実践・オーディオルームの設計施工
Last update : 2010/06/04

□□ルームパラメータの4悪を徹底排除したリスニングルームの設計、リスニングルームの自作にも挑戦してみよう□□

第1部 設計
  ● セルフデザインでリスニングルームを作る
  ● otoさんのオーディオルームの伝送特性
  ● コンピュータシミュレーション

第2部 調音
  ● 心地よい響きに仕立て上げる
  ● otoさんのオーディオルームの残響特性


第3部 調音パラメータ
  ● ルームパラメータ4悪 : 定在波、フラターエコー、壁振動、反射率の断層
  ● ルームパラメータ2善 : 初期反射音、残響音


第4部 参考データ
  ● 定在波がブーミングを起こすことなど無い
  ● 矩形の部屋は残響時間よりフラッター時間の方が必ず長い
  ● 壁振動(壁・床・天井)は残響時間の測定データの中に現れる。


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世界に一つのリスニングルームを作ろう
こんなに面白いこと、他人に任せちゃもったいない

 お金がジャブジャブあった80年代のレコード会社の黄金期のスタジオ設計の手法も織り交ぜながら豊富な体験でセルフデザインを徹底解説。自信がもてたらセルフビルドにも挑戦してみよう。

●セルフデザインは、 otoさんのオーディオルーム新築記 を教材に、成功するデザイン、失敗するデザイン、使ってはいけない建材の情報などを織り交ぜながら解説します。

サーロジック式リスニングルームの設計法はとても単純です。

1.フラッターエコー、壁振動を徹底排除し、ライブな空間を作る。
2.拡散反射壁を適正配置し、オーナーの好みに合わせて余分な響きを吸音する。

セルフデザインのポイント
 出来上がってみないと自分の好みに合っているかどうかさえ分からないリスニングルームの響き具合を、他人の理論に任せて設計施工するのは、どう考えても正しい判断とは言えない。

 緻密な計算をして理詰めの設計をすればするほど、その部屋のオーナーの好みを取り込まなければならない一番大切な竣工後の調整が不可能になる。

 お金がじゃぶじゃぶあった頃のレコード会社のスタジオでは楽器の素材にもなるような高価な壁材を惜しげもなく破壊することができたが、そんなことは不可能である。
 
 「おかしいなー、いつもこの作り方で良い音が出るのだが・・」と、設計者は帰ってしまう。もちろん設計料も建築費も戻ってはこない。

 大工さんの気遣い一つで部屋の響きは変わってしまうのである。同じ図面による施工であっても、同じ音が出る確立の方が低い。・・と言うことを忘れてはいけない。

 ルームパラメータの4悪を可能な限り排除し、セルフビルドが可能な単純な構造とする。ルームパラメータの2善をルームチューン的手法で最適値に追い込む。既存の部屋の改装にもそのまま応用できる設計。


第一部 : 設計
セルフデザインでリスニングルームを作る

事の始まりは2x6であった
 左方向に横長の居間兼用の1Fのオーディオルーム
 2x4のようなパネル構造の建物は壁強度が低く、オーディオルームの要件とは相容れない性格を持つのだが、周囲の部屋も含めて30畳ほどの空間があることも手伝って、StainVeiLパネルの設置だけで、程好く円やかでリラックスできる音楽を奏でていた。

二階に移ってパネル構造の弱点が露わになった
 床強度の低下、天井強度の低下、室容積の低下が重なって、1F のように悠々と鳴ってはくれない。何処を直すべきか?・・・ 探索中。
 この状態(の音)が気に入って暫くこのままの状態が続いたが、ずっとこのまま、と言うわけにもいかず、
● 下の部屋の天井を剥いで303mm間隔の梁で2Fの床を補強する。
● 補強とフラッター対策を兼ねてスリットの入った斜め壁を作る。
● 天井もスリット状に板を貼る。

 と決めて見積もりまで進んだが予想外にコストがかかる・・。いっそのこと新築しちゃおうか・・。あれよあれよという間にotoさんの心は新築に傾いていきました。

 otoさんの友人の真下(まっか)棟梁は振り回されて大変だったようです。真下さんお疲れ様でした。


新築案1 : 木造/鉄骨・軸組工法【遮音壁/調音壁・二重壁構造】
 改装から新築への変更ですから、予算は限られています。同じ額は不可能としても、いかに安く最高の出来映えのリスニングルームを作るかが設計の大前提ですが・・、

 札幌では、「ちょっと様子を見に行くか」ができない距離です。遮音壁と調音壁を分離する案を第一案としました。

 二つの壁を分離するメリットは大きく、リスニングルームにありがちな無機質な板張りのイメージから脱皮することが出来ます。

 躯体から分離して調音壁を作るため、完成後の手直しが何度でも可能で、デザインの追求とサウンドの追求が両立します。後で沢山遊べるのが最大の特徴です。

● 2×4 または鉄骨軸組工法で 3間×4間(24畳)の部屋を造り、その内側に調音壁で囲まれたリスニングルームを作る
調音壁
 小さな物の集合体で構成した平面をベースに、その一部に水平拡散パネルを嵌め込んだものが調音壁。

 下記がotoさんに提示したイメージ画像。
 拡大1

 拡大2

 水平拡散パネルの嵌め込みポイントは
●スピーカー周辺(h:1800)
●左右一時反射付近(h:900)
●背後壁面(h:3,000mm)

 背後壁面のパネルの特性を変化させて、オーナーの好みに合う残響時間と周波数特性を作りあげる。

超低音調音壁
 厚さ150mmの重量ブロック。定在波による低域伝送特性のディップが覆い隠されるまで積み上げる(前後・左右・上下、全ての定在波による低音不足に有効)。
遮音壁
 吉野石膏のHPに詳しい解説があります。必要な遮音量に見合う工法を選び、隙間のないように施工すればOKです。 超高性能遮音構造 音響絶縁材を用いた遮音壁 
 採用されなかった工法なので、詳細説明はサーロジックのデモルームまでお待ちください。
  

新築案2 : 木造・軸組工法【遮音壁/調音壁・一体構造】

音響設計のノウハウが無くても作れる単純構造
 この部屋のオリジナリティーは、「単純構造」です。調音機能は建物に帰属しません。施主(現場監督)が構造を理解し工務店に的確な指示を与えた上で大工さんの協力が得られたならば、クローンルームが幾つでも作れる点が過去の設計と一線を画します。オーディオルームのキット化も夢ではありません。

 3間 x 4間 の部屋はリスニングルームとして丁度良い大きさです。同程度の体積が確保できれば、この部屋と同じ音のリスニングルームが複製できます。

 適度な固さで床・壁・天井が仕上がれば(ここが難しいのだが)、施工中の誤差は調音パネルで補正可能です。パネルの特性を変化させてオーナーの好みを反映させることもできます。

 例えばこの部屋を施工した真下棟梁が作れば、施主(現場監督)不在でも同じ音の部屋に仕上がります。

 断面図 --> 拡大


 ● 室容積 : 135立方メートル
 ● 最適残響時間 : 0.62sec
 平面図 --> 拡大

構造設計の勘所<人の気配を伝える床>
 無償ルームチューニングで沢山の床を体験させて頂きました。固い例では地面直結のコンクリートにフローリング直貼り。緩い例ではプラ束で支えられた床や高密度のグラスウールで浮かせた床など。

 浮き床やプラ束の床はブーミングに悩まされるので避けるべきで、作ってしまったら床に加重をかけるしか改善の手立てがありません。

 コンクリートにフローリングを直貼りした床も耳だけで音楽を聴く不自然感が私の嗜好に合いません。音の物理特性は良いと思うのですが・・・

 個人的な嗜好を含めると、ベストな床は人の気配が感じとれる床構造です。近くを人が歩いたらその気配が足から感じられる、しかしミッドバスの輻射音を出さない管理された強度を備えた床構造です。

●1. 半間(910mm)間隔で布基礎を造る。
●2. 布基礎に直角に土台を設置。

●3. コンパネまたは構造用合板を根太ボンド併用で釘打ち、またはコーススレッド止め。
●4. 布基礎に重ならない位置に根太を若干傾けて根太ボンド併用で釘打ち、またはコーススレッド止め。隙間に防振材(ここがポイント)。防振効果はグラスウールよりフェルトが勝りますが、湿気が多いところではポリエチレンシートを敷くなどの対策が必要です。

●5. 
コンパネまたは構造用合板を根太ボンド併用で釘打ち、またはコーススレッド止め。タイガースーパーハードに置き換えても良いでしょう。
●6. 目違いでコンパネまたは構造用合板を根太ボンド併用で釘打ち、またはコーススレッド止め。

●7. フローリングを根太ボンド併用で釘打ち。

1.〜4.のイメージ図。振動の即停止と固さの平均化が構造設計の勘所。

構造設計の勘所<音楽の雰囲気を醸し出す壁
 部屋を構成する床・壁・天井のなかで振動に対する強度の確保が最も困難な部位が壁面です。天井高2400mmであれば4寸(120mm□)の柱を半間(910mm)間隔に建てればぎりぎりクリア出来る可能性ありですが、2400を超えると揺れ強度が急激に低下します。

 柱を6寸(180mm□)にする。天井の梁に使った4寸x10寸(120x300mm□)を柱に使う。などの手もありますが、壁が厚くなって空間の無駄が許容出来ないケースの方が多いでしょう。勿論費用も増大します。

 本件では4寸の柱を使いました。強度不足は補強で対応する、という方針です。

 oto さんの判断で高さ3000mm のところに4寸の梁が入りました。殺風景になりがちなリスニングルームに古民家風の味わいが加わり、ブロックの厳めしさとの対比が居心地の良さそうな雰囲気を醸し出しています。
 それでも振動の強度が足りず、振動のピッチ(周波数)も高すぎるので、土台から胴縁の間(3000mm)の柱の側面に、厚さ:6mm、幅:100mm の鉄板の補強を加えて(右画像)強度問題は一件落着です。鉄が生理的に嫌いであればステンレスに置き換えると良いでしょう。

