Last update 07.04.01




ルームチューンの手順
.写真による予測
.デモパネルによるチューン
.最小構成のパネルを設置
.不足分の追加

チューン以前の測定データ
残響特性

仮チューン後の測定データ
残響特性

完成後の測定データ
残響特性

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 かれこれ半年弱の時間が流れてしまい(今日は6月20日)記憶が薄れつつありますが、初めてお尋ねしたときの第一印象は・・・、「天井が高い部屋はストレス(圧迫感)の無い伸びやかな音がするな・・・」であったと思います。此処だけは直さざるを得ない、と言うような明らかな欠点などない、居間兼用のオーディオルームでした。
 
 理論的な設計に基づいて反射音の配置や残響時間の最適化を行った部屋であれば更に上がありますが、普通の居間に普通に置かれたオーディオシステムであれば、このあたりが上限だろう、と思える音でした。しかしオーナーには確固たる不満がありました。

 
楽器の音や歌声に、奥行きを伴うサウンドステージが感じられない
 
 5.1chのシステムであれば前後方向の立体感が出せて当たり前と誰しも理解します、しかし音源が二つしかないピュアオーディオで奥行きを伴うサウンドステージを作る、と言えば、それはむしろ邪道ではないかとの反論もあるでしょう。しかし5.1chシステムで必ず感じる3つ以上のSPの波面の位相不整合による不快感(視聴ポイントを決めて合わせ込むがリスナーがズレてしまう)も中々深刻ですから、その心配のない2chで奥行きと高さを伴うサウンドステージを作る意義は大きいと思います。

 CDの音源にはコンサートホールやライブハウスの初期反射音が含まれています。この反射音を楽器の実音から分離して適正な位置に誘導することで、スピーカーのバッフル面にへばり付く二次元平面のプアな解像度を、奥行き方向や天井方向の広がりをもった三次元の立体的な解像度に拡大することができます。ルームチューンに伺って、どのような音にしたいのですか?、とお尋ねすると、共通項は三次元再生です。

 「音楽好きで音の表情も好き」という方は、三次元の解像度を早い段階で手に入れてしまわないと、ケーブル交換などで多くの出費を繰り返す事になります。サウンドステージの生成はフリースタンディング、またはルームチューンの得意技であり、ケーブル交換で代用することはできません。位相特性に配慮のあるオーディオ機器(特にSP)であれば、グレードにかかわらずサウンドステージを作り出すことができます。
サウンドステージが確立できて微細な音のニュアンスが分かるようになってから、ケーブルによる音色の変化を楽しむのが順当な手段であり、無駄な経費を費やさずに理想の音を手に入れる近道です。
 
三次元の佇まいを作るSP周辺からの反射音
 
 CDに収められた楽曲には、収録したホールの器の初期反射音や残響音も収められています。その反射音は楽器の佇まいの再現に必要不可欠なものですが、再生環境の作り方次第によって二つの相反する動作をします。

 楽器の定位と同じ位置に初期反射音や残響音を置くと、楽器に絡みつき繊細な表情を覆い隠してしまう悪玉に変身します。

 SP周辺の環境を整えて、ホールの初期反射音を楽器の実音から引き離して定位させると、サウンドステージが形成され、ボーカリストの艶かしい佇まいを醸し出す善玉に変身します。

 
 いよいよ150例になる条件の異なるルームチューンの結果から、SP周辺からの反射音や残響音に固有の周波数特性を与えたとき(部屋の響き参照)、楽器の実音の反射音は実音の定位に融合して楽器の骨格を骨太なものにし、録音で収音された元々定位不詳な間接音だけが反射面に残留定位して集音された間接音の遅延時間に相当する奥行きを醸しだすらしいことが明らかとなってきました。

 
画像(写真)でサウンドを予測する
フロント壁面がガラスであると佇まいを作る一次反射音がリスナーに届かない

 SP背後の壁面に適度な反射音が存在するとき、楽器やボーカルに奥行き方向の佇まいが蘇り、収録に使われたホールのサウンドステージが再現されます。では硝子面からの反射音は適度な反射に相当するのでしょうか?・・・ 

