サウンドステージは一次反射音が作り出すイリュージョン

 スピーカーをフリースタンディングに配置するだけでサウンドステージが完成すると思ってはいけない、サウンドステージの奥行き、高さ、立体的な佇まいの完成度は、スピーカー周辺の一次反射音の質と量が大いに関係している。

 ミッドバスがダブついていなければ、一次反射音の方向を整えるだけで音楽の表情を激変させることができる。チューンの理屈は単純で、
「一次反射音のエネルギーバランスを直接音のエネルギーバランスと同じにして適切な位置に誘導する」 だけのことである。

 左の写真はチューン前のオーディオルームだが、フラッターエコーの対策上やむお得ないのだが、正面の壁面がカーテンで埋めつくされている。一次反射音の高音域が吸音されてしまい、直接音と一次反射音のエネルギーバランスが著しく懸け離れている。

 周波数特性の相似性が低下すると、直接音のボーカルと一次反射音のボーカルを一人のボーカリストとして合成できない聴覚(脳)の仕組みがあるようで、直接音が単独でスピーカーのバッフル付近に二次元のサウンド平面を作り、高音不足・低音過多の反射音がブーミングの原因を作る。

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拡散パネルでフリースタンディングのサウンドステージを補強する
 鉛蓄電池で駆動されるパワーアンプ・プリアンプがスワンの周辺に並び、その隙間をぬってLVパネルを配置したので醜い形になってしまったが、フリースタンディングのスピーカー配置に、更に拡散パネルを設置することで、フリースタンディングの効果をより高める方法を探ってみました。

@ : 拡散パネルなし
A : スワンとカーテンの中間に後ろの拡散パネルを設置。
B : 後ろの拡散パネルを奥の壁沿いに設置

の三種類の効果について試聴確認を行いました。まずオーナーから頂いたメールからご紹介します。D.Cube2 (初代モデル) の使用レポートも含まれています。
 03.01.21
 D−Cubeについて
 エージングも少しずつ進み透明で質量感のある立体的な音の響きが出てきました。私のSP(スーパースワン)では47Hzが最適なパスバンドのようです(41HZは無理でした)。それ以下では全体の音が沈み込み音の立体感が出ず、鈍く生気に欠けた音となり、それ以上では音量感が上がり迫力も出るのですが中低音が膨らみすぎてブヨブヨな響きが付きまとってきます。
 非常に良いバランスの音が出て満足しておりますが、1つだけ気になる自信が無い点があります。出力音圧レベルがあまりにも低い設定になってしまったことです(入力レベルは3 時付近で出力レベルが8 時付近です)。しかしこれ以上上げると音の立ち上がりや透明感、低音のソリッドでパンチのある音が鈍ります。又、これ以上下げると音が淡白、軽薄な音になってしまいます。ですからこの音圧レベルで良いと思うのですが。
 もう一つ考えられるのは部屋の共振の問題で、本来もう少しSWの音圧レベルが大きくて良いバランスな筈なのに部屋の共振により音が濁ってしまい 出力レベルが 8 時程度しか出せなかったのでは?との推論です。村田様のご経験から出力レベルが8 時程度はやはり小さすぎるレベル設定だと思われますか?。


>出力レベルが 8 時程度
は、やはり小さすぎるレベル設定だと思われますか?。
 出力ボリュームのレベルが 8 時は相当に低いレベルと思います、しかしメインスピーカーのモニター音量がかなり小さければ、あり得ることで、出力ボリュームは”ゼロ〜Max”までのどの位置で使っても歪などの問題は発生しません。但し入力ボリュームの上げ過ぎで出力ボリュームが小さくなっているのであれば、入力側のアナログ回路やA/D、DSPの演算過程でレベルオーバーになり、波形のクリップによる高音域を含むノイズが出ますのでご注意ください。

