先日ようやく完成し引っ越しました。いまから細かい調整という段階です。 写真有難うございます、とても美しい部屋に仕上がりましたね。ここまででオーディオルームの完成度を左右する五つのパラメータの中の <1>〜<3>の処理が済んだことになります。
写真を拝見するとスピーカーはフリースタンデリング的な配置ですね。フリースタンディングの場合後ろの空間が十分あると <4.初期反射音>の処理をしなくても奥行きのあるサウンドステージが得られることがありますが、 ●音場の奥行きと広がりはライブのステージが目の前に展開するように繰り広げられていますか?(LVやSVパネルを置いた場合は空間の高さの表れ方も完成度の尺度として重要ですが、フリースタンディング配置だけで高さが得られることは稀なので、奥行きと広がりが出ていればほぼ成功)。 ●ボーカルは凛とした表情でありながら、密度の高い佇まいが得られていますか?
前回のメールにも書きましたが、オーディオルームの音質を決めるパラメータが五つあり、S群とR群の二つに大きく分類することができます。
2.フラッターエコー 3.床・壁・天井の振動
5.残響時間 Sパラメータは躯体の造りで基本特性が決定されてしまうので、計画の初期段階で遮音設計といっしょに検討されるべきものです。この部分の施工は既に終了しているので、躯体振動・壁振動が出ているようであればRパラメータによる補正でリカバーリーする必要があります。 > ロックなどでドラムの音を聴くと特にバスドラが切れがなくてボンつくように感じます。 ■<3.床・壁・天井の振動>の施工に問題ありでしょう・・。<3>のミスは発生頻度が高いトラブルで、設計が完璧でも図面に表示しきれない細部の施工でミスが発生します。 ■Rパラメータによるリカバリーは、<4.初期反射音>のエネルギーバランスをLV・SVパネルなどを利用して高音域強調型に整える。<5.残響時間>の周波数特性をLV・SVパネルなどを利用してミッドバス下がり気味とする。の二点です。この処理で或る程度は修正が可能です。 > 残響が長すぎるせいでしょうか。 > SPの後方の縦長の窓にカーテンをかける、SPの後方中央の壁にタペストリーをつるすなどを検討中です。
2.高音域の残響時間の調整 1.ミッドバスの吸音体(サーロジック製品であればLV, SV, Galleryパネルなど)を設置してミッドバスの残響時間を適正値に整える。本件の場合の最適残響時間は0.6秒程度で、下記グラフに当てはめて時間を補正すると、<50Hz:1.2秒><200Hz:0.5秒><1kHz:0.6秒><8kHz:0.7秒>です。ミッドバスは多少短かめが無難です。ルームチューニング徹底解明、残響の質 参照。 -- LV, SVパネルは主にミッドバスの吸音体として働き、高音域の初期反射音も増やします。高音域の密度が増すことで聴感では豊かな響きに聞こえるのですが(<その3>*サーロジック効果を聴く!* 参照)、ミッドバスの吸音層が若干高音域を吸音する可能性と、フラッターエコーの減少などが重なって高音域の残響時間が短くなることがあります --
ALTECやJBLがオーディオ界を制覇していたころに主流であった高音楽器の切れ込みの良さや中低音域の立ち上がりの速さを追求するオーディオ再生であれば初期反射音の処理は必須ではありませんが、ライブステージが目の前に展開するような楽器の音がクリアに浮かび上がる存在感の或る音を追求するのであれば <4.初期反射音>の最適化は必須の調整項目です。 <5.残響時間>も最適値から大きく外れてはいけません。 生楽器の音は四方八方の空間に音をふりまく概ね無指向性の発音をします。正面だけにしかフラットな音を送り出さない単一指向性スピーカーでその存在感を表現しようとするところに無理があるのです。 