 更に柱に囲まれた狭いエリアで発生するピッチの高い振動を抑制する目的で、柱の間にOSBボードに密着させて12.5mmの石膏ボードを貼り込み、フェルト+木+フェルトの制振部材を組み込んで内壁側の壁振動を押さえ込む構造としました。

 制振部材は等間隔にならないように雑に入れてください。数を増やせば振動時間が短くなります。

 壁振動を全て消去することは不可能です。振動が残ることを前提に、心地よい帯域(100Hz以下)に振動をシフトする工夫が、ボーカリストが生息し潜んでいるような雰囲気を漂わせる秘訣です。

制振構造 --> 拡大

構造設計の勘所<床に匹敵する強度の天井>


 二寸勾配の天井に120x300の梁を910mmピッチで配置すると上記収まりになります。天井直貼りで振動強度も十分確保されます。上に抜ける音は燐家に聞こえにくいので、グラスウールを沢山押し込めばそこそこ遮音も確保できます。

施主の心構え
 壁が出来たらラジカセを常設して逐次部屋の音をモニターしてください。壁材質と音の関係の引き出しが増え、完成後に目指すチューニングの目標が明確になります。

セルフデザイン
 ここだけ守れば必ず成功する。という必要最小限のポイントを oto さんと 真下(まっか)棟梁に伝えて基本設計が出来上がり、建築の過程でノウハウを織り込んで紡ぎ上げた世界に一つしかない oto さんオリジナルのオーディオルームです。

 oto さんのブログの写真を隅々まで見ていただき、文書化が難しい細部のノウハウの補足としてください。
 


otoさんのオーディオハウス完成

 昨年(2008)6月4日の地鎮祭から建設が始まり、2ヵ月後の8月初旬竣工、続けて9日〜10日にStainVeilパネルとLVパネルによる反射音の最適化とミッドバスの吸音を実施し、8月12日に完成まであと一歩のレベルに達したピュアオーディオ専用のリスニングルームです。その後 otoさん自らの改修の繰り返しと、パネルチューン・測定を繰り返し、1年4ヵ月後の09年12月15日のルームチューンで完成と相成りました。その経過を時系列に並べた測定データによりご紹介します。

撮影:2009年12月15日


otoさんのオーディオルームの伝送特性
 部屋が無響室であればリスニングポイントの伝送特性はスピーカーの周波数特性と一致します。しかしリスニングルームは有響室なので、例えスピーカーが一直線のフラットであったとしてもミッドバス以下の帯域に位相干渉と定在波に起因するウネリを生じます。--> スタジオの音響特性のシミュレーション参照

撮影:2009年10月28日


<グラフ 1>
otoさんのオーディオルーム・リスニングポイント 1/3 oct 伝送特性  測定:2009年10月28日


中高音域にも位相干渉による伝送特性の凸凹が存在するが1/3octの棒グラフに束ねてしまえば見えなくなる。

1/3octより狭い幅のピーク・ディップは聴覚の検知限界を下回るので、左のグラフが聴覚が感じる伝送特性。

 31.5Hz、125Hz に位相干渉によるディップ、または定在波によるディップがある。

 otoさんのブログを見たらリスニングポイントの伝送特性として後ろの席のデータが誤掲載されていた。左のグラフがリスニングポイントの真の特性。otoさんのオーディオルーム新築記

 otoさんのブログに 「アンプ等の機器は何でも良いんだよと言う村田氏の口癖を証明する結果となっています」 と業界から村八分にされそうな記述があります。LVパネルによるルームチューンの費用は20万円前後、中・高グレードのオーディオシステムの価格に比べれば1/10〜1/100のコストです。この金額で外科手術のような効果が期待できると村井裕弥さんが体験談を書いています。

 オーディオ機器のように見せる醍醐味だって重要な趣味の世界にも、使うお金と期待する価値とのバランスを重視する消費性向が浸透してきました。その尺度で見れば、ルームチューンに比べて1/10〜1/100の効果しか期待できないアンプなど何でも良い、とも言っても過言はないと私自身は思っています。

 ルームチューン、電源チューンで入れ物の音楽表現力を高めてから冷静な耳で機器選びに専念すれば、機器のとっかえひっかえに代表される無駄な投資は大幅に減るでしょう。借金してまでアンプを買ってはいけません、期待と得られる価値のバランスが悪すぎます。オーディオ機器で借金に値するのはスピーカーだけでしょう。

 随分古いラッカー盤時代の話で恐縮ですが、1970年代当時、私が東芝EMIでレコーディングエンジニアをしていたころ、自分の担当アーティスト以外の海外のクラシック音源などのマスターリングEQの補正値の指示も私たちの仕事でした。

 数は忘れてしまいましたが、アナログLPのスタンパにはプレス回数の制限があり、出荷数が限界を超えるとラッカー盤から再カッティングになります。

 初版の音楽誌評を見て<シェルビングEQで高域を+0.5dB>などとカッティングマンに指示すると、評論家の先生のペンのタッチが変わります。「今回のカッティングは実に素晴らしい、音のヌケが格段に向上した、カッティングマシンの性能向上には目を見張るものがある」。等々・・です。

 アンプによる高音域の変化は+0.5dBのEQに匹敵する音質の変化くらいは期待できます。しかしルームチューンによる音場改善から得られる、<佇まい><奥行き><立体感><躍動感>などの、音楽表現を豊かにして再生音場を演奏会場の次元に引き戻すルームチューンの効果と比べればかなり低い次元の効果です。

 プリアンプに0.2dBステップで±2dBのシェルビングEQを復活すれば(GEQは×)アンプを換えたい、ケーブルを換えたい、という煩悩を大幅に減らすことができると思うのですが、商売に逆行する願望は望み薄ですね。

 

 オーディオルームを無響室のようにデッドに仕上げれば伝送特性は限りなくフラット(SPの特性)に近付くが、楽器の存在感が欠落した単なる音になってしまう。

 一方そこそこライブに仕上げれば、伝送特性は波うち、如何にも音が悪そうに見える低域特性になるのだが、豈図らんや対照的に豊かな表現力を得て躍動感たっぷりの音楽を奏でてくれる。

 otoさんのオーディオルームはサーロジックのデモルームとしてラフスケッチが出来上がっていた図面を基に、建築現場の状況を加味した修正を加えながら完成したプレ・デモルームです。

 私(村田)の持論として、木造の場合、位相干渉や定在波が再生音に与える影響は大きなものではなく、机上設計で検討する必要はない。と考えていたので、位相干渉や定在波による伝送特性の乱れを予測して回避する策を講じて設計したものではありません。しかし<グラフ1>のように十分満足のいく伝送特性を得ることが出来ました。



伝送特性シミュレーション

位相干渉のシミュレーション
 斜め壁、傾斜天井のため、部屋の大きさは平均値です。反射音の低音波も無指向に広がるため、平均値でも大きな誤差にはならないようです。

 本件シミュレーションの計算条件を<表1>に示します。部屋の大きさが設計図面と異なるのは、室内に積み上げたブロックやパネルの厚みを考慮した結果です。

 部屋の反射率を0.7と小さく設定しました(シミュレータのデフォルトは0.8〜0.9。本件の残響時間の実測データによれば0.9〜0.95が妥当)、壁にぶつかった低音波の全てが鏡像法に従って鏡面反射するわけではないからです。拡散してしまうのだから反射率、反射回数共に少なめが実測値に近かろうと推測した結果です。

<表1> シミュレーションの部屋サイズ・計算条件


<図表1> シミュレーションのSP配置・リスナー配置(伝送特性の実測環境と同じ配置)


 反射音の反射回数2回、4回、6回のシミュレーション結果を<グラフ2〜4>に示します。伝送特性の実測グラフ(グラフ1)でディップとなっていた 31.5Hz、125Hz と思われる場所にディップがあり、ます。

<グラフ 2> 反射回数:2


<グラフ 3> 反射回数:4

<グラフ 4> 反射回数:6
 上記シミュレーションでは定在波による伝送特性の乱調は考慮されていません。

定在波(部屋の固有モード)のシミュレーション
 <表2>が定在波に係わる部屋の固有振動モードの100Hz以下を一覧にしたものです。説明が容易い代表的なポイントは、モード欄に’1’が一つ’0’が二つの基準振動モード(1/2波長の固有振動/No.1No.2No.3)で、部屋の前後、左右、上下の中心点で伝送特性を計測すれば深いディップが確認されるはずです。

<表2>



 <No.1>は、部屋の前後の真ん中に25.3Hzの伝送特性のディップが発生することを示していますが、リスニングポイントから外れているので無害です。

 <No.2>左右の真ん中35.1Hzの伝送特性のディップが発生することを示しています。リスニングポイント上なので、実測データに現れるはずです。

 <No.3>上下の真ん中に43Hzの伝送特性のディップが発生することを示しています。リスニングポイントから外れているので無害です。

 次にモード欄に’2’が一つで’0’が二つのNo.6、No.11、No.17が1波長の固有振動で、前後・左右・上下の真ん中のポイントで伝送特性にピークが発生します。リスニングポイントと重なるのは左右の<No.11>だけで、70.2Hzに伝送特性のピークが発生するはずです。

 また1波長の固有振動では、センターと壁の中間位置にディップが発生するので、着座位置が後壁から1/4の距離に近いNo.6の50.6Hzがディップになる可能性ありです。