> 部屋の共振の確認は、LFE入力にプリアンプ出力を入れ、メインスピーカーOffでD.Cube2の音だけを聴いてください。
 実は昨夜取説を見ながらこれをやってみました。先ず気付いたことは試聴位置又はセッティング位置によっって低音の伸びがまるで変わってしまうことでした。10cm程度の移動ではっきり変わり今までの試聴位置はまるで低音の伸びない位置で聴いていたのです。
 現在その位置から40センチ程後方に試聴位置をさげました(セリーヌディオンが雄大に部屋ごと揺れる気配が聴き取れる(体感できる)位置ですー部屋の各部に共振によるビリツキが出始めました)。その後メインSPとつなげて調整した結果入力レベル3時・出力レベル11時付近となり、音場の広がり、音の滑らかさ、重低音による部屋全体を包み込むような揺らぎを聴き取ることが出来ました。
 セリーヌディオンの低音は下品なこれ見よがしなものでなく上品なバランスで仕上られた大変心地よいものであることに気付かされました。メインだけで鳴らしても結構いけるのですがホール残響の雄大さ、各楽器の音の厚み濃さ、金属や木質等の素材のリアルな材質感の表現など興奮して次々に聴きまくり深夜の1時近くになっていました。久しぶりに手応えのある機器を購入できましたことに感謝いたします。


> もう少しSWの音圧レベルが大きくて良いバランスな筈なのに ・・・

 部屋の壁が新建材の化粧合板や石膏ボードで防振対策が成されていなければ、D.Cubeの超低音で壁面が揺すられてミッドバスの輻射音を出します。壁振動の周波数は100〜200Hzが中心で、耳の感度が10〜20Hzに比べて20倍程度高い音域なので = コラム1参照 = 、壁振動の影響が大きければD.Cubeの超低音の音圧が上がりきらないうちにミッドバスが飽和状態になってしまいます。ヌケの良い超低音が聞えないようであれば、部屋が共振してミッドバスの輻射音を出している可能性があります。

= コラム1 = フレッチャーマンソンの等感度曲線の低音域、音楽鑑賞レベル(60〜90Phon)の拡大図
■ 15Hzと150Hzでは、28dB(平均)の聴覚感度差があり、15Hzの音の20分の1程度の大きさの150Hzの音が同じ音量に聞える。

■ 6dB の音圧差を聴覚は2倍の音量差と感じる、従って12dBで4倍、18dBで8倍、24dbで16倍30dBで32倍の音量差となる。
15Hzの超低音は、20分の1の音圧の150Hzの壁振動によるミッドバスの飽和でマスキングされてしまう


 以前スーパースワンとサブウーハ‐の増設についてホームページでお世話になった者です。お忙しい所大変恐縮なのですが以前購入させていただいた初期型D.Cubeについて、お伺いしたくメールさせていただきました。購入時からの症状で低音情報量の豊かなソフトを再生すると入力レベル・出力レベルを下げてもウーハ‐ユニットが前後に大きく揺れだし出力レベルを略絞りきるところまで下げないとこの症状が収まらずサブウーハ‐を使用できないソフトがいくつかあります。

05.03.13
D.Cubeの調整に伺いました
 埼玉、栃木、福島、山形のルームチューンの途中で伺いました、距離が離れた3件/1日のスケジュールで時間がとれず、入力ボリュームの上げすぎと思われる症状であったので、入力ボリュームを下げ、出力ボリュームを上げてオーディオ談議で終了となりました。

05.03.14
-- 前半略 --
D.Cube2の設定
 さて、D.Cubeの話になりますが、ウタダヒカルなど1部のCDで入力インジケーターがレッドゾーンに来なくても振幅オーバーになるのは、低音が、かなりの音圧・クイックレスポンスで記録されているためにインジケーターが追従しきれなく、レッドゾーン表示が出来なかったのだと予想されます(殆どのCDではレッドゾーンを振り切っても振幅オーバーの現象が現れないことが多く、村田様のアドバイス通り入力レベルを絞り出力レベルを上げることで今回のCDはかなり改善されたことからそのように予想できます)。
 DSPによるFIRのデジタルフィルターで100dB/octの遮断特性を実現していますが、FIRフィルターの演算方式の性格上、直流に近い超低音だけしか含まない大きな音が入力されると計算結果にオーバーフローが発生する可能性があります。勿論メーターのヘッドマージンを大きくとれば全く歪まない設定も可能ですが、トータルのS/Nが低下してしまいます。高音域を含むクリック音が出るようであれば入力のボリュームを下げ、出力ボリュームを上げてください。