 残念ながらリスナーに到達する一次半遮音のエネルギーが小さくて、適量に達しません。

 正面がガラスの場合、サウンドステージが必要であれば(体験してしまえば必須となりますが)視界を犠牲にしてでも拡散パネルが必要になります。オーディオルームの正面の壁面にガラスはご法度と言われていますが、幅の狭い(幅600mm程度以下の)強固な嵌め殺しのサッシに分割し、不足する拡散音をLVやStainVeil(ステンベール)パネルで補うことにすれば穴蔵の様なオーディオルームから開放されます。

高い天井は上空からの反射音が不足する

 一番距離の短い壁と壁の間に、最も悪質な(周波数が高い)定在波が発生します。従って天井が高い事はもっとも歓迎されることなのですが、ここにも落とし穴があります。天井からの反射音が弱々しくなってステージの高さが出にくいのです(とくにフリースタンディングのSP配置で深刻)。

 コンサートホールであれば反射性の浮雲、専用のオーディオルームであれば拡散スカラホールを設置して上空の反射音を補うことが出来ます。しかし居間と兼用のオーディオルームでは布製の拡散スカラホールと言えども設置困難です。SPの後ろのLVパネルの背丈を上げることで上空の聴感音圧をあげる必要があります。リスナーの背後に拡散パネルを置く方法も効果大です。
注:右の写真は第一回目のデモチューンのものではありません。説明のために2回目のチューンからの流用です。

大きなソファーの吸音力により、左サイドの反射音が不足し、センターボーカルの存在感が右に偏る可能性あり

 右側にはTVの反射があり天井の迫り出しもあって反射音や残響音が目立つ。左側には全音域を吸音してしまうソファーが置かれている。直接音のボーカルはセンターに定位するが、聴覚が感じる存在感は右寄りになってしまうはず。

 一次反射音のエネルギー量に左右差があると、サウンドステージの奥行きが浅くなったり、時にはサウンドステージできないこともある。左側に拡散反射面を適量設ければ解決だが、サイドからの反射音は広がり方向の分解能を落とすので小さな面積の拡散パネル(LV300など)を複数使って補正する必要がある。
 
 
デモパネルによる仮チューン

初回のデモで決まったLVパネルのベスト配置


 センターにオーディオラックがあるので、センターパネルは定番のデュアルとなり、背丈は1500mmと通常より高くなった。センターパネルはボーカリストの口元の高さを決めるので、等身大の口元とするためには1500〜1800mmが正しいのだが、リスナーが椅子に座っているためか、少し小さめの1200〜1300mmがバランス良く聞こえる。

 本件では天井が高く、天井からの一次反射音の到達時間が床や左右からの一次反射音の到達時間に比べて大きく遅れ、かつレベルが小さい。結果口元の高さが下がるし、天井方向の空間表現が希薄になる。従って少し背が高めの1500mmがベストとなったのであろう。

 音源に含まれるホールの初期反射音や残響音を天井などに定位させることでその方向の空間の広さを感じさせる再生音場で、傾斜天井を採用する場合、フロント側の天井を低く、リスナー側を高くした方が結果が良いことと理屈が一致するチューニング結果となった。

スピーカーパネルはいつも通り1800mmがベストとなった。通常1800がベストで1500も1800に比べてそれほど遜色がない。1200mmでは高さ方向のサウンドステージに不満が残るが、フリースタンディングによるサウンドステージと比較すれば似たようなもの、との結果になる。居間などで高さの制約がある場合を除いてスピーカーパネルは1800がお勧めで、センターパネルはニアフィールド的なレイアウトであれば1200、距離が離れれば1300です。

 左右の袖のパネルは1800mmに続けて、1200mm、600mmの順序で並べるのが標準配置です。

2月12日に ”LV1800-sp” を納品
最小構成のLVパネルを設置



<センターパネルとサイドパネルの再チェック 03.22
センターパネルが1500mmで少し高い(標準は1200〜1300mm)以外は典型的な標準配置となった。ソファーの吸音を補完するLV300が左の出窓上に追加になった。


