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![]() 「心に染み入る歌声だな・・、音が弾んでいる、ベースラインがよく見える」 と客人の皆さんから共感がもらえるオーディオルームの作り方の基本は、超低音の凄まじいエナジーで揺すられようともびくともしない剛構造の躯体と壁面を備えており、にもかわらずフラッターエコーが発生しない。という二律背反になりがちな難易度の高い課題をクリアした上の、頑丈な躯体と頑丈な壁面で囲まれた部屋を如何にして作るかです。 新築であれば(平蔵さんのリスニングルーム)がその答えの一つですが、今現在住んでいる自宅の一室をリフォームでオーディオルームにしようかな・・、と計画するのであれば、検討の余地すらないであろう豪華版です。 そこで本件は、平蔵さんのリスニングルームにも使用実績があるトラップウォール(TrapWall)で壁面を構成したオーディオルームのご紹介です。スピーカー背後のフロント壁面と扉や窓などの可動部分を除いた全壁面がトラップウォールで仕上っています。 <トラップウォール> トラップウォールによるオーディオルーム・リフォームの特徴は、数ある住宅メーカーが標準仕様で作った普通の部屋であっても、「フラッターレス・ブーミングレス・定在波レス」 のオーディオルームに仕立て上げ直すリフォームが可能な点です。 下記グラフの残響時間の周波数特性は、ダウンサイジングされた生演奏のステージを彷彿とさせるのに必要なSVE1740 パネル4枚をフロントのコーナーに配置し、フロント壁面のミッドバス特性を改善するためのSVE1740パネルの裏返しを二枚配置し、施主自作の反射パネルも左右に加えて計測したものです(測定ポイント3箇所の重ね書き)。 <測定ポイント3箇所の重ね書き> トラップウォールは平蔵さんのリスニングルーム用に企画したものですが、オーディオ機器のセットアップが遅れて最終調整ができずにいるうちに、半年遅れでスタートした本件の方が先に完成してしまいました。 トラップウォールに入射した低い周波数の音は、トラップウォールの迷路曲がりを抜けて背後の吸音層に潜り込み、ブーミングを減らすミッドバストラップ、定在波を減らすバストラップ、柱振動を減らす防振トラップにより熱エネルギーに変換されて消滅します。 ミッド帯域以上の音はトラップウォールの表面で跳ね返されて室内に戻ります。 つまりトラップウォールは部屋の響きに含まれる過剰な低音エネルギーを背後のトラップに送り込む役回りで、裏方のトラップの方がむしろMATRIX-400のコア・アイテムであり、縁の下の力持ちです。 そして低音の響きが適量になって始めて、残響時間を長めに保ちつつフラッターエコーを消滅させるトラップウォールの反射特性が本領を発揮し、音楽の躍動感や楽しさなど、トリップ感を増幅する7kHzエリアの残響音を増やします。 ![]() 音楽再生で最も嫌われる音がボーカルの表情を暗くするブーミング、次いでベースやバスドラムのヌケを悪くするボンツキです。 ブーミングを改善するSVパネルと、ヌケの悪さを改善するSTWパネルは、どちらも少量を集中配置して低域特性を劇的に改善するアイテム、一方新製品のトラップウォールは部屋中の壁面を総動員して低音の余分な響きを吸音するアイテムです。 部屋中に低域トラップを分散配置すると、残響時間の周波数特性に要求されるミッドバスの吸音条件が緩やかになり、世界各国の研究者が推奨する100〜200Hz帯域の残響時間が長めになる特性でオーディオルームもブーミングから開放されます。
上記グラフにある研究対象に比べたら、オーディオルームはキャパシティーが小さいので、3.4.のデンマーク、Richmond 特性あたりを目標にするのが良さそうです。 一方壁揺れを残したままで実施するフロントエリアにSVパネルを集中配置する方式のルームチューニングでは、150〜200Hzに残響時間のボトムがくるとベストの特性になります。