<グラフ 5> リスニングポイント 1/6 oct 伝送特性

16, 17.5, 20, 22, 25, 28, 31.5,
35, 40, 44, 50, 56, 63, 70, 80, 88, 100, 111, 125, 140, 160, 177, 200, 223, 250, 281, 315, 354, 400, 445, 500, 561, 630, 707, 800, 891, 1k, 1122, 1.25k, 1414, 1.6k, 1782, 2k, 2245, 2.5k, 2828, 3.15k, 3564, 4k, 4490, 5k, 5657, 6.3k, 7127, 8k, 8980, 10k, 11314, 12.5k, 14254, 16k, 17959, 20k, 22449, 25k

 リスニングポイントに於ける伝送特性を1/6octで表示したものが<グラフ5>。

 実測データを見ると、35Hzがディップ、70Hzがピーク、になっており、コンピュータ・シミュレーションの35.1Hz・70.2Hzと、ピッタリ一致する。

 なお、ヒトの聴覚が感じる伝送特性は 1/6 oct より 1/3 oct に近いので、<グラフ1>がotoさんのオーディオルームの聴感伝送特性。

 <グラフ1>によると、31.5Hzにディップ、 63Hzにピークがあるが、音楽鑑賞にダメージを与えるような伝送特性の乱れではない。

 定在波や位相干渉を避けようとして部屋をデッドにする。前後・左右・上下の中心を避けようとして非対称(注1)な場所にリスニングポイントを設定してセンター定位がずれるのを我慢する。などは本末転倒。

注1) : 左右壁面を伝ってリスナーの背後に回り込むCDなどの音源に含まれる残響音の音圧が左右非対称になると、音源自身に含まれているサウンドステージを作り出す残響音の能力をスポイルしてしまい、サウンドステージの奥行きはもとより、ボーカル・楽器の佇まいもウスッペラな平面になって音楽の説得力が大きく低下する。
 

位相干渉と定在波は結果に類似性はあるものの全く別の現象
 位相干渉による伝送特性の凸凹はシミュレータで予測できます。部屋のサイズをシミュレータに入力してスピーカー配置とリスニングポイントを動かし、凸凹の少ないポイントを見つければ設計完了です。既存の部屋でもスピーカー配置、リスニングポイントを決める上で参考になります。

 理想的な特性に比べ、ほど遠いデータしか出ませんが、細いディップを無視して平均値の良いポイントを探せばOKです。SPを横長配置にした方が良い結果が得られるエリアが広いようです。

 壁の反射率と反射回数でシミュレーションの結果が大きく変化するのですが、本件では、壁の反射率:0.7、反射回数:2で実測値に近い傾向が得られました。低音域は反射音が広がるので計算外の反射音が回り込むことでディップが埋められ、実測値はシミュレーションより改善されます。

 位相干渉による伝送特性の乱れはSPとリスニングポジションの選択で改善の余地がありますが、定在波による乱れは回避の方法がありません。しかし本件の実測データから分かる通り、許容範囲に収まるようです。

 「低音域のブーミー=定在波」が定説になっていますが、「低音域のブーミー=壁振動によるミッドバスの輻射音が正しい答えですから、定在波は無視が妥当な対処方法です。

 但し上記の考え方は音楽観賞用のオーディオルームに適用されるもので、録音スタジオなど、プロ仕様の音響設計では古典的な吸音の理論が健在です。しかしそのスタジオで音楽製作をするプロデューサやミュージシャンは、感情表現が豊かで、楽曲のイマジネーションを誘発してくれる表現力豊かなスタジオ空間を嗜好しています。

 スタジオを造る側の建築デザイナーは古典理論を駆使して伝送特性フラットを追求しているのですが、音楽を創造する側のミュジシャンは、むしろオーディオルーム的特性を嗜好しているのです。-->スタジオの音響特性参照。

 シミュレーションのソフトウエアは下記からダウンロードし使用させて頂きました。有り難うございました。http://homepage2.nifty.com/hotei/room/download/001.htm


第二部 : 調音
心地よい響きに仕立て上げる

 部屋の響きはスピーカーの音と同調して音楽を奏でる伴奏者に見立てることができます。伴奏者がへたくそだとソリストも力量を発揮することが出来ません。どのような部屋を与えたらスピーカーが十二分な力量を発揮出来るのか? 

 カーネギーホールのスウィートスポットで間接音と直接音のエネルギーを計測したら、9:1であった。Bose901開発の起点となったデータ。--Doctor Bose--

 12畳間で残響時間0.25秒、スピーカーからの距離 3m という条件を設定してみると、間接音のエネルギーが85%くらい、直接音が15%くらい。(12畳で0.25秒はデッドな部屋)--加銅氏--

 など、間接音の支配力の大きさを示すデータです。

最適残響時間
  著名な音響学者の推奨値を20畳(80立方メートル)の部屋を例に一覧にしたものが<表4-1-1>です。
  斯様にばらついてしまった学説から日本人のデッド好みを考慮して加銅氏が提唱した値が0.55秒/20畳で、<図5-2-1>から部屋容積に応じた最適残響時間を読み取ることができます。

 本件では、このグラフから 0.62秒を500Hzの最適残響時間とし、完成後のルームチューンで若干の調整ができる構造を設計の目標としました。
 ●参考文献 : リスニングルームの設計と製作例 P70 / 加銅鉄平 著 / 誠文堂新光社

 本件の部屋容積 135立方メートルから、残響時間の目標値:0.62秒

 ●参考文献 : リスニングルームの設計と製作例 P81 / 加銅鉄平 著 / 誠文堂新光社

 話が前後しますが、過去の体験と今回の結果から、部屋の広さにかかわらず残響時間が0.4秒を超えるあたりから音楽らしさが顕著になり、加銅氏推奨の最適残響時間付近で躍動感がピークに達し、更に超えると残響過多のボケが始まります。

 LVパネルによる音場創成でも同様の現象が見られ、スピーカー背後のパネルの背丈120cmでサウンドステージの奥行きが深くなり、150cmでサウンドステージが上空に展開し、180cmで楽器の佇まいがピークに達します。しかし更に超えるとサウンドステージが霧散してしまうのです。

残響時間の周波数特性
 単に残響時間何秒と書くときは500Hzの値です。しかし残響時間にも周波数特性があり、ミッドバスを若干短か目にすることで音楽のジャンルを問わず加銅氏の最適残響時間が適用出来るようです。

  残響時間の周波数特性は諸説あり、加銅氏は500Hz以上フラット、500Hz以下・下降で、125Hzで比率0.8を推奨しています。 定在波の影響を避けるためです。

 しかし左記グラフのように低域上昇、高域はフラット〜上昇が世界の研究者の大勢です。

 但しこの表が想定している室容積は住宅事情が厳しい日本のオーディオルームのサイズよりかなり大きい部屋であろうと推測されます。
 ●参考文献 : リスニングルームの設計と製作例 P72 / 加銅鉄平 著 / 誠文堂新光社
 
残響時間の周波数特性/サーロジック推奨特性
 日本家屋のブーミングの帯域が125Hz〜250Hzであることを考慮すると、20畳程度以下のオーディオルームで200Hzの残響時間が上昇することは許容できません。

 オーディオ的な爽快感を伴う透明度の高い低音を確保したうえで、更に音楽と融合させるサーロジックチューンが目標とする周波数特性を左記に示します。

 200Hz前後の残響時間は直接音がしっかり出ていれば更に下降してもかまいません。

 このグラフにぴったり重なる必要はありません、必須の条件は200Hz前後の残響時間が2kHz前後より短いことのみです。

 木造のオーディオルームであれば40Hz以下が上昇し続けることはないので、上記推奨特性を追求すれば良いのですが、地下室やマンションのように躯体がRCであると40Hz以下の超低音が上昇し続けることがあります。RC躯体では40Hz以下の超低音の残響時間を下記グラフのように制限する必要があります。

 otoさんのオーディオルームの躯体強度は、RCほどではありませんが一般の木造家屋と比べればかなり頑丈です。結果25Hzまで残響時間の上昇が続きました。<グラフ14>参照

 試聴を繰り返して許容範囲との結論になりましたが、前述のザ・ハンターのように破綻する楽曲が出る可能性があります。


 RC躯体ではピークの周波数が更に低域にシフトし、レベルも更に高くなります。そこに内装建材の強度不足による60〜80Hzの吸音ディップが重なると、低音楽器の音像は基音の存在感がヌケ落ちた倍音で構成され、楽器の胴鳴りやホールの響きなどの超低音は、あたかも楽器とは不連続な独立した発音体のように振る舞って不快な圧迫音に変化します。耳が(脳が)疲れてしまって長時間の音楽鑑賞が苦痛になるう音場です。

 RCのオーディオルームやホームシアターの設計では、

●60〜80Hzの残響時間が短くならないように、柱を太くする。壁面が振動しないように壁材の強度を十分に確保する。
●40Hz以下の残響音の吸音体を設置するか、屋外に逃がす。

などのテクニックが必須で、リスニングルームの成否を左右する重要な注意点です。


otoさんのオーディオルームの残響特性 その1  2008年8月9〜11日

調音の方針を決めるための、偵察チューニング

 2008年8月8日10時30分、新潟港からフェリー出港、小樽港に翌朝4時30分着。

 出発前の2週間、S社のスタジオに納品する74枚の特注パネルの製作に追われ、睡眠不足の極限に達していたので、フェリーの18時間は寝っぱなしで気力体力完全回復です。

 そのまま oto さん宅に直行6:00到着。2日しかない時間を無駄にはできないので、そのまま調音開始です。
 フラッターエコー

 精度の高い調音に際し大きな障害になるのがフラッターエコーです。本件のリア壁面の設計形状は、センターがフロント側に迫り出す下がり天井で、その下にLV1800が収納される厚みのある構造でした。

 下がり天井の三角形の空間は残響時間の調整エリアです。

 施工の都合で最終段階で平面壁に変更となりフラッター発生です。斜めに設置するLVパネルのサイズが3210mmであればフラッターに悩まされることはなかったのですが、納品済みで手遅れでした。

