SX-DW7をSPD-P1(P1kit)でドライブ



キーワード

  ALTEC515Bのグループディレー
 TANNOYモニターゴールドのグループディレー
 YAMAHA10Mのグループディレー

 ディレーで位相を合わせる(動画シミュレーション)

 DW7をパワードサブウーファーとして使うときのグループディレー

 SX-DW7 vs SPD-P1ドライブSX-DW7

■ 昨年末、Victorより発売されたSX-DW7をFilter
OFFでの使用を予定しています。P1kit を SX-DW7の周波
数特性に合わせて頂くことは可能でしょうか。


■ 大変評判の良いサブウーファーのよう
ですね、専用の補正特性を作るには測定が必須の作業です、
その測定結果に聴感での補正を加えながらDSPに与える仮の係数ファイル
を作り、この作業を複数回繰り返して聴感に一致する係数ファイルを作ります。

サイン波による周波数特性は殆ど役に立ちません、
インパルス応答を基に周波数特性と時間特性を算出し、逆補正の条件を
算出します。DW7を1ヶ月程度お借りしないと不可能な作業であると同時に、
特注の仕事としてお受けすると、かなりの費用が必要になります。

売れ筋のサブウーファーをターゲットに、専用のプロセッサーを
販売(P1kit 用のオプションROMも計画)する予定がありますから、
そのデータを先行して作るつもりになれば、
お申し出に無償でお答えすることは不可能ではございません。

まず1ヶ月程度DW7が借用可能か否かお知らせ下さい。
可能であれば、日程をご相談させていただきます。



SX-DW7以外の機種のご希望もお寄せ下さい、
SPD-P1に補正データを組み込んで、デモ機をお貸しいたします。




周波数特性

借用したDW7を測定いたしました、オーディオルーム(無響室ではない)で
測定した結果で多少の誤差を含むものですが、メーカー発表(ラジオ技術)の
周波数特性と殆ど一致し、30Hzまでほぼフラットです。

SPD−P1で周波数特性を補正するとしたら、20Hz以下のブーストですが、
バスレフ型のサブウーファー比で低域のレンジが1オクターブ広く、
MFBや信号処理などを使いスピーカーユニットの許容範囲内の補正がかかった
サブウーファシステムですから、周波数特性を補正する意味があるか否か
迷うところです。

SPD−P1で40Hz以下にパスバンドを設けたものが下記の左4つです。






位相(時間)特性

ピュアオーディオのスピーカーシステムはほぼ例外なくマルチウエイの
構成で、ツイーターとスコーカー、スコーカーとウーファーなどのクロスオーバー
ポイントの位相がシビアに整合されています。

そこに位相に無頓着なサブウーファーを加えて良いものでしょうか?

人の聴覚は左右の耳に到達する楽器の音のごく僅かな時間差を検知して
楽器の方向や距離、楽器の輪郭や存在感、佇まいなどを認識します。
CDプレーヤーがCDから音を読み出す間隔は「/44100秒に一回」ですが
驚くことに人の聴覚はこの1データ分の時間ズレを検出することができるのです。

これほど精密な聴覚に、位相を無視したサブウーファーを追加して、
スピーカーシステムのクォリティーが損なわれることがあっても、向上することはありません。

  ALTEC515B
(38cm)のインパルス応答


見慣れないデータだと思います、パワーアンプが駆動してから、スピーカーユニットが
動き出すまでの時間の計測です。
左端が駆動点で時間 ’0’、
右端が時間 ’2msec’(1000分の2秒)です。

更に拡大すると



アンプが駆動してから 156.5μsec(115μsecとも読める) 後にコーンが動き出す
ことが分かります。
つまりALTEC515Bの反応速度は156.5μsecです。

注1.階段状の波形はFFTの最小分解能により発生したものです。実際の特性は
階段を滑らかに補正したカーブです。
注2.立ち上がりの傾斜角度はウーファーの周波数特性に依存します。
一般に高音域の周波数特性が良好(ウーファーとしては?)な
ユニットは立ち上がりが速くなります。「注3」もご参照下さい。
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以下各種スピーカーの反応速度です。

  TANNOYモニターゴールド(38cm)のインパルス応答



拡大データも測定したのですが、整理の際に削除したか?、見当たりません。
概略ですが、
TANNOYモニターゴールドの反応速度は140μsec程度です。

650μsec付近から始まる細かい振幅は、同軸上のスコーカーの応答です。
スコーカーの振動板が後退しているため、ウーファーの発音より510μsec
遅れています。蛇足ですがこの結果から、