 パスバンドと音量の設定では65ヘルツで10時程度が自然に聴こえるとおっしゃられましたが、私がその音を聴いたときはバランスは破綻がないが、レンジ感の狭い、少し曇った音で面白みに欠けるなと思いました。その後モノーラルのチェロ独奏を聴きながら再調整してみた所、当初設定していた44ヘルツでは音像が上と下に分離され不自然な音像でした。上と下がバランスよくまとまり、メインSPと低音が比較的かぶらないポイントはやはり65ヘルツだったのです。音量も10時付近で一番バランスがよく、村田様の聴感のよさに舌を巻きました。
 二回目のご訪問でインパルス応答の測定を行いました、その結果、壁振動の輻射音と思われる 200Hz〜300Hzの残響音が実音に匹敵するレベルで確認されました。再生音にダブついたミッドバスがあると、D.Cubeのパスバンドを低く設定したくなります。しかし最下限の 32Hzにしてもミッドバスのカブリはさして減らず、沈み込むような低音は、出てはいるのですがミッドバスにかき消されてしまいます。

フラッター
 しかし沈み込むような低音も、透明で輝くような中高音もなく音楽が面白くないのです。そこで視聴位置で激しかったフラッターエコーの対策に吸音材(低域までよく吸音すると評判のものです)をフラッターがでる壁面位置に貼り付けました
 がフラッターの対策には全く効果なく、相変わらず手でたたいた音がビィィーンと響きます。更に音質は情報量と輝きの欠如した面白みのないものとなったので撤去しました。
 ミッドバスに膨らみがあると沈み込むような低音感は期待薄です。ミッドバスの帯域だけを吸音する吸音体を置く意外に根本的な解決策は無いと思われます。
  
= コラム2 = LVパネルの裏板の振動特性 10Hz〜1kHz     詳細データ
 20Hz〜400Hzの帯域をカバーしている。エネルギーの大きい帯域の残響音に共鳴すると、レベルの低いその他の帯域には共鳴しにくくなるので、残響時間の周波数特性が平坦化される。

 次にミッドバスの対策として、村田様が指摘されていた、あのガタガタに取り付けられたサッシの隙間を部材で固定しました。部分的ながたつきは抑えられ叩くと1枚の板が響くような状態に近づきました。始めに右SP側のサッシを固定して音を聴いたところ左右のバランスが大きく違ってしまいました。そこで左側扉の上下の隙間にも対策をしてみると左右のバランスが取れてきました。

 しかも少し音の透明度が上がり、振動を抑えたことで低域は物足りなくなるかと思いきや、今まで余計な響きにマスクされていたと思われるずっと低い低音域までがよく伸びて聴こえます。右側後方とSP後ろの大きなサッシも固定してみた所、更に透明感が出て奥行きが少し深く表現できるようになりました。これはサッシ窓を開け放した時の音に近づいています。

 がたつき対策を戻してみるとSP後ろの大きなサッシの振動でメインSPの奥行き表現が邪魔されていたことがはっきり聴きとれます。ただ、この対策もこのままでは窓もドアも開閉できない非現実的な対策です。

 次にご指摘があった両サイド壁面のミッドバス簡易対策として、振動吸収するチップを振動が大きい個所に貼り付けました。(1箇所程度ではなく20箇所くらい) D.Cube導入以前に、この効果を試していましたが、ミッドバスの簡易対策としてなかなか効果をあげていることを再確認しました。以前試した時はワンポイントステレオ録音のソース(プロプリウスーカンタータドミノ)では音像がホォログラフのように現れて狂喜しましたが、反面マーラーの交響曲など聴くと、全く迫力もスケール感もなく当に死んだような音で両者の音質の変化に愕然としました。
 毒を以って毒を制す的な小手先のチューニングでは必ず破綻する楽曲が出てしまいます。チューニングが成功したときには総てのソースがそれなりに音楽として再生できるようになるものです。