 床から1.8mはLV1800の斜め置きでフラッターレスになりますが、1.8〜3.21mのエリアにフラッターエコーが発生します。

 インパルス応答の測定データが示す残響時間の値がフラッターエコーによるものなのか、真の残響時間なのか、不明で、データーを頼りに調音の方針を決めることが出来ません。

100Hz残響曲線

 どうやって突破口を見つけよう? 困ったぞ・・・  oto さんのブログでも、そんな様子が伺えると思います。otoさんのブログ2008年8月11日参照

 2008年8月9日-1 otoさんのセッティングで測定

  ● フロントのセンターパネル 2セット(SV1200ct x 2)
  ● リアにLV1800/10枚(LV1800 x 10)

 リアパネルの上に竹の敷物(裏にスポンジ)を積み上げてフラッターを減らして計測した残響時間の周波数特性が<グラフ6>。

 再生音は楽器のフォーカスが定まりきれず、リスナーを音楽に引きずり込む説得力が足りません。

 測定データから、80〜150Hz の響き過多が原因と思われますが、フラッターエコーなのか? 残響音なのか? 不明。
 

<グラフ 6> 測定:2008年8月9日        
--■--:実測残響時間  --◆--:最適残響時間      測定生データ1



  2008年8月9日ー2 パネル配置の最適型を探す

 ”リスナーを音楽に引きずり込む説得力が足りない”  こんなときは部屋を含めたオーディオシステムのディテールの描写力を高めてから原因を探るのが常套手段です。

 演奏ステージ上の楽器の佇まいを明確にし、左右はもとより、前後・上下の立体表現を確立すると、楽器の実音に重なって模糊としていた残響音の動きが明らかになって、残響音の質感が聞き取れるようになります。サウンドステージを生み出す作業です。

 サウンドステージを再現する素材はソースに含まれる残響音などの間接音です。その間接音を楽器の実音から引き離して後退させると演奏家の立ち位置が明確になって、リスニングルームの広さなりにダウンサイジングされたサウンドステージが姿を現します。

 LVやSVパネルによる拡散反射音は明確な定位情報を持ちません。その性質がボーカルや楽器の実音を前面に残したままソースに含まれる残響音や反射音をパネル側に引き寄せる働きをして、フロントに楽器の実音、背後や周辺に間接音が配置される奥行きのあるサウンドステージを作り出すのです。

 サウンドステージを引き出すSVパネルの配置例は沢山の事例から体系化してHPでご紹介しているので、otoさんが設置したパネルも妥当な位置に置かれていました。でもサウンドステージが不明確なのです。

  ● センターパネル 3セット(SV1200ct x 2, LV1200ct x 1)
  ● リアのLV1800/10枚は変わらず(LV1800 x 10)

   otoさんのブログ2008年8月12日参照

 こんなときは記憶の引き出しを片っ端から開いて可能性のある反射パターンをとっかえひっかえ確認します。サウンドステージが明確になるパターンにぶち当たりました。

 本件ではセンターパネルを3カ所に配置した下記写真の形となりました。

 更に微調整の結果、センターパネルを前後にずらした形がベストで、80〜150Hzの残響過多も改善されました。 音が良いと耳が判定した時、測定データもそこそこ良いことが多いのですが、下記グラフのように最適残響ラインに寄り添う美しい形になっていました。

 誣いて不満を探せば、高音域のきらめきの不足でしょうか。低音大好きのotoさんですが、50Hzの響きもできれば抑えたいところです。


<グラフ 7> 測定:2008年8月9日        
--■--:実測残響時間  --◆--:最適残響時間     測定生データ2



  2008年8月9日-3 リアのパネルの量を増やして本日のベスト達成

 きらめきの帯域は5000〜8000Hzです。合板のなかで木肌が美しく硬さも備えたバーチ合板で内装を行い、きらめきの帯域の残響時間の確保を目論んだのですが、5000Hzで最適残響ラインを割り込む結果となりました。

 8000Hzで残響時間 0.56秒は決して短くない値ですが、全帯域の相対値で残響音の質を感じ取る聴覚の特性が、8000Hzの残響音が中音域より少ない --> きらめきが足りないと感じてしまうのです。

 オーディオルームの内装としてよく使われるシナ合板に比べればバーチ合板は十分に硬い材質です、しかし8000Hzの最適残響時間を達成するには役不足でした。 フローリング材のような銘木の堅木を壁や天井に使えば 8000Hzの残響時間が最適残響時間を超えてくれるのか? これも怪しいかもしれません。大幅なコスト増にもなります。

 高級感が出ないと思われているのか? オーディオルームの内装材に使われた例は見たことがありませんが、LVパネルやSVパネルの裏板に使っている針葉樹のラーチ合板が音楽を愉しく聴かせる性質を持っています。表面に浮き出る年輪のでこぼこが高音域を拡散反射しているためであろうと思います。

 リスニングルームではありませんがラーチ合板を内装に使った美しい部屋の参考例です。本文はこちら

 LVパネルやSVパネルは、部屋の中の特定の場所に置いたときにしかその効果が発揮されず、置き場所を誤れば返って解像度を落とすことがある。という事実で明らかなように、むやみに部屋中を拡散反射性にすることは出来ません。唯一リスナー背後の壁面だけは大量の拡散反射音があってもOKの場所です。

LV3210のシミュレーション

 フロント〜リアに発生するフラッター消去のため、リア壁面の LV1800 x 10 を 3210 x 10 に変更することにして、このパネルに高音域の拡散反射特性を組み込むことにしました。

 そこで本日の仕上げとしてデモ用のパネルを運び込み、 LV1800の上や手前の床などに並べ、パネルの総面積を LV3210 x 10 に近づけてフロントパネルの微調整を行いました。

  ● フロントのセンターパネル3セット(SV1200ct x 2, LV1200ct x 1
  ● リアにLV2400相当を10枚(LV1800 x 10 と LV600 x 10 を積み重ね
  ● リアの床にLV600を12枚程度(LV600 x 12

 聴感チューニングの結果、下記のパネル配置でOKとなりました。

撮影:2008年8月9日


 地震があったら大変・・・  と思いつつ LV1800の上に LV600を2段積み重ねるLV3000相当のテストも行い、これもOKです。音はダントツ本日のベストで、音が円やかにもかかわらず楽器の粒立ちが良く、ボーカルを聴くと、男声、女声ともに歌声に湿り気が感じられ、思わず聞き惚れてしまいます。

 高音域にひと味の輝きが加わったならば文句なしのOKである、と otoさんも私も確信を得ました。しかしこの日が頂点で、ひと味を求めて16ヵ月間の停滞期に突入することなど、慮外のことでありました。

撮影:2008年8月9日


 実測残響時間の形は概ねOKです。
最適残響時間ラインとのズレのうち、100Hz以下は全く問題なしの許容範囲。ミッドバス(160〜315Hz)も中音域の残響時間と同等または若干短めであれば良いのでOK。

 ひと味の輝き不足は4kHz以上の帯域の残響時間の下降によるものですが、測定結果を見なければ気がつかない範疇のクォリアの領域の輝き不足です。しかし知ってしまうと更に上を望むのが人情で、otoさんの苦闘の始まり々です。

 暫くのあいだ(2008年9月〜2009年11月)ルームチューンは otoさんにバトンタッチとなり、もうひと味の輝きを求めてパネルも部屋もウレタンで塗り固められて行きます。初期反射音の高音域が増え音としての輝きは増すものの、歌声の湿り気が減って音楽のクォリアの低下が目立ってきます。


<グラフ 8> 測定:2008年8月9日        
--■--:実測残響時間  --◆--:最適残響時間    測定生データ3



otoさんのオーディオルームの残響特性 その2  2008年10月6〜8日

 2008年10月06日 (LV3210パネルをリア壁面にビス止め設置して調音・測定)

 オーディオルームの初回調音から2ヵ月が経ちました。LV3210(1800+1410)を後ろ壁に斜めに固定して「オーディオハウス完成宣言」が今回の段取りです。

撮影:2008年10月8日


 otoさんによるニス塗りの効果を確認すべくLV3210取り付けに先立って残響時間の周波数特性を測定した結果が<グラフ9>です。<グラフ8>と比較してみると、残響時間の3k〜6kHzが若干増えているようにも見えますが、測定誤差の範囲内です。しかし音は確実にドライ方向に向かっており、高音域の初期反射音は確実に増えています。

 一方160Hz以下の低域特性が懸念材料として浮上しました。<グラフ8>に比べ<グラフ9>では、125Hz前後の残響時間(実態は振動時間)が長くなり、63Hz、80Hzの残響時間が極端に短くなりました(注)。この時点では原因不明。

63Hz : 1.26sec --> 0.681sec
80Hz : 1.21sec --> 0.692sec

 (注):D.Cube2HXの超低域再生能力をぎりぎりまで駆使して測定した<グラフ9>には31.5Hz以下ののデータが含まれています。<グラフ8>と単純比較すると低域特性が全く違うように見えてしまいます。40Hz以上を比較してください。

 この測定でHXのパワーアンプを壊してしまい、LV3210パネル取り付けと調音後のS/Nの良い低域データは得られておらず、グラフは割愛しますが、4ヵ月後に測定した<グラフ10>によく似た特性です。

 ルームチューン後の音楽の表現力は初回チューンの時と大差ありません、歌声が乾き気味になった点が気がかりですが許容範囲に入っておりグレードの高い音楽を奏でています。音のエネルギー分布が若干高音域寄りになったかな? くらいの印象です。


<グラフ 9> 測定:2008年10月6日    
--■--:実測残響時間  --◆--:最適残響時間    測定生データ081006



otoさんのオーディオルームの残響特性 その3  2009年2月13〜15日

 2009年02月15日 (スキーのついでにルームチューン)