![]() ところで本件は軽量鉄骨で組まれた建物のリノベーション・オーディオルームです。過去の経験則では、軽量鉄骨の柱は低音の音圧に極度に弱く、オーディオルームにしようものなら壁や天井が盛大に揺れてブーミングが大量に発生します。 そんな部屋をSVパネルのミッドバス吸音でオーディオルームに仕立て上げた例が下記の写真で、実用性がない量の吸音パネルが必要になります。 <無償ルームチューニング48> ![]() 本件のご相談を受けたとき、絶妙のタイミングで、平蔵さんのリスニングルーム用にトラップウォールの設計試作の真っ最中であったので、どんぴしゃり、軽量鉄骨造りにうってつけのアイテムとして施主にお薦めして採用となりました。 新築のオーディオルームで、躯体の設計段階から参加させていただき、現場管理に参加できる案件であれば、迷路板(トラップウォールの表板)の裏側に配置する、柱の振動を小さくするアイテム、ブーミングを小さくするSV特性のアイテム、ボンツキを止めるSTW特性のアイテムなど、バランスよく配置してベストの特性を目指すのですが、 本件のように軽量鉄骨の建物では、何はともあれブーミングの抑制がオーディオルームの成否を決定づける重要項目なので、ブーミング対策に的を絞った改装を行い、100Hz以下の定在波帯域は完成後にSTWパネルなどで補正する方針としました。 ブーミング抑制に的を絞ればトラップウォールの縁の下は単純になるので、電話と簡単な図面で打ち合わせをしてリフォームを行いました。そして作りっぱなしの無調整で測定した残響時間の周波数特性が、三箇所の測定結果を重ね書きした残響時間の周波数特性です。 残響時間の周波数特性が推奨曲線の形に合致する見事な出来栄えのオーディオルームに仕上がっていました。 ローコスト改装オーディオルームの第一号です。 第ニ号の新築物件が群馬県の桐生市で着工しており、来春完成の静岡県の第三号は躯体の設計から参加させて頂いた20畳のホームシアターで、いずれブログでお披露目できると思います。 トラップウォールによるリフォームはスライド丸ノコとパワードライバーを用意すれば素人工事でも同じ特性に仕上がります。木工経験があれば自作が可能なオーディオルームとしてイチオシです。 ![]() デモ用の定在波パネルを搬入し、ベースやキックドラムの帯域である100Hz以下の音の変化を確認しました。低域の視界が広く深くなって、ベースラインが明確になり、キックの輪郭やヌケが改善されることが判明したので、STW1500パネルをリスニングポイントの後に一枚追加することにしました。 下記のグラフの系列4が定在波パネル追加後に測定した残響時間の周波数特性。低域に大きな変化が見られます。 音楽の躍動感や高揚感を増幅する7kHz前後の残響時間が長めである点も特筆すべきポイントで、この帯域の響きが多い部屋は繊細な高音域が心地よく耳触りよく鳴り渡ります。 強い直接音がダイレクトに耳に届く中音ホーンで構成されるシステムの場合、ドラムのハイハットを表情豊かにまろやかに鳴らす7kHz帯域の残響音多めは貴重な特性です。残響時間の推奨曲線に近似する周波数特性と相まって、聴き惚れる再生音です。 軽量鉄骨造りや2x4工法など、壁振動が大きい部屋の場合、100Hz以下に壁の共振周波数があると、その周波数に幅の狭いディップができることが多く、100Hz以上の共振では共振周波数付近に幅の広い山形のふくらみができます。 系列1,2,3の100Hzのディップは壁振動が原因のディップと思われます、定在波パネルの設置で壁振動が弱くなり、系列4では100Hzのディップが消えています。 定在波パネルの吸音帯域ではない125〜630Hzの残響時間が短くなったのは、フロントとリア(ガラス)の間の平行面に発生するフラッターエコーが減ったためでしょう。 系列4:STW1500追加 <50Hz> <63Hz> <80Hz> <100Hz> <125Hz> <160Hz> <200Hz> <250Hz> <315Hz> <400Hz> <500Hz> <630Hz> <800Hz> <1000Hz> <1250Hz> <1600Hz> <2000Hz> <2500Hz> <3150Hz> <4000Hz> <5000Hz> <6300Hz> <8000Hz> <10000Hz> <12500Hz> <16000Hz> <20000Hz> 凡ての帯域で減衰波形に暴れがなく、とても素直な特性です。 ![]() <トラップウォール (TrapWall)> <SVEパネル>
<STWパネル>
![]() ブレークスルーを揺るぎないものにするための実験室を準備中。 残響時間の周波数特性を希望の数値に落とし込むには、ブーミングを減らすミッドバストラップ、定在波を減らすバストラップ、柱振動を減らす防振トラップの詳細データが不可欠です。それらを計測するための実験室です。 続きはブログにUPします。 -- 準備中、しばらくお待ち下さい -- http://salogic.cocolog-nifty.com/blog/10/index.html
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