
リビング・オーディオ &
リビング・ホームシアター
今般家を新築するにあたり、リスニングルームではなく、リビングオーディオを予定しております。アドバイスを頂くことはできるのでしょうか?
設計の進捗ですが、数日前に最初の打ち合わせをしただけなのでまだ何もできてなく、5ヶ月くらいかかると言われました。
私は天井を高く、斜めにした方が良いという程度のことしか知りません。せっかく新築するので、こりに凝ったものを作りたいということではなく、何も考慮しない普通の部屋より少し良いという程度で満足です。
必要条件を提案して頂くことは可能でしょうか?
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With コロナへの対応で、音楽をめぐる世界が大きく変動しています。
コンサートホール・ライブハウス・劇場・映画館など、エンターテイメントの在りかたに大きな変化が求められており、近い将来に斬新なビジネスモデルが登場することを期待しますが、心に刻まれてしまった三密の危機の体験を忘れることはないでしょう
オーディオマニアではないが、生のライブ空間で体験した感動や浮き立つ思いをリビングと相容れるデザインで費用負担少なく作れるのであれば手に入れたい、と思う方が増えると思います。
リビング・オーディオ、リビング・ホームシアターの必要性は着実に高まるものと思います。
そんな視点から、リビング・オーディオ、リビング・ホームシアターの作り方を考えてみることにします。

フラッターは音に纏わりつく雑味や喧しさの原因です。フラッターがあると長時間の音楽鑑賞が苦痛になります。
平行壁、水平天井を無しにすればフラッターは発生しません。実施例のサンプルが後半にあります。

振動はブーミングの原因です。ボーカルの表情が失われ、楽器の表現力も低下して退屈な再生音になります。
柱を太くする(奥行きを増やす)のが常套手段です、柱の奥行きを2倍にすれば壁振動は1/8になります。
またむやみに天井を高くしないことです。天井の高さを2倍にすると壁振動が8倍になります。

音楽再生の邪魔をする低音域の響きのみを吸音し、その他の響は極力残す。躍動感のあるグルーブ感たっぷりの再生音になります。
壁振動が少ない部屋は低音の過剰感も少なくなります。柱を太くしても建築コストに大きなダメージはないので(柱1本当たり数千円)、一石二鳥が狙える壁振動が発生しない構造をお勧めします。
最善を期すのであればミッドバスの吸音が必ず必要になります。SVパネル以外にミッドバスを効果的に吸音する製品は見当たらないので、SVパネルの設置をお勧めします。
SVEパネルのミッドバス吸音特性

SVパネルをリビングに融合させた設置例が下記写真です。詳細は写真をクリックしてください。


向かい合う壁面(天井/床、左右、前後)に平行面があるとフラッターエコーが発生します。
次のグラフは建築途中のオーディオルームで計測した残響音の周波数特性です、部屋の壁の上2/3は対向する壁面が6度傾いており、下1/3は機材で隠れることを前提に平行に作られています。
壁面が平行な床側のエリアにマイクを置いて測定した残響グラフが緑のライン。壁がノコギリ状に6度傾いた天井側のエリアの残響グラフが青のラインです。上下の音は適度に混じりあうにも係らず、二本のラインが明確に離れています。
そして下記グラフが機材が入り、平行壁がなくなって測定した残響時間の周波数特性です。二つのグラフを比較すると、フラッター時間が残響時間の2倍を越えていることが明確です。つまりフラッターが発生したら残響時間の測定など意味をなさないのです。

写真をクリックすると詳細ページが開きます。

フラッターが発生しない部屋を図面で描くのは簡単です。平行壁をなくすだけ。

しかし見るからに住まいの建築としては作りずらいので、後壁を斜め材や拡散材にして下記がフラッターのないリスニングルームのスタンダードです。



リビングオーディオには物々し過ぎるし、同じ広さの立方体の部屋の建築費用と比べれば2〜3倍の費用がかかります。スペース効率も悪く、リビングオーディオ、リビングホームシアターには向かないですね。

壁面をのこぎり状にしてフラッターを止めた部屋。スペース効率は良いけれど、平面に並ぶ柱に壁材を斜めに配置するので、壁振動を止めにくい欠点があります。新築であれば躯体の構造を工夫すれば実用になると思います。
壁振動により、ボーカル帯域が下太り気味になることがあります。そんなときはSVパネルなどでミッドバスを吸音してください。

天井は勾配天井またはノコギリ天井です。




部屋の形は立方体です、Matrix Waveで仕上げました。これならリビングとして十分なクォリティーもあり、リビングオーディオ向きと思います。しかし石膏ボード壁と比べればハイコストです。
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