 静岡、愛媛、道内から沢山のお客様が視聴に見えるので、その前日にルームチューンを行いました。思ったような音にはなりませんが、そこそこにまとめ上げた結果の残響特性が<グラフ10>です。ニス塗りの面積が広がっているので(otoさんのブログ2008年10・11月参照)高音域の反射音が強くなり、63Hz、80Hzの残響音不足が顕著になってきました。

 完成直後と現状を比べて大きく異なる部分は、

1.LV・SVパネルや壁面にウレタンニスを塗った。
2.リアパネルが自立から壁面固定になった。
3.リアパネルの表面構造を高域反射型に変更した。

の3点です。この中で低音の残響時間減少に関係しそうな項目は(2.)だけですが、パネル固定前の<グラフ9>で既にその兆候(63Hz、80Hz低下)が現れている点と整合がとれません。ニスの影響もあるのか? 今回も暫く様子見です。
 

<グラフ10> 測定:2009年2月15日    
--■--:実測残響時間  --◆--:最適残響時間    測定生データ090215



otoさんのオーディオルームの残響特性 その4  2009年10月27〜28日

 2009年10月28日 (部屋中ウレタン塗装、ソナスのエリプサが入りルームチューン)

 スピーカーシステムがソナス・ファーベルのエリプサに変更になり、低域が豊かになって63Hz、80Hzの残響音不足が解消したかのような鳴りっぷりです。エリプサに合わせてSVパネルを調整して音場を作り、気になる欠点を潰していくと、素晴らしい音になった、という頂点が必ず見つかります。

 この日も時間がかかったものの十分に満足できる音に仕上がりました。ところが一晩睡眠をとり、脳がリセットされると昨日の音が出ないのです。時間を掛け過ぎたチューンでよく起こる現象です。

 学問的な解明がなされているか不明ですし、言葉が妥当ではないかもしれませんが、人間の脳内にはイコライザが存在します。昨日と同じ音が出ない理由は一晩の睡眠で脳内に形成されたイコライザがリセットされてしまったことが原因です。この現象が起こるうちはシステムに周波数特性的な欠陥があると思ってまちがいありません。暫く音楽鑑賞を続けると新たなイコライザか形成されて昨日の音が蘇ります。

 昨年8月の初回チューンでは、この現象は皆無でしたから、部屋の状況は確実に悪くなっています。

 オーディオルームの内部を見渡して目に見える変化は、ウレタン塗装が部屋中に施されたこと、背面パネルの設置方法が変更されたこと、の2点です。何れかに原因があるのだろうと思っていましたが、先入観に惑わされていたようです。残響音の測定データに新しい事実が表れました。

 測定用の音源位置を変更すると、<グラフ11><グラフ12>のように200Hz以下の低域特性が大きく変化するのです。測定音源のスピーカー位置が変わって背面パネルの特性が変化する可能性は0%。D.Cubeの振動がダイレクトに伝わる場所、つまり床が怪しい!

 その後の経過は otoさんのブログ2009年11〜12月を参照してください。


<グラフ11> 測定:2009年10月28日    
--■--:実測残響時間  --◆--:最適残響時間    測定生データ091028-1


<グラフ12> 測定:2009年10月28日    
--■--:実測残響時間  --◆--:最適残響時間    測定生データ091028-2



otoさんのオーディオルームの残響特性 その5  2009年12月14〜17日

  測定:2009年12月15日 (いよいよ完成間近)

 信州まつもと <--> 札幌新千歳は2日に一回しか便がありません、いつも2泊3日の日程ですが、予想外のトラブルや新事実の発見があっても対応する時間がありません。今回は月曜日から金曜日までの長期日程で、耳休めのスキーを組み込んで最終調整です。

 床がしっかりして(otoさんのブログ2009年12月6日参照)、63Hz、80Hzの残響時間が正常な値に戻り<グラフ13>、低域の包容力が復活しました。一瞬の発音からどんどん変化してしまう楽器の実音を送り出す伝送特性の低域フラットより、残響音として部屋中に残り続ける長い響きの方が音楽再生に与える影響力が大きいのです。

 100Hz以下は耳の感度がどんどん落ちて行きます、暫く鳴り続ける低音がないと低音らしさを感じることが出来ないのかもしれません。シアターの低音には、ド・サ〜ンと響く尾鰭(おひれ)が加えられています、サーンがあると低音らしさが増大するのです。

 床が緩んで<グラフ11>に現れたミッドバス(100〜200Hz)が徐々に増えたため、ウレタンニスの塗りすぎが見過ごされてきましたが、設計強度の床に戻ってみると高音域の反射が多すぎてSVパネルによる反射音制御がうまく機能していません。サウンドステージの形が崩れていました。

 サウンドステージの形は、スピーカーのバッフル面がステージの最前列になる横長の長方形をイメージしてください。otoさんの調整はセンターが手前に張り出し、左右の袖が正面のコーナーに向かって後退する二等辺三角形になっていました。この形では音楽の緊迫感がリスナーに伝わってきません。

 包容力のあるサウンドステージが醸し出す深みのある佇まいを体験済みのotoさんにとって、殺伐とした気配で耐えられない音だったのでは?・・。

 三角形の原因はステージの左右をリスナー側に引き寄せるサイドパネル(下記写真の↓から二つ右側のSV900)の効果が半減していたためで、パネル周辺の平面壁からの単調で強すぎる反射音がその原因です。SV1300パネルを↓の位置に置いてサウンドステージが四角になりルームチューンは8割方完成です。

 一週間かけてチューンの予定が、たった5分で8割方完成で、ちょっと拍子抜けです。

 サウンドステージの形が整い、残響音が左右の壁伝いにリスナーを囲い込むように回り込んだことで、25Hzを頂点とする壁振動の低音と残響音が一体となってワイドレンジの残響音を形成し、音楽に違和感無く融合して音楽の包容力を増やす効果に変わりました。

*床振動、壁振動の詳細は第二部調音編で扱います、掲載まで暫くお待ちください

 基本的なサウンドステージが出来上がると細かいところが聞こえるようになり、ルームチューン続行です。

<要細部チューン1>: 天井の反射が強いので天井までの距離が短い前方に残響音の余韻が集中してしまい、楽音の余韻の尻尾がリスナーを包んでくれない。

<要細部チューン2>: 天井からの反射音が強く、サウンドステージが上空にせり上がっている。

 左右後方の壁面に小さな凸凹を付けて存在感の希薄なつるつる反射音に乱れを加えて存在感を与える。これだけで余韻の尻尾がリスナーを包むように変化します。

 上空に漂う余韻はスピーカー側低く目、リスナー側高目が鉄則。上にずらした3本(だったか? 写真に1本写っている)の細いリブで余韻がリスナー側上空に収束するようになった。もう一息です。



撮影:2009年12月15日


 壁面にルーターでスリットを彫り込めばリブが不要になって美しく仕上がるのだが変更や微調整が難しい。otoさんの改造意欲が納まるまで、この状態にしておくのが無難でしょう。


<グラフ13> 測定:2009年12月15日    
--■--:実測残響時間  --◆--:最適残響時間    測定生データ091215-1




otoさんのオーディオハウス完成

  2009年12月15日 (完成)

  フロントパネル〜前側サイドパネル
  ● LV1200ct x 1
  ● SV1200ct x 2
  ● SV1800sp x 2
  ● SV1500 x 2
  ● SV600 x 2
  ● SV1300 x 2
  ● 石パネル x 2
  ● SV900 x 2
  ● 石パネル x 2
  ● Gallery basso x 2

  後ろ側サイドパネル〜リアパネル
  ● SV600 8枚程度(左右壁面、テーブル横)
  ● LV3210 x 10相当


撮影:2009年12月17日




 ルームチューン続行の結果、フロント天井から落ちてくる中高域の反射音を減らす布が増えました。1kHz〜3kHzの残響時間を短くして相対的に5kHz〜8kHzを目立たせる目的も兼ねています。吸音スカラホールを使いたいところですが、1kHz以下も吸音してしまうので今回の目的に合いません。otoさんの奥様に助っ人を頼み、札幌駅近くの布地屋さんに買い出しです。

 布地は口から3センチくらいのところに布を広げ、チッ・チッ・チッ・チッ、チュッ・チュッ・チュッ・チュッなどの破裂音の反射を聞いて選別します。選んだ布は衣服の裏地に使う光が透けて見えるポリエステル製で、薄いけれど糸一本々は硬目で高音域の吸音が少ない布地です。<グラフ14>のように1k〜4kの残響時間の出っ張りだけが抑えられ、最適残響ラインの形に近付きました。これで完成です。出るはずの音がやっと出て安堵しています。

 ところで建築終了後のルームチューンは、かかっても2〜3ヵ月と思っていました。土台の柱の設置方向が設計と異なることに気付き、リカバリーしたつもりであったのですが・・ 確認不足でした。たった一つの見落としがルームチューンの完成を1年遅らせる結果となりました。

 オーディオハウスの構造には大工さんの常識と相反する仕組みが数多く含まれています。図面と電話の打ち合わせだけでオーディオルームを作るのは到底無理、と言うのが今回の貴重な教訓です。otoさんも仕事そっちのけで現場監督に徹したのですが、施工の行き違いが発生しました。トータルの労力を考えると建築現場に張り付くのが最善の策のようです。

ルームチューンの宿題

 <グラフ14>が完成時の残響特性です。最適残響時間と実測残響時間のズレが二カ所残りましたが、初期反射音を使った微調整で聴感上問題がない範囲に追い込みました。

 左右壁面に貼り付けた細い反射リブが高音域の反射音に存在感を与え、残響特性の8kHzの不足を補完して解決。

 25Hzを頂点とする超低音の残響過多は、柱強度より壁面の板強度が勝っており、壁全体が一枚の振動体になって振動していることを物語っています。柱強度を上げればピークが下がるのですが、次の理由により様子見で良いでしょう。