いよいよ完成の域  2005.06.14
不足パネルの追加



残響時間の測定
チューン前
average 16Hz 20Hz 25Hz 31.5Hz 40Hz 50Hz 63Hz 80Hz 100Hz 125Hz 160Hz
0.52 - - 0.52 0.35 0.36 0.35 0.38 0.4 0.53 0.3 0.37
200Hz 250Hz 315Hz 400Hz 500Hz 630Hz 800Hz 1kHz 1.25kHz 1.6kHz 2kHz 2.5kHz
0.4 0.43 0.53 0.61 0.55 0.55 0.57 0.56 0.54 0.51 0.51 0.48
3.15kHz 4kHz 5kHz 6.3kHz 8kHz 10kHz 12.5kHz 16kHz 20kHz      
0.47 0.5 0.5 0.48 0.4 0.35 0.3 0.23 0.18      
 
仮チューン後
average 16Hz 20Hz 25Hz 31.5Hz 40Hz 50Hz 63Hz 80Hz 100Hz 125Hz 160Hz
0.48 - - 0.56 0.44 0.28 0.32 0.38 0.4 0.43 0.33 0.35
200Hz 250Hz 315Hz 400Hz 500Hz 630Hz 800Hz 1kHz 1.25kHz 1.6kHz 2kHz 2.5kHz
0.4 0.46 0.55 0.55 0.55 0.55 0.54 0.53 0.53 0.54 0.53 0.48
3.15kHz 4kHz 5kHz 6.3kHz 8kHz 10kHz 12.5kHz 16kHz 20kHz      
0.47 0.48 0.48 0.45 0.48 0.37 0.25 0.21 0.2      
 
チューン完了後、下がり天井下
average 16Hz 20Hz 25Hz 31.5Hz 40Hz 50Hz 63Hz 80Hz 100Hz 125Hz 160Hz
0.44 - 0.65 0.6 0.47 0.24 0.22 - 0.44 0.3 0.37 0.37
200Hz 250Hz 315Hz 400Hz 500Hz 630Hz 800Hz 1kHz 1.25kHz 1.6kHz 2kHz 2.5kHz
0.35 0.45 0.52 0.5 0.5 0.53 0.49 0.52 0.48 0.52 0.48 0.48
3.15kHz 4kHz 5kHz 6.3kHz 8kHz 10kHz 12.5kHz 16kHz 20kHz
0.48 0.48 0.46 0.45 0.38 0.27 0.28 0.33 0.18


残響時間の測定データから分かること
 「延々と9時間も聴いてしまいました。まさに、やめられない止まらないといった感じでした」との興奮が醒めて、また、パワーアンプを替えたらもっと良くなるのではないか? との迷いが始まっているようです。では何故満足が持続しないのか ・・・? 答えは残響特性にありそうです。

 吹き抜け天井で壁の総面積が大きいことから、LVパネルの設置により残響時間が変化した様子は見当たりません。チューン前〜チューン後の3種類の測定データに共通した残響特性の特徴は

@ : 125Hz、160Hz、200Hzの残響時間が中・高音域に比べて短い。この帯域の残響時間が短いと楽器の分離や解像度が上がり、通常無害です。但し伝送特性の125〜200Hzの凹みが大きいと音が痩せて聴こえます、・・下記データによりOK。
 リスニングポイントの伝送特性
160Hzにディップがあるが部屋の定在波によるもの(80Hzにもディップがある)。伝送特性は概ね良好。
 SP軸上1mの伝送特性
無響室ではないので部屋の特性も含まれている。低域特性は50Hz以下が-12db/oct程度。


A : 100Hz以下の残響時間が中高音域の残響時間と同じ。100Hz以下の残響時間が徐々に長くなってくれないと音楽の土台が落ち着きません。一時満足したが時が経つにつれて物足りなさを感じる。・・・このような症状では残響音の低音不足を原因の一つとして疑ってみる必要があります。