スピーカーの背後にLV・SVなどの水平拡散パネル、GallerySV(近日発売)などの偏向拡散パネルを置くことで、スピーカーの指向範囲(正面)外の反射音のエネルギーバランスが正面と同じフラットに近づくと、楽器の音やボーカルをクリアに密度高く浮かび上がらせる、奥行きと高さの表現ができるライブステージが再現されます。 送っていただいた写真の状態では満足のいく音が出なくて当然です。何とか満足できたとしても、聴き慣れることで脳がエージング? されて起こる、非常に低いレベルの及第点であろうと思います。<ルームチューニング徹底解明>のページを再度読み直してください。 HPのルームチューン徹底解明を再度読みました。我が家での問題はブーミング帯域(ミッドバス)の残響時間が長いのだろうと思います。それを吸収するには、カーペット、カーテン、タペストリーではない。これらは、音楽の躍動感に必要な残響音の高音域のエネルギーを失わせる。 また壁と天井の振動がミッドバスの多さ(ブーミング)の原因になっている可能性があるということですね。これに関しては、そうではないと信じたいところです(笑)。 フロントの壁面にLVパネルなどのミッドバスの吸音体を使うことにより、ミッドバスの残響時間を短くする、さらに中高音域の残響時間を長く必要がある、と理解しました。 クラシックを聴いていると適度なホール感が感じられて、満足しているのですが。脳のエージングでしょうか(笑)。石井伸一郎 氏が言っているように、音楽のジャンルで残響の適正値は異なるのでしょうか。
http://www.club.sense.panasonic.co.jp/club/technics/consulting/listening4/listening4.html 値を読み取ると、標準寸法の6畳間で0.42秒。20畳間で0.55秒程度です。一方沢山の部屋の残響時間を測る機会を得ましたが、この数値に合う部屋は(フラッターエコーで響いている部屋を除くと)100件測定して1〜2例程度の低い確率です。0.3秒に達しない部屋が大半です。 残響時間は家具の量や質で変動する数値です。オーディオルーム程度の広さ(6〜30畳)であれば0.4〜0.6秒に収まれば良し、というあたりが落としどころです。 500〜1kHzの残響時間が0.5秒前後あって、低域と高域の残響時間が長くなっていれば、冒頭に書いた ●音場の奥行きと広がりはライブのステージが目の前に展開するように繰り広げられていますか? ●ボーカルは凛とした表情でありながら密度が高い佇まいが得られていますか? の二点はかなり高い品位で達成可能です。
無償ルームチューンのご依頼を頂いてからまる1年、九州地区のお客様から4件のご依頼を頂き、関西、四国と合わせて九州地区のルームチューニングが実現しました。 素晴らしいオーディオルームを拝見しました。正面の細長い明り取りも大正解でしたね、オーディオルームの住み心地の改善に大きな効果をあげてくれました。SV(ステンベール)パネルでフロントを拡散処理をすることを前提にすれば、これくらいのガラス窓は許容範囲です。<窓例1> <窓例2> <窓例3> 測定に熱が入ってしまい写真撮影を忘れてデモパネルを撤去してしまいました。この部屋の美しさをを崩さない気配りを最優先としたデモパネルの配置は下記となりました。 ●正面真ん中にLV1200ct×1 ●左端と右端の窓枠の外側から、SPを遠まわしに囲むようにLV1800spを左右各1セット ●本棚前と右壁前にLV1100各一枚 残響時間の周波数特性は過去に例がないほど典型的なかまぼこ型です。<実測データ> -●- 系列1:残響時間 -●- 系列2:(残響+振動)時間 この部屋の最適残響時間は<50Hz:1.2秒><200Hz:0.5秒><1kHz:0.6秒><8kHz:0.7秒> ですから、100Hz以下の低音域を除いて明らかに残響音過多です。手軽に実施できて最も効果が高い処理がLVまたはSVパネルによるミッドバスの吸音です。ミッドバス付近の残響時間を0.5秒まで短くする過程で高音域も短かめになりますので、低音域を除いてかなり良い形になると思います。 人の気持ちを引き付ける魅力のある音が得られる残響時間の周波数特性は逆かまぼこ型ですが、上のグラフの<系列1:残響時間>のグラフは正反対のかまぼこ形です。 --とてつもなくつまらない音だな-- という第一印象とも完全に一致します。建築的に美しいだけに、アドバイスの結果がデザインにしか反映されなかったことがとても残念です。
