無償ルームチューニング 180

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 オーナーご自身も認めているので書いてしまうと、本件は三重苦を背負った新築のオーディオルームです。三重苦とは、「船底天井」、「2x4工法の家」、「石膏ボード」


1.船底天井
 オーディオルームには絶対に採用してはいけない天井の形式。低音不足に悩まされる可能性大。

参照 -> 切妻・船底天井には定在波も発生する


2.在来工法
 在来工法では壁が柱の幅で分割されるため、個々の振動体は小さな壁面です。小さな振動体は高い周波数で共鳴するため、ミッドバス(125〜250Hz)の帯域にブーミーな振動音が発生します。

 但し、何重にも壁材を貼り増して壁強度が大きくなり過ぎると、柱による分割が効かなくなって壁全体が一枚になって振動する要素が増え、ミッドバスの振動音と100Hz以下の低域の振動音が混在する厄介な振動特性になります。

 4寸(□120x120mm)の柱で天井高2400mmの場合、12.5mmの石膏ボード一枚貼りなら振動音はミッドバス帯域が主体になり、二枚重ね、または、石膏ボードと合板の2枚重ねだとミッドバスと100Hz以下の定在波領域の振動が混在します。

3.2x4工法
 振動面を分割する柱がない2x4工法では、壁全体が一枚の大きなドロンコーンのように振る舞って振動し、低音楽器をボンつかせる100Hz以下の帯域の振動音を発生します。キックドラムがダンボールドラムのようになったり、本来センターにどっしりと定位するはずのエレキベースの存在が発散してしまい、部屋中低音だらけ、または低音が聞こえない音場の原因になります。

 余分な音の吸音は周波数が低いほど難度が高くコストもかかるので、オーディオルームを計画するのであれば2x4工法の建物は避けるべきです。2x4で大きな空間を作り、その箱の中に「マトリックスキット」という手もありますが・・・。

 本件は徹底改善の意向であったし、広さのあるオーディオ専用ルームであったので、調音パネルを大量に投入して素晴らしいオーディオルームに大化けしましたが、居間兼用であったなら不可能でした。

4.石膏ボード
 ミッドバス(125〜250Hz)帯域の音に共鳴する特性があり、石膏ボードの振動音が再生音とごちゃまぜになり、ボーカルを含む多くの楽器が下太りのブーミーでマッタリした音になる。加えて壁紙と石膏ボードが中高音域を吸音するので高音域の反射音が不足し、楽器の躍動感が乏しい湿りがちな音楽になる。




ルームチューニング

 まず最初に余分なスピーカーを撤去。低音不足に悩まされて藁にもすがる思いでドロンコーンの効果を期待したようですが、そうは問屋が卸しません、壁振動と同じ部類のコーンの振動でブーミーが助長されるだけ。

 スッキリしました。17.5畳の広々としたオーディオ専用ルームです。





● オーディオルームの天井として、絶対に採用してはならない形状が下記の二つ。フラッターエコーと定在波が重乗し、中音域がやかましい上に低音の包容力が希薄なオーディオルームになる可能性大。


● 切妻天井では、足元を包む低音が希薄になり音楽の安定感が損なわれる。有効な対策はSTW1500の設置とリスナーを左右から挟み込むSV600の設置。

● 船底天井では、足元に加えリスナーの頭上あたりの低音も希薄になる。体感的には低音が頭上の高いところをまたいでいるように聞こえる。低音に包まれるゆったり感は絶望的。有効な対策は切妻天井と同じだが、STW1500、SV600共に必要数量が増える。
  
   

 船底天井のオーディオルームのチューニングは特別に難しい。いつもの手順ではフロント側のSVパネルを設置して試聴するところからルームチューンが始まるのだが、今回は最初にSTW1500二枚のみを搬入して設置。

 低音楽器の姿が現れ、実在感のある低音が聴こえるようになった。STW1500二枚では力不足と予測していたが、大きくて重たい定在波パネルは二枚運搬が限界である。

 100Hzから下がスッキリしたので、続いてミッドバスの改善に着手。まずSV1800spとSV1200ctを設置して試聴。サウンドステージが現れて楽器配置の前後(奥行き)左右(広がり)が明確になった。しかしベースとキックドラムのヌケが足りない。船底天井の特徴的な症状。

 低音楽器のヌケを解消するにはセンターパネルが有効。センターパネルを三つに増やすことにして、裏返しのSV1200二枚とSV600ct二セットをフロントに追加。

 ベースとキックドラムに実寸大の定位が現れ、程良いヌケが加わった。

 次にBassoを置いてベースとキックドラムを床に着地させてフロントのチューニング完成。

無償ルームチューンの配置 完成予想配置








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