 大方の録音で音が死んでしまう傾向が強く、室内の響きを排除するのではなく、バランスよく再生音に取り入れる事が現実的な音楽鑑賞の上では得策と考え、部屋を響かせる方向でルームチューンをやり直していたのが今回、村田様に試聴していただいた時の状況でした。低音が出ない上に部屋の中心部が試聴位置とあってますます貧弱な低音しか出ていないバランスだと思い込んでいたので、低音が持ち上がっている音響特性だとお伺いして驚きました。思い込みによる錯覚は、普段自分の再生システムしか聴く機会のない者にとって用心していても気づかないものですね。

 しかし、村田様のお話を伺うにつれ以前の対策があながち間違いではなかったような気がしてきました。あの頃の締まった音にD.Cubeの低音が上手くつながれば交響曲での不満は大分解消されるように思いました。ただ、振動吸収チップでは完全に余計なミッドバスを抑えているわけではないでしょうし何よりフラッタ‐の解消には、チップも吸音も役に立ちません。

 フラッタ‐による音の濁りも実際に確認してみました。同じ試聴位置でも、立った位置でフラッタ‐が特に目立ち、かなり不鮮明なにごった音となり、座った位置では思ったほど酷くはなかったです。フラッタ‐は無いに越したことはありませんが吸音などの対策(実際にはあまり効果なし)による、美味しい中高音の残響を失うことのほうがより多く、音楽の魅力を損なう結果につながるように思えます。

 簡易的なフラッタ‐対策として振動処理した厚めの板やレンガなどをばらばらに角度を持たせてフラッタ‐ポイントに設置するとかなり抑えることが出来ました。この効果もかなり音の透明感・定位感などに貢献します。村田様のご提案通り、壁面を3度程度の角度をつけてコンパネなど張り合わせれば、ミッドバスとフラッター双方の有効な対策となり、かなりの効果が期待できそうなことが、これらの簡易実験で理解できました。

ブーミング
 次に再生音上、最も不自然であった特定の低音の上昇(音のつながりが壊れ頭が痛くなりそうな低域での音圧の上昇)の原因を掴むべくD.Cubeのみ再生して部屋中移動しながら音の様子を観察してみました。時々共振してビリつき音を発生する個所がいくつか見られます。部屋の中央付近で壁面がおこすミッドバスが少しですが体を圧迫するように感じられます。床がかなり響き、場所によっては乗り物酔いした感覚に襲われましたので、床の振動が以外に一番激しいのでは?と、長めの棒を部屋の各部所にあてて振動の大きさの差を調べて見ましたが、あのように足元に大きな響きを感じさせた床面は以外にもそれほどの振動は感じませんでした。(床面が一番問題なく丈夫だとおっしゃられた村田様の言われた通りでした)そこで左右壁面・サッシ面・ドア・天井と確認していきました。SP後面、右側面のサッシはD.Cubeに近い、遠いに関係なく響きが大きかったです。ドアはサッシよりは響かず床と同程度の振動でした。サッシ面は、現実に乗り物酔い的な振動をする床面より遥かに大きな振動をしているのですから、音響上、悪さをしている可能性はかなり大きそうです。試聴位置側面の壁面は部分的に床より振動するものの意外にサッシよりは振動量が小さかったです。ただしD.Cubeの真横の側面と真下のインシュレーターボードは凄い振動量です。これは本格的な対策が必要な個所と思われます(驚いたことにインシュレーターボード下の床面は振動が少なかった)。

天井
 更に驚いたのが天井です。D.Cube付近はもちろんのこと一番離れた部屋の隅位置でもかなり強い振動です。蛍光灯は頻繁に小さな共振音を響かせていました。この部屋の中心部(リスニングポイント)でのミッドバスのかぶりは左右の側壁より天井が遥に悪影響を及ぼしているようです。これが解消されれば上空へスムーズに音が広がるであろうと推察されます。対策として村田様よりお話を伺った、天井の強度を考慮しながら砂袋を天井裏に設置するアイディアを頂こうかと考えております。

