比べれば音楽の包容力は劣りますが、LV・SVパネルを置くだけで音楽鑑賞に必要十分な奥行きと高さがある、佇まいの見えるサウンドステージを作ることができます。

 この部屋の音だけしか聞かなければ十分な完成度と思い込んでしまう位の音が出ます、しかし<1>の部屋と比較すると沢山の欠点が顕になります。生演奏を聴く機会が多い人や神経質な人であれば、次々と気になる音が発見されて、ケーブルの交換などで散財する可能性が高い部屋とも言えます。

 総合的な完成度は<1>の60%くらいが上限でしょう。

 <3>も 6〜8畳程度の狭い部屋であれば、LV・SVパネルの数を増やすことで<2>に近い音が出ます。広い部屋の場合Galleryパネルが必要になります。

 <4>はかなり難しく、LV・SVパネルだけでは、<2>の30%くらいが完成度の上限でしょう。そして**さんが作られた部屋はこのワクに入る作りです。

 部屋が広く、傾斜天井・傾斜壁ですから、基本を押さえてきちっと作られていれば高い完成度が得られたはずです。その完成度を100とすると現在の状態は10%くらいの仕上がりです。

下記のパネルを置いたデモの時の状態でも20%くらいです。
●1800sp × 2
●1200ct
横側面●1100 × 2

言い換えれば改善の可能性が沢山残っていると言えます。でも理解不足で実行していただいても、成功しないであろう最も難しい状態の部屋に仕上がっています。

 壁振動が大きい場合は125Hz〜400Hzがブーミング帯域
> HPで見ますと、壁振動は100Hzと125Hz にブーミングの原因と
> なる残響時間の盛り上がりになるそうですが、我が家ではこの
> 盛り上がりは 無かったように記憶しているのですが。


■ **さんが作られたオーディオルームは、拳強度が低いことから100Hz以下の残響時間が急激に短くなっており、壁振動による振動音を除外すると残響時間の周波数特性の形はカマボコ型です。

 -●- 系列1:残響時間    -●- 系列2:(残響+振動)時間


 ミッドバス過多だが長い中高音域の残響音またはフラッターエコーにマスクされて測定結果にミッドバス過多が現れない(測定的上はOKに見える)最も問題点の多い<4>に分類される部屋に仕上がっています。

 ミッドバス以下の残響音には、かなりの量の振動音が混ざっています。根本的な改善方法は壁振動を止めることですが、LVまたはSVパネルでミッドバスを吸音することでも類似の効果を生むことができます。しかし本件のような広い部屋では壁面積が大き過ぎて、標準配置程度のLVまたはSVパネルだけではミッドバスの吸音量が大幅に不足し、音のボケがとれません。

 先日の無償ルームチューンでは、SP背後からの拡散反射音(中高音域)が増えてサウンドステージが作られたことで十分とは言えませんが音楽らしさが顕われました。しかしこの部屋の広さと傾斜天井から得られる筈であった<1>に匹敵する状況と比べれば、ルームチューン完成時点で期待値の20%くらいのクォリティーです。

 先日のパネルを並べた最良の状態が、無償ルームチューンをご希望される方の問題ありの部屋の初期状態(パネルなし)の平均値程度です。まだまだ遙かに上の状態が期待できる部屋ですから希望を持ってください。

 最適なチューンの方針は更に詳細なチェックをしてみないと決まりませんが、先日のチューンで

●サウンドステージ無し● --> ●サウンドステージ有り●
になった最小構成のパネルは必ず必要になるものですから、とりあえず置いて頂くことをお勧めします。

 壁を壊して作り直したほうが安上がりですよ、と助言しましたが、パネルで処理することになった例が下記です。
http://www.salogic.com/home-select.files/home-25-sub.htm

 最初にQRDを30枚超並べ、改善の兆しが見えず(QRDは中高音域の改善が得意)、SV(ステンベール) と Gallery(ギャラリー) に置き換えた部屋です。QRDの処分金額を差し引いても600〜700万円かかったのでは?

 軟弱壁は変形SVパネル、またはGalleryWaveで覆う
> レコード棚の外側(リスニングポイントから見てレコード棚の奥)
> の壁がほかの場所と比べても異常に弱く振動するのに気づい
> たのですが、壁振動は我が家では、かなり問題となっているで
> しょうか。HPで見ますと、壁振動は100Hzと125Hz にブーミング
> の原因となる残響時間の盛り上がりになるそうですが、我が家
> ではこの盛り上がりは無かったように記憶しているのですが。
> この場所の弱さは異常ですので補修(できるかわかりませんが)
> することも考えているのですが、いっそのこと、ここからコーナー
> を経て、窓の外側までステインベール(あるいはLV)状のパネル
> を貼り付けるのはどうでしょうか。パネルを置くのと同等の効果
> が得られるでしょうか。

■SP周辺の軟弱壁の補修は実施例があります(左写真)。パネルの構造は右の写真の上半分と類似で、SVパネルの拡散反射性を殺してミッドバスの吸音効果のみ利用します。下記ブログに大きな写真があります。
http://blogs.yahoo.co.jp/hanahanahanako/49000241.html
http://blogs.yahoo.co.jp/hanahanahanako/49000315.html
http://blogs.yahoo.co.jp/hanahanahanako/49331388.html


http://www.salogic.com/home-select.files/home-25-sub.htmの最後から3番目の写真参照。

 ミッドバスを吸音するが拡散反射のないパネル(正面の若干白っぽいパネル)で振動している壁面を覆い、内側にSV(ステンベール)パネルを置いて中高音域を拡散反射(ミッドバスの吸音も兼ねる)する構成です。** さんの部屋も壁振動のためミッドバス過剰と低音のゆらぎ不足ですから、白パネルが効果的に効きます。

 白っぽいパネルはStainVeil パネルを変形したもので、Galleryパネルのように3度の角度がついた偏向反射型ではありません。** さんの部屋の右壁の傾斜が6度以上であれば左壁に並べて使用できます。

 右壁が3度しか傾いていない場合はパネルを3度傾けて設置するか、3度の傾きがあるGalleryWaveパネルを使用します。
http://www.salogic.com/home.files/shop/shop6.htm

 GalleryMonoパネル(下記写真の壁面。設計施工を請け負ったときにしか使わないので商品リストには無い)が安価ですが、現場調整が必用で、パネルだけ送って<4>の症状の部屋に設置していただくのは困難です。
http://www.salogic.com/home-select.files/home-68.htm


> パネルを貼り付ける場合、右SPの後ろ(窓の外側のみ。その手前
> はのこぎり状の壁になっているので)も同様にする必要があると思
> います。
> その場合、高さは天井までとすべきでしょうか。それとも1800mmで
> いいでしょうか。

■躯体強度(拳強度)が低ければGalleryMonoであれば天井まで覆うに越したことはありません。SVの変形(前記の白パネル)またはGalleryWaveパネルのようにミッドバスを吸音するタイプであれば1800〜2400でも大幅な改善が期待できます。左右の壁が視覚的に非対称になり音も非対称になりますが、内側のStainVeil パネルの置き方を工夫すれば非対称は支障がない程度に補正されます。



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