反射音にも方向性が必要
拡散パネルはフロント側をメインとし、リア側にも配置すると良い


 デッド系のルームチューンは何をやってもドラスチックな変化は期待できないし、音楽の躍動感が復活する兆しも無いので、ルームチューンはライブ系優位である。しかし適量であればサウンドステージを作リ出す反射音も、その量が過ぎるとオーディオ的な解像度が落ちてしまう。

 上限のある拡散音であるから、サウンドステージの構成に最も効果的なフロント側に集中配置すればよい。残響音に方向感を与えると楽器やボーカルの立体感が増幅されるので、リスナー背後の壁面の拡散音も有効である。定在波理論により、部屋の中心線上は低音が聴こえずらいことが証明されているが、背後からの拡散音は低音を復活させ効果大。

 一方左右の壁面からの拡散音は、古典的解像度(左右方向の分離)を阻害する。従ってフラッターエコーが生じない程度に角度を与えた平面で構成するのがベストである。しかしここにも不思議な現象がある。床から600mmの範囲を拡散反射面にすると、定在波理論では説明がつかない低音復活が起こる確立が高い。

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伝送特性
 
 LVパネルによるチューンで 100Hz〜300Hz の赤色で示した部分の伝送特性の凸凹が減少した。定在波やフラッターエコー・壁振動が減少したと予測されるが、伝送特性の変化だけで断定することはできない。

 ルームチューン後に、リスニングポジションの伝送特性の低音域が、スピーカー直近の伝送特性に近付けば定在波が減少した証拠になる(本件では未測定)。

 残響時間のデータにも、定在波、フラターエコー、壁振動の影響が現われる。本件では典型的なデータが得れたので、以下に解説します。


 オリジナル伝送特性
・ D.Cube2のパスバンドを44Hzに設定して測定した伝送特性(50〜70Hzにディップがある)。D.Cubeのパスバンドの設定は、65Hzが最適と思われる。
・ 聴感ではミッドバスがダブついているように聞えるが、 <データ 1>
の伝送特性の測定データだけを見て 130〜330Hzに異常があると判定することはできない。LVパネルを設置した<データ 2>のグラフと比較して初めて、130〜330Hzの伝送特性の乱れが、ダブツキの原因であったことが分かる。
<データ 1>



 LVパネルでチューニング後の伝送特性
・ 180Hzの大きなディップが消滅し、130Hz〜330Hzの伝送特性が大きく改善された。
<データ 2>


 残響特性
チューンの成果は残響特性により多く現われる
<表1> 残響時間
周波数 31.5 40.0 50.0 63.0 80.0 100 125 160 200 250
チューン前(秒) ? 0.7 0.8 0.45 0.5 - 0.45 0.36 0.6 0.57
チューン完了(秒) ? 0.7 0.78 0.45 0.53 0.53 0.46 0.36 0.4 0.45

周波数 315 400 500 630 800 1000 1250 1600 2000 2500
チューン前(秒) 0.5 0.43 0.4 0.41 0.41 0.47 0.42 0.45 0.4 0.4
チューン完了(秒) 0.43 0.34 0.35 0.37 0.38 0.46 0.41 0.41 0.37 0.39

周波数 3150 4000 5000 6300 8000 10k 12.5k 16k 20k  
チューン前(秒) 0.38 0.36 0.34 0.33 0.3 0.28 0.27 0.2 0.2  
チューン完了(秒) 0.37 0.39 0.32 0.32 0.34 0.29 0.27 0.2 0.2  

チューン以前の残響時間データから、二つのことが予測される。
・ 160Hzの残響時間が周辺に比べて短い -> 壁面の板振動が 160Hz(180Hz中心)の音を吸音している。
・ 200〜315Hzの残響時間が周辺に比べて長い
-> 板振動が輻射音を出している。

チューン後の残響時間データから、次のことが確認できた。
・ 200〜315Hzの残響時間が短くなった
-> 壁振動が減り、輻射音が減少した。


伝送特性データと、残響特性のデータが揃うと、板振動が明らかになる
 板振動の共振周波数と輻射音
 板共振は空気層の構造により 125〜250Hzで共振を起こす。<データ 1>の180Hzのディップによりダンプ材の無い本件の壁振動は180Hzであることが分かる。そして<データ2>の伝送特性改善の結果により、壁振動が原因となって 200Hz〜400Hzの板振動の輻射音を垂れ流していることも判明する。

板壁の吸音率 (建築の音響設計/オーム社 永田穂著 より)

残響特性 200Hz、250Hz
残響特性、全データ

 200Hzチューニング・パネルなし

 200Hzチューニング・パネルあり


 250Hzチューニング・パネルなし

 250Hzチューニング・パネルあり



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