 D.Cubeのみでの再生ではあの低音の極端な突っ張り音は見当たりませんでしたので、やはりスワンの設置方法に問題が潜んでいるように思われます。スワンの設置はお気づきになられなかったかと思いますが床面に瞬間接着剤でリジットに固定されています。そのためSPの振動が床にスムーズに流れてくれるのですが逆に床の振動もSPに逆流し、スワンの頭部が大きく共振してしまっていると考えられます。首の部分や床面を叩くと、スワンの頭部がブルブルと振動するのがわかります。これがあの低音の極端な突っ張り音の主要因ではないかと睨んでいます。
 以前は胴体部と床面を金具やボルトで相当に圧力をかけて固定していたためこの頭部の振動はかなり抑えられていましたからあのように極端に変な音は聴こえなかったのです。

 D.Cube導入と同時に、もう少し器機も部屋も響かせる方向へと考え、SPに圧力を加えない瞬間接着剤での固定に切り替えたので、D.Cube導入のために出てきた音なのかな?、これが迫力ある低音なのかな?アンプ部の軽い発振現象かな?などと思っていたわけです。


05.04.14
フリースタンディングのルームチューンと測定
測定による検証の項を参照してください。

05.04.18
-- 前半略 --
 前回は部屋も機器も殆どチューニングしていない状態で聴いていただき、部屋の響きの印象をお聞かせいただきました。今回はそのときのご指摘を受けた低域の異様な盛り上がりを抑える方向で自分なりにチューニングし、ソースも音質的に良いと思われるものを揃えてみました。
当日の感想やお伺いしたいことなどは後日メールにてお送りいたします。
先ずはお礼まで。

05.04.20〜05.04.22
パネルセッティング以前の音
・ 低域が小型ユニットの割に比較的量感は豊か。
・ 音像が両SP間にかたまり、基音と残響音とが分離していない。
・ 厚く切れのない音。

 まさに村田さんが仰られていた狭い部屋でのフリースタンディングの音の傾向そのものでした。それでも空間情報が豊かに記録されているソースでは左右前後に広がりを見せ、このようなソースに限れば、音の厚みと広がりが両立し、自分なりに満足いく音でした。ただ、更なる中域の滑らかさ・情報量UPを求めて、ツイーターを外してしまったので、元々伸びていなかった上方への音像が更に伸びず、奥行きもSP周りの窓を開放するとグンと広がるのに、窓を閉じると濁って広がらない音になる為、何れ対策が必要になると考えていました。

 因みにツイーターの発音が上方へ音像を伸ばしているとばかり思っていましたが、実はツイーターの形態から反射される音によって上方へ音像が伸ばされていたようです。(SPコードを外しても極端な音像の変化は無いがユニットを取り外すととたんに音像が下がり中域が強く感じられてきました。ツィーターのような振動板の放射エネルギー量が比較的少ないものは、放射音よりも機器の形態そのものが音の解析やバッフル効果により音に大きな変化影響を与えているのではないでしょうか?。
この経験から、SPの外側にSPユニットと略同じ高さの木材を積み立てて聴いてみた所、音像が見事に左右に広がってくれました。奥行き方向も同様でした。
これらの擬似実験により今回のパネルによる音の効果は、ある程度理解できるようになっていたように思います。

パネルによる音の効果
センターパネル
 先ず始めに、センターパネルを設置して頂きました。以前からレコードジャケットを見開きにセットしてその効果を擬似的に試していたので、本物のパネルで、擬似セットとどの程度の差があるのか?が第一の興味でした。初めの試聴では、正直 ん?でした。音の切れと上方への広がりは出てきましたが、艶・潤い・厚みと言った要素とトレードオフです。音の拡散と同時に中央に収斂していたエネルギーの美味しいところまでが拡散してしまいました。
 薄味になったボーカルをピンポイントで中央に定位させるため、パネル先端位置を微調整してみました。パネルがピンコードに引っかかる為、村田さんが機器の損傷を気遣い、先端部の位置調整を躊躇っていたのを自分で無理やり奥に押し込んでしまいました。

 今度はパネルによる効果に納得しました。音空間の広がりは先程と同様でありながら、ボーカルが音の切れ味と多少の潤いを持ってセンターに定位しています。ちょっと嬉しくなってきました。1センチの合い間に天使と悪魔がいた訳です。私の声の弾みに気づいてか、SPの後方もパネルセットしてみますか?と村田さんが仰ってくださいました。

