無償ルームチューニング 136

-136-
総合サムネイル
TOP Home お買い物 商品スペック お問い合わせ

 雪が降る前にデモルームの地ならしを終わらせねば、と慌ただしかった時期の無償ルームチューンで、その後も気忙しい期間が続いて記憶が薄れつつ有りますが、この物件の数寄屋造りも有益な示唆を与えてくれました。

 下の写真のように大きな空間(40畳程度)が間仕切り壁で二つに分割されており、右側のスペースがオーディオルームです。


 oto さんのオーディオルームの事例ですが、高音域の残響時間を延ばそうと天井のバーチ合板にウレタンニスを塗ったところ、音楽ソースに含まれる録音現場の初期反射音や残響音が天井に引き寄せられてクラウド化し、

無意識にですが、聴覚が正面のボーカルに聴き入ったり、天井の余韻に聴き入ったりと、集中力が上下にぶれて散漫になってしまうのでしょう、オーディオルーム完成の初期の頃に体験した涙が滲む楽曲を聴いても、あくびが出そうになる。そんな事態に陥ったことがあります。

 そのクラウドを数十倍に増量するとこんな音になる。それを体験させてくれた貴重な数寄屋天井のオーディオルームでした。

 フランスやドイツにある大礼拝堂も盛大な響きが天井から降り注ぐのですが、胸から下の足下に波立つようにうねる超低音の湖があるから荘厳で厳格な雰囲気が漂うのですが、湖がない木造の数寄屋造りでは同じ状況にはならない。

 そんなショッキングな体験を与えてくれたオーディオルームです。

 この建物は音楽再生を意識して設計した部屋ではなく、男の隠れ家にオーディオ機器をオブジェとして置いた。そんな印象のオーディオルームでした。



http://community.phileweb.com/mypage/entry/2608/20111203/27051/



 天井の角材(横方向)の正確な寸法は不明ですが、多分45mm□の根太材相当を数寄屋風にアレンジして天井が構成されています。

 LVパネルを横使いにして天井全面に敷き詰めたようなもので、もちろんNGですね。凡ての音楽がBGMになって天井から降り注いできます。オーディオルームであれば、角材は縦使いが鉄則です。

 無償ルームチューンのご依頼ですが、手の付けようが無いかも? 音出しの瞬間に強く感じた再生音の第一印象です。


 気を取り直し、記憶の引き出しを全開にしてパネルの最適配置を模索したところ、いつもよりカット&トライに時間がかかりましたが、下記配置に辿り着きました。

 最後までセンターパネルの形状を迷いましたが、出来上がってみれば、TV有りの部屋の定番にできそうなバランスの良い姿に収まりました。

● SPパネル : (1500 + 1500 + 1200) x 2
● CTパネル : (700 + 1200) x 2
● サイドパネル : 900 x 2
● 床パネル : Basso x 2
● リアSP用、SPパネル : 1200 x 2


 定位不明な音をその表面に引き寄せるSVパネルの効果により、切り妻天井の△エリアに集中していたホールの残響音の響きが引き下ろされ、四方のスピーカーに囲まれたエリアにサウンドステージが着地してクラシックのコンサートホールのような音場になりました。

 マーラーとベートーベン専用のオーディオルームとのことでしたから、ベストの音場です。




 リアスピーカーから 2m ほど離れた後方に置いたリアパネルの効果は予想を超えて大きく、5.1chのオケラを再生すると忽然と大コンサートホールが姿を現します。




 ところで、これからオーディオルームを計画している方は桟木をリブ状に横使いする天井は絶対に採用しないで下さい。天井は縦使いが鉄則です。横使いはルームチューンがクリティカルでアマチュアの手には負えません。

 ついでに下記も採用禁制の建築構造です。

 内壁を支える柱無しの壁材は、100Hz以下の帯域に位相がでたらめな振動音を垂れ流し、逆位相的圧迫感を伴う不快な気配が漂う音場を作ります。

 30x40mmの桟木で下枠を組み、石膏ボードを打ち付ける。遮音性能が良いので採用しがちな壁構造ですが、ブーミングの大量発生と、低音楽器の所在が不明な音場になります。


 クッションフロアも同類構造なので御法度です。