 今回のルームチューンは時間がたっぷりあったのでotoさんと一緒に沢山のCDを聴きました。25Hzの振動音は同じ壁面に貼り付けたリブの効果で高音域の反射音がミックスされて楽音と混じりやすいエネルギーバランスとなり、多くの楽曲で超低音の包容力の増加に聞こえるようになった。例外としてジェニファー・ウオーンズのザ・ハンターの1曲目で圧迫感のある低音を感じたが、たった一曲です。これ以上の躯体いじりは労多くして実りが少ないと断定できます。

 その後otoさんから報告がありました。気温が下がり躯体が締まったのか? ジェニファー・ウオーンズの圧迫感も消えたとのこと。これで一安心、寒い間はotoさんの改造癖が小康状態になりそうで、本家のデモルームに専念しようと思います。


<グラフ14> 測定:2009年12月15日    
--■--:実測残響時間  --◆--:最適残響時間    測定生データ091215-2




第三部 : 調音パラメータ

 個人宅のオーディオルームのように狭く仕切られた空間で音楽を鑑賞する場合、その再生音のクォリティーは、オーディオシステムより寧ろ部屋で決まります。

 そして部屋のクォリティーは、悪玉パラメータを徹底排除して実施した、本件の検証結果により、灰色から黒に昇格した反射率の断層を一つ加えて、建物由来の6つのパラメータでコントロールできます。

悪玉パラメータ   
1.定在波
2.フラッターエコー
3.壁振動
4.反射率の断層
善玉パラメータ   
1.初期反射音
2.残響音

● 悪玉パラメータは減らせば減らすほど音のクォリティーが向上する要素で、可能なら凡て排除したい共鳴音や振動音、不快な反射音です。

 建物の躯体構造(部屋の形や柱の材質・形状)と壁や天井・床の表面材が決まるとその量が確定してしまう要素で、ルームチューンでの改善が不可能ではないものの、新築時や改築時に大工工事に組み込んでしまった方が低コストで完成度を上げられるパラメータです。

 otoさんのオーディオルーム新築記 に、コストを抑えて悪玉パラメータを排除するノウハウが満載されています。画像も付いています。

● 善玉パラメータは増加させるに従い(限度はありますが)再生音が向上する要素で、反射音と、反射音の集合体である残響音。

 木造であれば反射音は目一杯増やしてかまいません。増やしきったぞ! と思えたら、測定器でミッドバスの残響時間を計り、ミッドバスのダブツキ成分を吸音すると概略最適残響時間&最適残響特性になります。

 測定器がなければブーミングが消えるまでミッドバスを吸音すればOKで、無償ルームチューンで検証済みの方法です。

 無償チューンでは、LV600パネルを大量に運び込んでミッドバス吸音過多の状態に追い込み、徐々に減らしてバランス点を見極めます。

 普通の作りの6〜12畳であれば、LVパネルまたはSVパネルまたはGallery-SVパネルと、Gallery-bassoパネルを推奨配置に置けば、ブーミングの解消とボーカルや楽器が立体的に定位するサウンドステージの創成が両立します。

サーロジック推奨配置


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 ● LV1800sp x 2  ■少し”ハの字”に開いて部屋のコーナーに押しつける左写真の方法と、SPを囲む方法をお試しください。コーナー型の方がサウンドステージの奥行きと広がりが深くなります。
 ● LV1200ct x 1  リスニングチェアの座面が高いとき1300。
 ● LV900 x 2  ■サウンドステージに深みを加えライブ会場のような臨場感を作ります。壁に沿わせて手前に引けば臨場感が増し、奧(SP側)に押しやれば減少します。耳の高さ(900程度)、または若干低いパネルが最適高さです。
 ● Gallery basso x 2  ウーファーの高さにに浮き上がりがちな低音楽器を着地させ、上下方向の分解能と佇まいの安定感を向上させる床置きパネル。SPから30cm前後の隙間を空けて設置してください。

 注) LV900, Gallery-basso は-spパネル無しではその効果を発揮できません。必ず-spパネルと組み合わせてお使いください。

 壁強度が低くてブーミングが相当強い部屋では、推奨配置のパネルではミッドバスの吸音力が不足することがあります。背の高い拡散反射パネルは設置場所がフロントとリヤに限られますが、背の低いLV600やSV600であれば置き場所に制限がありません。サイドパネルに続けてリスナー周辺に配置してミッドバスの吸音量を増やすことが出来ます。

悪玉パラメータ・定在波
 最も名の売れたパラメータだが知名度のわりに悪さをしません。例えば定在波により伝送特性にディップが生じても、残響音の周波数特性を下記グラフ(残響時間周波数特性の推奨曲線)のように作り込むことで体感低音はフラットに補正できてしまいます。

改善手段 1 斜め壁、斜め天井で、定在波の周波数を分散して伝送特性の凸凹をなるべく小さくする。
 oto さんのリスニングルームの半波長共振の定在波の周波数を下記に示します(この周波数の倍数にも定在波が発生する)。



 定在波は発生する周波数では伝送特性にピークやディップができる場所が必ず生じます。本件では、天井11度、左右合わせて6度の傾斜が効いたのでしょう、リスニングポイントの伝送特性に大きな破綻は出ていません。

 下記測定グラフが示すように、部屋条件や測定条件が少し変わるだけで伝送特性がコロコロ変わります。伝送特性の善し悪しと、音の善し悪しは1:1では結びつきません。

 「伝送特性=耳に届いたときのSPの周波数特性」と勘違いさせるような過去の刷り込みがあるため。伝送特性は再生音の善し悪しを示すものではない、と知性が理解しても、それでも気になってしょうがないのが伝送特性の宿命です。

 グラフィックEQを売ろうとする機器メーカーとオーディオ評論家の罠にはまってはいけません。GEQで伝送特性を整えることで音楽の説得力がアップするならまだしも、普通は悪くなるのですから。

 伝送特性の谷間の幅が1/3oct以下(下記「伝送特性02」のグラフの120Hzのディップ幅がおよそ1/3oct)になるようにルームチューンできれば、ほぼ無害と思って良いでしょう。

 低音の充足感は直接音だけで得られるものではなく。たとえばキックドラムが ’ド’ ’ド’ ’ド’と切れ味よく鳴っただけでは音楽に融け込むタイトな低音感は得られず、’ドスン’ ’ドスン’ ’ドスン’または’ドス〜ン’ ’ドス〜ン’ ’ドス〜ン’と超低音の余韻を伴って初めて切れ込みの良い豊かな低音とヒトが感じるのです。

 言い換えれば芳醇な低音感は残響音の支配下にあり、100Hz以下の残響時間が下記グラフのように急激に長くなっていれば定在波のディップを覆い隠して余りある低音として耳や体に届き増す。壁振動さえ押さえ込んでやれば、超低音の響きからブーミー感が発生することはありません。



2008/08/09 伝送特性01
偵察チューン・パターン1 (Mic:リスニングポジション)
■センターパネル2set ●後ろの壁に LV1800 10枚設置 ●1800〜3150mmはバーチ合板の平面


2008/08/09 伝送特性02
偵察チューン・パターン3 (Mic:リスニングポジション)
●センターパネル3set ●後ろの壁に LV2400(1800+600) 10枚設置 ●2400〜3150mmはバーチ合板の平面


2008/10/06 伝送特性03
ファイナル・チューニングに先だってoto さんの2ヶ月間の奮闘の成果を確認
(Mic:リスニングポジション)
●センターパネル3set ●後ろの壁に LV1800 設置  ●1800〜3150mmは段ボールなどでフラッター対策
 

2008/10/06 伝送特性04
ファイナル・チューニング途中経過(Mic:リスニングポジション)
■センターパネル3set  ●後ろの壁にLV1800設置  ●1800〜3150mmはバーチ合板の平面
                 


悪玉パラメータ・定在波
 改善手段 2 : 部屋中をスウィートエリアにして何処でも音楽が楽しめる音場とし、その日の気分がオーディオ嗜好なのか、コンサートホール嗜好なのか、ライブハウス嗜好なのか、に合わせてリスニングポイントをチョイスする。

球面波スピーカー
 オーディオシステムでライブステージの佇まいを再現する最も簡単な方法は、音を四方八方に振りまく球面波SPの採用です。 楽器と同じように、リアにもフロントと同じ音が送り出されるため、背後に反射性の壁さえあれば生演奏の佇まいが再現される可能性が高いSPです。

 また部屋中隅々まで同じ音が届くので、特定のスィートスポットが発生せず、部屋中がスウィートエリアになる、という特長もあります。しかしリスナーに向かって音が飛んでくる肉迫感が足りない、という欠点があり、万人の支持は得られていないSPです。
 
サウンドステージ
 海岸に打ち寄せる波が石垣の内側に回り込むように、音波にも障害物を迂回して球面波を作る性質があります。低音域だけですが、単一指向性の普通のSPの音も球面波になって、後に固い壁があればサウンドステージを作ります。  
 
 高音域はSPキャビネットのサイズに比べて音の波長が短いため(10kHzで3.4cm)、音の迂回(回析現象)が起こりずらく、サウンドステージの生成に必要な量の高音域の反射音が得られなくてサウンドステージが生成されません。
 
LVパネル、SV(ステンベール)パネル、Gallery-SVパネル
 現代SPはキャビネットのコーナーを丸くしたり、スコーカーやツィーターにドームを採用するなどして背後に回り込む高音域を増やす工夫をしていますから、少ないとは言いながら旧型のSPに比べればより多くの高音域が背後に回り込んでいます。  
 