直線位相のデジタル・チャネルデバイダーでウーファーの時間を510μsec遅らせると、
モニターゴールド・ユニットの位相干渉の無い素の特性が聴けることが分かります。

510μsecはCDから音を読み出す間隔 「/44100 秒」 の28.7倍のズレに
相当します。1個のズレで音象定位と楽器の存在感が惑わされる聴覚の
精度に比較すると、空恐ろしい数値です。


これらの時間ずれは直線位相が実現できるDSPによるFIR形式のチャネルデバイダー
以外では救うことができません、つまりアナログ・チャネルディバダーや
DSPの演算速度の限界によりIIR形式を採用したチャネルデバイダー
では周波数特性と位相特性を同時に満足させることはできないのです。


しかしFIRが必ず正しいとも言い切れません、
音楽の背景のエコー成分などに支配される演奏の臨場感や楽器の佇まいのなどの
再現性は位相を合わせることで格段に改善されます、
一方この位相ズレがSPKの音色を作っているかもしれないビンテージスピーカーでは、
オリジナルの持つ音色が損なわれたと感じるかもしれません。

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  YAMAHA 10M(初期モデル、16cm)のインパルス応答


YAMAHA 10M 拡大


録音スタジオのReMixモニターとして世界中で使われた密閉型の16cmウーファー。
16cmでも115μsecで、38cmウーファー比で際立ったスピード差はありません。

注3.「注2」にも書きましたが、立ち上がりが速いのはウーファーの高域特性が
良いからで、ウーファーの反応速度ではありません。


以上
普通のオーディオルーム(無響室ではない)で測定したラフなデータですが、
オーディオ用ウーファーの反応速度の概略を掴んで頂けたと思います。


サブウーファーに使うスピーカーユニットに、立ちあがり時間120〜150μsec
程度のウーファーを採用すれば、サブウーファーユニットのディレーを考慮
せずにサブウーファーを構成することができます。


SX−DW7をSPD−P1でドライブするには、

注:この項目は測定の初期段階の結果からDW7の速度を予想したものです。
次の項の「耳でディレータイムを確定する」にあるようにDW7の
実状とは一致しておりません。動画シミュレーションの説明のために
削除せずに残してあるものです。

DW7の反応速度を知る必要があります。
メーカーから発表されたデータは無いと思われますので、測定しました。

ローパス周波数120Hz


ローパス周波数80Hz


ローパス周波数40Hz



DW7のローパス周波数を120Hzに固定してSPD−P1で位相補正をかけます。
一般に市販のサブウーファーのインパルス応答を測定すると、フィルターをOffに
できないものが多いこともあり、スピーカーユニットの反応速度がメインスピーカーの
反応速度の10倍以上遅れるものが多いようです。

つまりサブウーファーをメインスピーカーと同列に並べたのでは、位相整合はまず不可能で、
サブウーファーをかなり手前に配置しないと、メインのウーファーとの
位相整合がとれないのです。しかも一般にローパスの周波数を動かすと、
その距離も連動して変化するのが通常です。
ローパスポイントの変更毎にサブウーファーの位置を前後する必要があります。




SPD−P1(P1kit)でDW7との位相整合を取るには、デジタル信号処理で
等価的にサブウーファーの位置を移動する方法
で位相調整を行います。

SPD−P1と市販サブウーファーを組み合わせてスーパーウーファーを構成するには、
サブウーファー付属ののローパスフィルターはOffまたは最大周波数に設定します。

DW7ではフィルター周波数の最大値の120Hzに設定します。
上記120Hzのインパルス応答から、グループディレイ=8.5msecであろうと仮定して
メインスピーカーのウーファーとDW7のウーファーの動きをシミュレートすると
下記のようになります。
サブウーファーの音が8.5msecメインより
遅れていると、クロス周波数100Hzでは、
メインとサブの位相差は306°になる。
DSPにより、グループディレーを1.5msec
追加すると同位相で振動する。

100Hzの振動モードシミュレーション


どちらの音が正しく波形合成されるのか、一目瞭然です。

サブウーファーの音が8.5msecメインより
遅れていると、クロス周波数60Hzでは
メインとサブの位相差は180°になる。
DSPにより、グループディレーを8.17msec
追加すると同位相で振動する。