 第一印象


 「このままで良いのでは・・、しいて言えばサウンドステージの奥行きが足りないかな・・」初めて伺ったときの第一印象です。

 測定結果を見ると125Hz〜250Hzの残響時間のディップが「このままで良い」と思った原因と分かります。ブーミング帯域(125〜250Hz)の残響時間が短いと音楽の透明度が上がります。

 一方、第一印象が良いにもかかわらず同じ音を繰り返し聞くオナーが不満を持つ原因は、100Hz以下の残響時間が短いために感じる落ち着きのなさでしょう。中音域の残響時間は0.5secあり、最適残響時間にかなり近い値です。

 デモ用のLVパネル、なし(オリジナル)/あり、の残響時間の変化
 100Hz以下と10kHz付近に暴れ画あるが、目視で修正すると本文の表のように滑らかになる



 2フロア吹き抜けの居間兼用のオーディオルームで、フラッターエコーがほとんど感じられない部屋でした。LVパネルはミッドバス付近の不具合を改善するものですが、パネルの設置で400〜500Hzのピークがつぶれただけで他は測定誤差範囲の変化しかありません。フラッターエコーが少ない部屋の特徴です。


 残響の量/残響時間について
http://www.club.sense.panasonic.co.jp/club/technics/consulting/listening4/listening4.html
 加藤鉄平氏の推奨値によると、残響時間の最適値は ●6畳:0.42秒 ●12畳:0.5秒 ●20畳:0.56秒 です。一方サーロジックのHPの実測データによると、推奨値の半分強程度の部屋が大勢を占めています。何故これほどギャップがあるのでしょう? ・・・ 。答えは単純明快です、フラッターエコーが邪魔をして残響時間を短くせざるを得ないのです。フラッターエコーを残したまま最適残響時間を実現すると(フラッターの帯域は最適値を超える)、風呂場の風情の、楽器の所在が不明なサウンドになります。

 残響の質について
http://www.club.sense.panasonic.co.jp/club/technics/consulting/listening5/listening5.html

 ”残響時間の周波数特性の推奨値”の表によると、残響時間は低域と高域で上昇する特性が推奨されています。但しこの表が想定している室容量は住宅事情が厳しい日本のオーディオルームのサイズよりかなり大きい部屋であろうと推測できます。日本家屋のブーミングの帯域が125Hz〜200Hzであることを考慮すると、20畳程度以下のオーディオルームで200Hzの残響時間が上昇することは許容できません。オーディオ的な爽快感を伴う透明度の高い低音を確保したうえで、更に音楽と融合させるサーロジックチューンの目標残響時間は右の表となります。

 但し一次反射音の低域はもっとフラットであることが望まれます。
残響時間の周波数特性(比率)

Original
デモパネル設置
残響時間
Original   LV設置
詳細はこちらを参照してください。


 100Hz以下の残響時間を長くする方法
 専用のオーディオルームでないと実現不可能な場合が多いのですが、壁強度を上げ、壁をダンプすれば残響時間の低音域が長くなります。板共振が原因のミッドバス以下の暴れも最大値付近に収束します。グラスウールはダンプ力が弱いので遮音用のグラスウールでダンプ材を兼ねるのは効率的ではありません、ダンプ力はフェルトの方が優れています。

 100Hz以下の響きを増やす方法
 LV600を部屋の周囲に並べることでリスニングエリアの低音を増やすことができます。低音楽器の倍音の反射が増えると部屋中に低音感が行き渡ります。

 一次反射音の超低音(50Hz以下)で代用する
 理想は直接音:フラット、一次反射音:ややドンシャリ、残響音:強い(特に低音)ドンシャリですが、残響音のドンが期待できないときは一次反射音のドンで代用します。例えばD.Cube2の音とその倍音をStainVeilパネルで拡散反射させてやり、超低音で包まれる音場を造る方法です。



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