 SPの後に漏れてくる高音域を増幅して跳ね返す仕組みが作れたなら、音を前に押し出す普通のSPのタイトな音に、球面波SPの得意技である、例えばボーカルの佇まいが明確な唄に込められた思いが涌き上がるような奥行きのあるサウンドステージを付加することが出来るのではないか・・・? との推測が成り立ちます。

 体験していなければ信じられないことと思いますが、LVパネルなどでSP背後の壁面から跳ね返る初期反射音の高音域を増やすに従い、単一指向性の普通のSPが球面波SPの特性を合わせ持つようになってスウィートスポットがどんどん広がっていきます。

 前に押し出されるタイトな音を堅持しながら、例えばボーカルの佇まいが明確な唄に込められた思いが涌き上がるような奥行きのあるサウンドステージが付加されるのです。

 音を前に押し出す力が強すぎてサウンドステージに縁が遠いと思われているホーン型SPでも、水平拡散能力が高いGallery-SVパネルと組み合わせれば奥行きと高さのあるサウンドステージを合わせ持たせることができます。

 反射パネルの背丈もアジャストして部屋中がスィートエリアになったときがルームチューンの完成です。

定在波を逆手に取って音楽を楽しむ
 定在波があると壁際では伝送特性の低音域が上昇しますが、壁振動が無ければ包容力のある低音が増えるだけで、ブーミーなダブツキ音は発生しません。

 oto さんのオーディオルームはお客様に発想の転換を迫ることでしょう。

● リスニングチェアは、音楽のスピード感溢れるオーディオマニアを唸らせるスウィートスポット。
● 壁際のベンチは低音の包容力溢れるリラックスサウンドのスウィートスポット。
● 部屋のコーナーは低音によじれがあるライブハウスのようなスウィートスポット。

一つの部屋で沢山の音場を楽しむことが出来ます。


悪玉パラメータ・フラッターエコー
 改善手段(新築) : 斜め壁、斜め天井を設け、平行面を排除する
 新築であれば otoさんのオーディオルーム新築記 を参考にして頑丈な斜め壁を作ればOKです。

悪玉パラメータ・フラッターエコー
 改善手段(改築) : 斜め壁、斜め天井を設け、平行面を排除する
 改築は大工さんの手を借りれば簡単なことですが、自作はかなり厄介です。どこまで完璧を求めるのかで費用も大きく変わります。

 例えばSPをフリースタンディングに配置して、ボーカルや楽器が3次元ホログラフィーのように定位する奥行きや高さのあるサウンドステージを作ろうとするのであれば、平行壁を総て排除する覚悟が必要であり、新築や改築した方がローコストでルームチューン向きではありません。
 
 部屋中をカーテンだらけにすることでフラッターを消去する方法もありますが、楽器の質感を脳内イコライザーで補完する特技をお持ちの方を除けば、「音楽の躍動感が消失してしまう」。「3次元ホログラフィーは望むべくもない」。などの理由によりお勧めできません。LVパネルやGallery basso、Gallery Joser などの反射パネルをピンポイントで置く方法がルームチューン向きの方法です。

 SPとリスナーの間の空間は物のない空っぽの確立が高いスペースで強いフラッターエコーが発生するエリアです。

 また、この空間は聴覚の集中度が高く、フラッタエコーによる解像度の低下が顕著に表れるエリアです。

Bサイドパネル
CGallery-basso

がフラッターエコーの消去の役目も果たします。

Gallery-Joser 
天井〜床のフラッター消去。壁に付ければ前後左右のフラッターも消去することができる。


吸音スカラホール
 天井は床や前後左右の壁面に比べれば吸音材使用の欠点がリスナーに聞こえにくい位置です。背後に空気層を持つ吸音スカラホールはミッドバスの帯域までバランス良くフラッターエコーを吸収するため、特定の帯域のみ多量に吸音したときに生じる逆位相感が出にくいことが特長の吸音材です。従って少量(4枚程度まで)であれば、吸音でフラッターエコーを消去することが可能です。


悪玉パラメータ・壁振動
 改善手段 1 : 柱を太くする、または、鉄やステンレスで補強する(改装にも応用できる)
 改善手段 2 : 共振周波数の異なる板材を貼り重ねる(石膏ボード+合板など)

 1.2.共に otoさんのオーディオルーム新築記 で使った手法です。写真を参照してください。

 4寸の柱では振動強度が足りず、振動のピッチ(周波数)も高すぎるので、土台から胴縁の間(3000mm)の柱の側面に、厚さ:6mm、幅:100mm の鉄板の補強を加えたところ。鉄が生理的に嫌いであればステンレスに置き換えると良いと思いますが、柱を5〜6寸に太くした方が安いかも。

 更に柱に囲まれた狭いエリアで発生するピッチの高い振動を抑制する目的で、柱の間のOSBボードに12.5mmの石膏ボードを貼り込み、フェルト+木+フェルトの制振部材を組み込んで内壁側の壁振動を押さえ込む構造としました。

悪玉パラメータ・反射率の断層
 改善手段 : 反射面と吸音面の境を作らない。避けられない境には緩衝エリアを設ける
 商品化初期のLVパネルは鋸目の波状痕と節目の凸凹を残したままのリブを素材にしてパネルを作りました。リブパターンで中域〜8kHzを水平拡散し、波状痕や凸凹で高音域をランダム拡散させる仕組みです。
 
 その後の設置テストや無償ルームチューンの結果により、石膏ボードや壁紙仕上げの部屋に置く拡散パネルでは、波状痕や凸凹は不要のようだ・・。との結論になり、鉋仕上げの現在の姿の LV や SV パネルになりました。

LVパネル
 低音域に重大な欠陥(強いブーミー感)があり、スタンダード配置または推奨配置を越えるミッドバスの吸音が必要な部屋の場合は、

ステンレスリブによる超低音の補強を考慮したSV(ステンベール)パネルが有効ですが、

壁や天井中ドカドカという症状でなければ、LVパネルでルームチューンが可能です。

 しかし高音域を全方位拡散させる仕組みが不要という訳ではありません(ルームチューニング徹底解明 / コンピュータ・シミュレーションが明らかにした拡散反射音の振る舞い参照)。
http://www.salogic.com/Basic-RoomTuning/Basic-RoomTuning.htm
 
 高音域を吸音する特性の石膏ボードの面に隣り合わせて、高音域を拡散反射するパネルを置いてはいけない。境目から逆位相の音に類似する不快な雰囲気が発生してしまうことが分かったからです。不快な音の原因は反射音の周波数特性の急変(断層)によるものです。

新製品のGallery-SV

 本件では、SPの外側に置いた石パネル、リスナー後方に設置したLV3210/10枚が中高音域の反射率が高く、取り扱い要注意です。

 再生音にハリが出るためこの音質を好む方も多いと思いますが、石膏ボードに壁紙仕上げの部屋に無造作に置くと反射率の断層が発生します。

 症状は不快な雰囲気の発生と、演奏者の息が合わなくてバラバラにプレーしているかのような音楽性の欠如です。

 石膏ボード壁の部屋にはLVパネルやSVパネルの相性が良く。木壁や石壁の部屋であればウレタン塗装したLV・SVパネルや、Gallery SVパネルとの相性が良くなります。

 石パネルを石膏ボードの部屋に置いて音のハリを得ようとするのであれば、石パネルと境を接する石膏ボード側の幅 30〜40cm に、石パネルの近くは密に、外側は隙間を空けるように、LVパネルのリブのような角材(2〜4cm)を並べて反射率の断層を和らげる必要があります。

 石パネルを囲むようにLVパネルを置き、石膏ボード〜LVパネル〜石パネル〜LVパネル〜石膏ボードとしても良いでしょう。

 反射率の断層に類似する不快な音は気柱共鳴を利用した吸音トラップでも発生します。アナログEQやIIR(非直線位相のデジタル)方式のグラフィックEQで伝送特性を補正しても発生します。

 不快な音の原因は、気柱共鳴では実音と共鳴音の無相関な位相のずれ。EQでは位相の周波数特性の急激な変化によるものです。

善玉パラメータ・初期反射音
 偶然が重なれば、SPをフリースタンディングに配置するだけでサウンドステージが再現されることもあるが、そんな偶然は滅多にあるものではない

 普通のSPは単一指向性ですから、音を前に押し出すばかりで佇まいの再現性に欠ける欠点を持っています。SPを置く部屋の一次反射音の周波数特性がたまたま良くて、その反射位置も適切、という偶然が重なればSPをフリースタンディングに配置するだけでサウンドステージが再現されますが、そんな偶然は滅多にあるものではない。背後からの初期反射音を積極的にコントロールすることで任意の形のサウンドステージを作り出すことが出来ると分かっているのですから、オーディオシステムの能力を120%引き出して投資額に見合う音楽を享受しない手はありません。

善玉パラメータ・残響音
 6つのルームパラメータの中で唯一数値による解析が可能なパラメータ。残響時間と残響時間の周波数特性の二つに目標値を設けてルームチューンを行うことができる。
 残響音の中音域の減衰時間を最適値に整え、残響時間の周波数特性をドンシャリ型(強いドンと少しシャリ)に整えるとブーミングが押さえられると同時に低音の充実感が増大します。この特性のサポートがないと初期反射音が作るサウンドステージ上の楽器やボーカルに躍動感が生まれません。


第四部 : 参考データ

■定在波■
定在波がブーミングを起こすことなど無い

 定在波がブーミングの原因であるかのように説明されることが多いのですが、定在波自身がブーミングを起こすことなどありません。平行壁の間を往復する低音の残響音が位相干渉により2倍に誇張されたり、打ち消されたりするだけのごく単純な物理現象です。

 定在波による伝送特性の凸凹はミッドバス帯域以下に現れます。机上で伝送特性のグラフをみるとブーミングの原因が定在波であるかのように見え、疑われて当然ですが、凸凹をグラフィック・イコライザーで補正したって定在波が原因と言われる音楽の躍動感の欠落は蘇らない・・。と云う事実が、定在波以外のところにブーミングの原因があることを示唆しています。