60Hzの振動モードシミュレーション



SPD-P1(P1kit)では、フロントパネルのD1、D2を設定すると
振動モードを同位相にするためのディレーが自動挿入される。




--- スピーカーの動きを更に詳しくゆっくり動かしてみると ---

最初の一回はメインのウーファーだけ動き、1回遅れてサブウーファーが動きます。

最初はメインのスピーカーだけしか鳴らないのですから、メインのシステムの音色が全く変わらない
理由の一つであり、SPD方式の特徴です。(PAT-P)。
人の聴覚は先に到達した音の特徴を敏感に捉えます。

100dB/octで高域遮断されたサブウーファーの音色はイベントの解解のSW-1600Aの項
イベントでも、ウーファーだけを鳴らし、その音を聞くというデモを行いました。パーカッション系のソフトでは、バスドラムに合わせて、時折心臓の鼓動のように低い音が「ぼわっ」・「ぼわっ」と聞こえるだけです。音量は非常に小さいのですが、体に直接、音圧を感じるような力強い低周波を発生していました。」
のような音ですから、クロスポイントの音波の波面を合わせると元音と融合します。

SPD−P1(P1kit)では任意のサブウーファーをお使い頂くわけですが、
スピーカーユニットのグレードに注意してください、大振幅に
より高調波が発生するグレードの低いユニットではミッドバスの音が付加され
サブウーファーが置かれた位置が分かるようになります。






耳でディレータイムを確定する

普通のサブウーファーは音の遅れが測定で確認できるのですが、
このSX−DW7は観測データに不明点があり時間が確定できません。
そこで耳で判定するためのオプション・ハードウエアをP1kitに増設しました。


16進SWを2個付けて、83.3333μsec間隔で、0〜21.25msecの
ディレーの挿入ができる構成としました。



DW7をノーマルなSPD−P1でドライブ(ステレオ配置の右に置く)、
D−CubeのSPKユニット(発音ディレータイムが分かっている)でパワーどウーファを組み、
上記(ディレー付き)SPD−P1でドライブ(左に置く)。

パワード・ウーファーのディレーを可変しながらタイミングが合うところを耳で判定します。



判定の結果はDW7のフィルターOnでは1〜2msec程度のところに左右の音量が入れ替わる
ところがあり、このページの最初に掲載した測定結果の音の立ち上がり点付近と一致します、
ディレーが短か過ぎるため耳では正確なディレータイムの判定できません。

DW7の音を言葉で表現するのはむずかしいのですが、ド・ユ〜ン、ド・ユ〜ンと音が
出るように感じるのです。ユ〜の印象が強いのです。
そのために発音タイミングが遅いと感じていたのでした。

ユ〜ンで低音域が伸びるように感じるのでMFBまたは低域ブースト回路の効果か、
瞬間的なレベルオーバーを押さえるためのリミッターの効果と思いますが、
全て私の想像です。

  やっと結論が出ました。DW7の立ち上がりのタイミングを正確に測り直し、
SPD−P1に時間補正を加えることにいたします。



左からDW7
LowPass Filter Off のグループ・ディレー : 143μsec
120Hz : 315μsec
80Hz : 1.650msec
40Hz : 2.18msec
となりました。厳密な測定ではないので測定誤差を含んでいます。

ALTEC515Bのグループディレーが156.5μsec、
TANNOYモニターゴールドのグループディレーが140μsecで

DW7 Filter Off時のグループディレーの143μsecとほぼ一致します。

従ってDW7をパワーアンプ付きウーファーとして(ローパスフィルターOff)使うときには
スピーカーユニット固有のグループディレーの時間補正は不要であるとの結論です。
周波数特性のみの補正となりました、しかしDW7のフィルターOffでの周波数特性は
フィルターOnのときより更に低域特性が良くなり、20Hzまでフラットで、
低域を延ばすというより、高域を遮断して
等価的に低域のみをブーストできるようにしました。



mainSPK + DW7 vs mainSPK + SPD-P1 + DW7
音色&音場感が全く違う


mainSPK + SX-DW7
40HzのローパスフィルターをOnにしたとき、DW7のグループディレーは
2.18msec です。
音速を344mとして距離に換算すると75cmです。(80Hzでは57cm、120Hzでは11cm)
従ってDW7を mainSPK の手前75cmに設置すると main と sub が同位相で振動します。

mainSPK と DW7 のバランスが整うと、二つのスピーカーの低音が完全に一体になり、
バスレフタイプのサブウーファーで感じる異質感は全くありません。
サブウーファーにドンドン・ブンブンの品の無い低音を期待している方には
物足りない音ですが、これが本物の超低音であるとに間違いありません。