メールでのご質問にお答えしただけで、施主のご理解のほどは未確認ですからこのような結果になるわけで致し方ないのですが、最後の仕上げでSV(ステンベール)パネルを使うことを条件に、設計施工にもっと拘われる体制にしないことには施工ミスの悲劇が回避できないのかもしれない。と思ってしまいます。 この部屋は聴感でNG、測定でもNGなのですから、なるべく早く改装したいですね。もっともっと音楽が楽しく聞ける部屋になる広さがあるのですから・・。 |
無償ルームチューンで沢山のオーディオルームを拝見し多くの測定データを見てきましたが、音が良いはずのLo上がり、Hi上がりの逆かまぼこ形の残響特性であってもフラッターエコーや壁振動が強いと音が良いとは限らず、LV・StainVeil・Galleryパネルなどの壁振動を抑制する特性も使いながらルームチューンを実施してきました。 一方で残響グラフだけで部屋の問題点を洗い出す方法はないものか?と残響グラフの視かけの容の裏に隠れた真の残響特性の読み方を模索していました。その方法が確立できれば測定器をレンタルして測定データを送っていただくだけでルームチューニングの基本方針を決めることができます。 壁振動たっぷりの部屋の測定グラフを検証した結果、その手法が見つかったように思っています。多くの測定データのストックを記憶と照らし合わせて再検証すれば、ルームチューンに応用できる法則が得られると確信を得ました。 下のグラフは聴感で音が良かった部屋を左、悪かった部屋を右に並べて比較したもので(残響時間の数値は検証時期の違いから読み方に差があるので無視してください)、音が良かった部屋では壁の太鼓振動と思われる減衰カーブの折れ曲がりが40Hz以下で発生。音が悪かった部屋では折れ曲がりが160Hz以下で継続して発生していることが分かります。 低音域の極端な折れ曲がりは多くの部屋の測定データで確認されていましたが、ほとんどのケースが低域の1〜2ポイントで、今回のようにミッドバス以下のすべての周波数で折れ曲がるのは非常に稀なケースです。折れ曲がりが 1〜2箇所だと、SPLの値が小さくてソフトウエアがエラーしたのだろうと思ってしまい、明確な判断をしかねていました。 また測定の音源となるSPの低域特性(音量)の限界で、SPLが不足して測定結果が曖昧になっている嫌いもあり、低域エネルギーの大きな測定専用のSPを用意する必要性など、新しい課題も見えてきました。 ブーミング帯域(125Hz〜250Hz)と比較して100Hz以下の残響時間が急激に長くなることが音の良い部屋の条件ですが、左右のグラフを比較したとき、左では低音域が長く、右ではミッドバスが長くなっていることが読み取れます。 |
音が良い部屋の残響特性の抜粋 --> OrgData 31.5Hz : 1.05sec 40Hz : 1.00sec 50Hz : 0.812sec 63Hz : 0.710sec 80Hz : 0.65sec 100Hz 0.595sec 125Hz : 0.444sec |
音が悪い部屋の残響特性の抜粋 --> OrgData 63Hz・リスニングポジション:0.43(0.9)sec 80Hz・リスニングポジション:0.32(0.8)sec 100Hz・部屋センター:0.34(0.57)sec 125Hz・部屋センター:0.55(0.66)sec 160Hz・部屋センター:0.38(0.91)sec 200Hz・リスニングポジション:0.85sec 250Hz・リスニングポジション:0.92sec |