伝送特性の凸凹は楽器の音色にさしたる影響力を持たない
 殆どの理論派のオーディオマニアが勘違いしているに違いないと思う点は、リスニングポイントの伝送特性は聴覚が感じる楽器の音と同じではない、いやむしろ全く違う音である、と云う事実です。

 理解していれば 「グラフィックイコライザーをアンプ系に入れる」 という発想自体が生まれないはずです。

 部屋の出来不出来に関わらず、スピーカーメーカーのデータシートに記載されている周波数特性の直接音が耳に届きます。しかも最初にです。楽器の音やボーカルの歌声の実音は部屋が悪くても正しく耳に届くのです。

 その直後に音楽の抱擁感を司る残響音(定在波やフラッターエコーも一色単に含まれる)が、実音に比べれば遙かに長い時間、室内を埋め尽くすので、リスニングポイントにマイクロフォンを置き、たくさんの瞬時レベルを加算して、その数で割った加算平均が示す伝送特性では、残響音の特性が誇張されて表示されることになります。

 伝送特性の凸凹が実音より時間が遅れた残響音の凸凹の集合体であることが分かったところで想像力を働かせると、伝送特性の細かなピーク・ディップは楽器の音色にさしたる影響力を持たないのではないか、との仮説が成り立ちます。

定在波の音圧分布とリスニングポイント
 例えば6畳間の長辺を約3.4m(音速は340m)とすると、基準振動モードの周波数は50Hzです。そして50Hz、100Hz、200Hzの定在波の音圧分布は下記のようになります。
前後方向の1/2波長
基準振動モード(50Hz)

50Hzの定在波の音圧
赤いところ:音圧が高い
白いところ:音圧が低い
前後方向の1波長
振動モード(100Hz)

100Hzの定在波の音圧
赤いところ:音圧が高い
白いところ:音圧が低い
前後方向の2波長
振動モード(200Hz)

200Hzの定在波の音圧
赤いところ:音圧が高い
白いところ:音圧が低い

 3枚のイラストから、リスニングポイントの位置を前後に動かすと、50Hz、100Hz、200Hzの伝送特性の組み合わせがガラガラ変わり、音の表情もガラガラ変わるように思われますが、聴感で感じる変化は多くの場合基準振動モードの50Hzの変化だけで、低音が少なめ、と感じるか、多すぎると感じるだけです。

 つまり音楽鑑賞の立場から見れば、基準振動モードの影響だけ考慮してリスニングポイントを選択すれば良さそうです。

幅の狭い伝送特性のディップは無視できる
 結論を導き出すためには聴覚の特性をもう一つ確認しておく必要があります。聴覚は幅の狭い伝送特性のピーク・ディップには殆ど感度がなく、1/3octくらいの幅の谷間(下記グラフの棒1本)が単独に存在しても伝送特性に異常があると感じることはありません。

 何故ならスピーカーメーカーがギャランティーしている周波数特性の楽器の音が最初に届いており、その後に続く余韻のディップを表しているに過ぎないからです。


 ここまで整理すると、定在波対策は非常に単純化された簡単なものになります。

定在波は基準振動モードのみ対策する。
幅の広いディップが生じないよう、定在波のディップが二つ以上重ならない位置にリスニングポイントを設ける。

 6畳間の前後・左右・上下の基準モードの定在波を図にすると下記となります。
前後方向の1/2波長
基準振動モード(50Hz)

 前後移動で50Hzのレベルが変わる。後ろの壁に近い位置がフラットポイント。

 低域多めが好みであれば後ろに下がる。少なめが良ければ前に出れば良い。
左右方向の1/2波長
基準振動モード(67Hz)

 部屋を横長に使いシステム全体を左または右に寄せれば67Hzフラットのポイントがあるが、左右の耳に入る音圧が異なるのが欠点。

 ディップ一つを許すことにして、左右対称のセンター配置が妥当。
上下方向の1/2波長
基準振動モード(70Hz)

 耳の高さを低めにすると70Hzフラットのポイントに一致する。

 リスニングチェアを低めにするのが最も有効な対策。

 新築であれば天井を高く設計すれば良いし、角度のある傾斜天井なら上下の定在波が消える。

■フラッターエコー■
矩形の部屋は残響時間よりフラッター時間の方が必ず長い

防振構造の斜めパネルを壁上部に取り付け、斜めパネル(上部)のエリアと、平行壁(下部)のエリアの、残響+フラッターの時間を比較

・ 床面積 : 17.5畳
・ 室容積 : 4040W×6075D×3000H = 73.629u
・ 最適残響時間 : 0.53秒

 職人さん撤収後、部屋を空っぽにして、フラッター有りのエリア(床側/Mic高さ600mm)と、フラッター無しのエリア(天井側/Mic高さ1800mm)の残響時間を測定。

 500Hzの残響時間を比較すると
・ フラッター有りのエリア : 1.39秒
・ フラッター無しのエリア : 1.07秒

 部屋中が反射壁であるから、残響時間の1.07秒は測定位置に関わらず大きく変化しないはず。従って500Hzを中心とする1/3octの帯域では、<残響時間 : 1.07秒以下*注>、<フラッターエコー時間 : 1.39秒>である。

*注:フラッターエコーのかぶりがあるので、真の残響時間よりかなり長い数値になっているはず。

データの詳細はルームチューン68参照

強いフラッターエコーによる症状
 上記測定結果のようなフラッターエコーがあると、眉間に皺が寄ってしまうような癇に障る音。ボーカルの佇まいが霞んでしまう立体感が欠如した音。モヤがかかった平面的な音。など々、悪口に暇(いとま)がないほどの強い症状が現れます。

 これが怖くて理詰めの設計者は吸音構造に嵌り込んでしまうのでしょう。上記特性を最適残響時間に追い込んだ経験がなければ、成功すれば音楽が弾んでくれると分かっていても総板張りのオーディオルームに挑戦する気にはなれないのが人情です。


 だから普通のオーディオルームでは吸音が必要なのだ!、と言われてしまいそうですが、フラッターの弊害を押さえ込む量の吸音を実行すると(*注)、もともとフラター以下の量しかなかった楽しく音楽を聴くために必要な残響音も分け隔て無く吸音されてしまいます。カサカサのミーラのような楽器の音が横方向に平面的に並ぶだけの紙一枚のオーケストラなんて想像しただけで愉しくないと思うのですが・・・。

(*注):フラッターを残したまま響き過ぎを押さえようとすると、最適残響時間の半分以下の値にならないとフラッターの弊害が隠れない。



壁振動が少ない木造の部屋であれば、フラッターを消去して残響音をそのまま残すだけで最適残響時間付近に収束する
 StainVeil(ステンベール)パネルとオーディオ機器が設置され、平行壁が殆ど覆い隠されてフラッターレスになると、吸音材を使わずとも残響特性が最適残響時間付近に収束する(125〜250Hzの残響時間を底に低音域と高音域が上昇)。


音楽が弾んで楽しく聴こえる残響時間の周波数特性

・ 500〜1kHzを基準として、

・ 125〜250Hzは基準以下
・ 100Hz以下は大幅に基準以上
・ 2kHz以上は若干基準以上

が理想特性(最適残響時間のラインの形)です。残響時間の数値が最適残響特性に近いに超したことはありませんが、より重要なポイントは低域急上昇・高域若干上昇の形をいかにして作るかです。

● 50Hz以下の黒と赤のラインは生データの読み方により、どちらとも読める領域です。初期反射音を適切に処理すれば壁振動や定在波の影響をプラスに転じて黒のラインの響きに聞こえ、処理を誤れば赤のラインの響きに聞こえることを示しています(壁強度が低いと赤のラインが右方向に移動する)。

● 斜めパネルのシナ材の硬度が足りず、4kHz以上に下降特性がみられます。バーチ合板など、表面が綺麗で堅いものを使いたいところですが、値段が高すぎです。

 8kHzの残響時間がミッドバス以上ですから、初期拡散音の高音域を増やすことで聴感補正すればOKです。


データの詳細はルームチューン68参照
 
新築であれば、天井傾斜だけは是が非でも確保する
 前後・左右の壁は音を斜めに反射するパネルを置くだけでフラッターエコーの消去ができますが、振動しない傾斜天井を後付けする工事はほぼ不可能です。是が非でも直線傾斜または鋸傾斜で天井を設計してください。

 高さが限られており、傾斜天井が無理であれば、Galleru Pyramid Joser の出番です。聴覚の意識が集中するスピーカーとリスナーの間の床に置くと最も高い効果が得られます。


 フラッターを消すだけなら、天井に吸音テックスを張るなどの手がありますが、音楽の躍動感が激減するので絶対にお勧め出来ません。音の悪さに嫌気が差しても改修すら不可能です。

 床の絨毯も吸音テックスと同じ効果ですから、フラッターエコーを吸音主体で処理したいのであれば Joser と絨毯の組み合わせが良いでしょう。嫌気が差したら何時でも撤去出来ます。

定在波を避ける天井傾斜の方向
 定在波による低域不足対策も同時に考慮すると、フロント(SP側)より、リア(リスナー側)の天井が高い方が有利です。天井傾斜は前から後ろに向かって高くなるように設計すべきです。

新築であれば壁も斜めに作るのが一番安上がり
 左右の壁は片側3度の傾斜でフラッターエコーが止まります。斜めにできなければ偏向反射の Gallery Wave を壁に取り付ければフラッターが消えますが、設計段階で壁を斜めにした方が安上がりです。


 リスナー後方の壁にGallery SV などの偏向拡散パネルを付け、フロントにSPパネルとCTパネルがあれば前後のフラッターも止まります。