メーカーがディレータイムを発表してくれれば
この方式の位相合わせが可能になります。

サブウーファーが必ずmainスピーカーの手前に配置されるため
センター足元の音象が手前に迫り出し、楽器配置の前後感が崩れる危険性があります、
前面バッフルの面積が大きいサブウーファーでは、ムートンのような
吸音体で覆って反射を抑制してください。




mainSPK + (SPD-P1 + SX-DW7)
位相整合
SPD-P1の位相整合はホーンスピーカーの位相整合に使われる手法と同じ
クロスポイントにおける波形合成法です。
波形合成で位相を合わせるため、サブウーファーの音がクロスポイントの波長分遅れて
合成されます。

音の大きさが同じであれば、先に聴こえた音の印象をより強く受けるのが人の聴覚の特徴です。
フェーズ・ドメイン方式のサブウーファーでは、
メインスピカーの音色のキャラクターを全く変えずに超低音の付加ができるのです。



超低音のイリュージョン
残響時間の周波数特性が管理されているコンサートホールでも、超低音域の残響時間は
一般に長くなっています。  というより、長くなっているコンサートホールが
聴覚と視覚と体感のバランスが良く、揺ったりと音楽が楽しめるコンサートホールなのです。

残響音の周波数レンジが広い石作りのコンサートホールの方が、木質のコンサートホールより
音楽のイリュージョンに浸れる要素が多いようだ、と感じておられる方も多いと思います。
残響音の超低音の成分が音のイリュージョンを醸し出す作用をするのです。


ヨーロッパにある中世の教会の大礼拝堂で感じる、幾十にも重なった超低音の揺らぎ
のような佇まいに触れたとき、それよりも小さなコンサートホールやライブハウスでも同じ現象が
起こっていることが認識できるようになります。
ピュアオーディオのピュア過ぎる低音に疑問を感じるようになるのです。



自然環境で500Hz以下の逆位相成分を体験することは極めて少ない
ので、ミッドバスの逆位相成分は聴覚に決定的な不快感を与えます。
しかし大空間の超低音だけは例外で、幾十にも重なった超低音の位相干渉が
コンサートホールやライブハウスの臨場感や緊張感を醸し出しているのです。

コンサートホールのロビーから扉を開けてコンサート会場に入ったときの
ドキドキするような感覚は、超低音の重なりと干渉が作り出すイリュージョンなのです。

SPD-P1でドライブするサブウーファーでは、100dB/octの遮断特性により、
極めて狭い範囲のオーバーラップでウーファーとサブウーファーがクロスします。

クロスポイントより高い周波数ではサブウーファーの音が存在しない(-100dB/oct)ので
位相干渉は起りません。
一方、ウーファー自身の低域側の遮断特性は12dB/oct〜24dB/octですから、
クロスポイントより低い周波数帯域では、低いレベルですが位相干渉が起ります。

この性質が礼拝堂やコンサートホールのイリュージョンを演出するのです。



SPD-P1でドライブすると、SX-DW7の配置(前後の移動)が Free になり
DW7の配置をメインSPKと同列のセンターまたは、リスナーから更に遠い正面壁際に
置くことが可能になります。

正面の壁面が強固であればDW7を壁際に置くことで、音楽全体を包み込むように
豊かな超低音を拡散させることができます。

壁面の強度が不足するときや、強固でも平らな面(ガラス面による解像度低下と同じこと
が起ります)の場合は、LV600やLV1200パネルで拡散処理をすると、
ミッドバスへの低音のカブリが減少し、更に解像度が良くなる可能性があります。



音象の定位感が違う
SPD−P1でDW7をドライブしても周波数レンジが更に広がったと感じることは少ない
と思います。DW7のレンジが十分広いからです。

しかし音象の結び方がガラット変化します。
所謂生楽器らしい立体的な定位になるのです。編成の小さいジャズの録音や
バイオリンソロのような、少数の楽器音と空間音で楽曲が構成されているソースで
顕著な変化が見られます。

P1kit のバランス調整用のCDなどでご確認下さい。

リスニングルームがブーミーで解像度が低いと判別しにくいのですが、
楽器の存在感が立体的になるのです。
元もとのDW7の周波数レンジが広く差が出にくいので41Hzから下
のレンジでお試しください。

分かりやすいソースで1度体験すると、あらゆるソースで実感できるようになります。

この部分は聴かれる方の感性により感じ方が大きく変わるように思います、
「SPD−P1+DW7」の音を聴いていただき、
BBSへのレポートを頂きたく思います。

DW7、長い間借用いたしましてありがとうございました。
-- 完 --