SP後方のパネル
 SP後方は180cmの高さで略全面サッシ窓です。音楽を鑑賞しながら四季折々の景観を楽しむために作りましたが、音質上大きな仇となっています。平面反射が全体を占め、更にサブウーハーの振動を受けて盛大にミッドバス音を垂れ流す原因となっているようです。中央部はそのままに、左右のサッシ窓の前にパネル設置です。余分なミッドバスが抑えられ音のかぶりが減った為か、音像が後方にも広がり始めました。高さも充分に広がり教会ホールのスケール感が出始めました。

 しかし再度センターの音像の艶やかさが薄まってきました。私の音楽鑑賞上、センター音像の艶やかさや厚みはとても大切な要素なのです。(後日ここのカーテンを小さく絞って纏め、ガラス面が擬似的に拡散反射になるよう、いろいろなものを立て掛けてみたところ音離れの良い響きを得ることが出来ました。SP後方のミッドバスを吸音しようとカーテンを吊るすのは利口な対策でないことが実際に良く理解できました)

SP後方側面のパネル
 本当に音の性格を知り尽くしているのでしょう。村田さんはアッと言う間にSP後方側面のパネルもセットしてくれました。ここでの効果はパネルの実力を見せ付けてくれました。音の厚みは広い空間に満遍なく満ち始め、低音部のコーラスでは一人一人の声質の違いまで聞き分けられます。以前、振動吸収チップを壁や機器に貼りまくり、結果これと同等の解像度まで追い込んだことがありましたが、殆どのソースで音がやせ細り、死んだ音になってしまい愕然としました。(何事もやり過ぎはいけませんね。上手に使えば非常に効果的なグッツなのですが)今回パネルの調整では、この解像度を保ちながら空間スケール・音の厚みも表現できています。
 ソロボーカルも目の前で歌っているようなリアリティーが、声の艶を乗せながら立ち現れています。これはセンターパネルやSP後方のパネルの効果と相俟ってのものと思われます。
 その後も村田さんのセッティングの微調整が続きましたが、私の方はこの辺りから、「良いですね!良いですね!」の連発になってしまいました。

 必要な音は充分部屋に満ちています。いかにそのエネルギーを無駄にせず美味しく調理するか。村田さんのルームチューンは、さながら腕の良い料理人の如しです。こちらの好みに合わせて自由自在にサッと味付けしてくれるのです。(しかも自然な響きを崩さずです。)やはり若いころからプロの現場で鍛え上げた耳と感は素人のそれとは比較にならないですね。案外良い音で鳴っているんじゃないかな?と思いこんでいた自惚れが気恥ずかしいです。

 パネル調整の最後に「本当の調整はこれからですよ。まだまだ良くなりますが今日はこれしかパネルを積んでこなかったので・・・」 なんとも悩ましい言葉を残してパネル設置のデモを終了したのでした。

 しかし、まだまだ我が家のシステムに可能性が秘められていることが実証され楽しみになってきました。パネル導入にあたっては、システムの配線レイアウトの問題、窓からの景観の問題、天井や壁面などパネルより先に考えるべきか、など考えてから決定いたします。パネル使用時は自分で調整する楽しさもありますが、その前に1度、プロの調整(調律)の音を聞かせていただくととても参考になることは間違いないですね。

村田さんもご自分のパネルが不当に評価されたくないことや、皆さんに音楽の素晴らしさをもっともっと味わって欲しいために、利益を度外視してキャンペーンをされているようです。商人としては失格?いえいえ商人の鏡でしょう!今回、本当にありがとうございました。これからも頑張ってください。

最後に質問を
パネルを壁面と同じ色(我が家では白)にペイントすれば圧迫感が低減すると思うのですが、ニスではなく、ペンキなどで塗ってしまうのは性能を損ねるのでしょうか?
 ラッカーやウレタンのように木の外側に塗膜を作る塗料を使うと音響特性が損なわれます、ステイン系の染み込む塗料を使ってください。



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