無償ルームチューニング 196

-196-
総合サムネイル
TOP ルームチューン入門 お買い物 調音パネルの使い方 お問い合わせ


2016.09.15 第一回目ルームチューン


2.5m x 2.5mの巨大スピーカーバッフル

 30畳の部屋が12畳に見えてしまうほど、堂々たる存在感を放つ巨大スピーカーシステム。調音パネルの最適な置き場が確保できないほどの大迫力です。

 SVパネルによる調音は、壁や天井が強度不足であるとき、その振動音を吸音してミッドバスのブーミングを解消することと、平面壁が跳ね返す鏡像を作る反射音を拡散反射音に変化させて楽器の佇まいを明確にすることで発揮されます。

 ブーミングを改善するミッドバスの吸音は、部屋中どこの位置にSVパネルを置いても発揮されます、しかし三次元の奥行を醸し出す水平拡散反射音の効果は、リスナーから見える位置にSVパネルを置かないと発揮されません。

 縦横に広がる巨大バッフルは演奏ステージをバッフル平面に貼り付けて奥行表現を阻止する傾向があります。加えて、フロント左右コーナーに置いたSV1800spもリスナーから見えずらく、SVパネルが持つ楽器の佇まいを明確にする特性も減殺されます。

サウンドステージをスピーカーの前方に引き出す

 スピーカー後方の左右コーナーにSV1800spを置くと、スピーカーを最前列にした背後の空間にサウンドステージが姿を現します。演奏ステージの楽器配置が再現されるのです。

 そのサウンドステージを、サイドパネルとバッソとリアパネルが手前に引き出すことで包容力のある音場が作られるのですが、SV1800spが視野に入らなくなるほどの巨大バッフルがあると、そもそもサウンドステージの生成が妨げられてしまう。

 そこで本件ではスピーカーの手前にサウンドステージをダイレクトに作ることにして、和心をバッフルより手前に配置、サイドパネルの数を増やす、サイドパネルの背丈を上げる、などのトライをしてみたのだけれど、サウンドステージの奥行が深くならず仕舞いでした。

久しぶりの音響測定

 持参するパネルの量を決めるために送っていただいた写真から、難しいルームチューンになることが予見されたため、久々に測定器を持参しました。

<ウーファーの周波数特性> 
マイクロフォン : ウーファ前方25cm、900Hzのディップはウーファーとスコーカーの位相干渉。
 


1900年代前半作のウーファー。当時の技術の結晶だが低音が出ないですね。



<伝送特性>
 バッフル前方1m




<伝送特性> リスニングポジション
45Hzのディップは定在波の可能性大。10〜30Hzの音圧上昇は壁振動でしょう。



SPの低音不足は 部屋が作る低音では補正できない

 12dB/octで70Hz以下が下降しているウーファーだが、リスニングポジションでは10Hzまでフラット。だから楽器の音も原音通りに聞こえるか? そんなことはありません、低域の音圧は壁振動音が押し上げたものです。そしてオーナーの不満の一つです。

 例えば EAGLESのhotel californiaのバスタブラの音。「ド ・ユ〜ン」、「ド ・ユ〜ン」、・ ・ と低域が響き渡る録音なのに、「トん」、「トん」、・ ・ と、ドアのノックのような悲惨な音に聞こえます。


 リスニングポイントの伝送特性が10Hzまでフラットであっても、SP直前の周波数特性に低音が無いのだから、リスニングポイントに移動したってバスタブらの音はノックです。

 まずSPの周波数特性をフラットに整える。結果リスニングポイントの音圧は低域オーバーになるでしょう、でもバスタブらは「ド ・ユーン」と鳴ります。次に部屋鳴りのだぶつく低音を吸音すれば「ド ・ユーン」健在のままリスニングポイントの伝送特性もフラットになって目出度しめでたしになります。

スピーカーの周波数特性を崩さないように 部屋の反射特性を整える

 再生音のベースになるSP直近の周波数特性をフラット(拘りがあれば好みの特性)に整える。そしてリスニングポジションの伝送特性がフラットになるように部屋の反射音を整える。

 この手順が、凛とした緊張感のある楽器の佇まいを再現し、同時に音楽の躍動感を手に入れる極意です。

 世界的に大ヒットした楽曲は、一流のエンジニアが全身全霊をつぎ込んで音を作り、ミュージシャンのお墨付きを得、一流のマスターリングエンジニアの感性を加えて作り上げた一枚の絵画のような完成度の高い音です。その絵画をそっくりそのまま再現するフラットなSPシステムの構築がオーディオ再生の第一歩です。

ルーム補正は音楽を壊す

 部屋からの反射音が原因の伝送特性の凸凹を、オーディオシステムに組み込んだイコライザーでフラットに整えるルームEQは、一流のエンジニアたちが書き上げた絵画に対し、素人が落書きをするようなもの。楽器に代わって凛とした楽器の佇まいを醸し出すはずのSPの物理特性を壊す行為です。

<楽器の音を壊す行為>


リスニングポイントの伝送特性を SPの周波数特性に合わせ込む

 まず第一にSPの特性をフラットまたは好みの音色に調整する。それから部屋の欠点を治してリスニングポイントの伝送特性をSPの周波数特性と同じ形に合わせ込めばよいのです。

<反射音のEQなら楽器の音は壊れない>鏡像を作るリアル反射を拡散反射に変換し、ミッドバスのエネルギーを低下させる。


SVUパネル、STWパネル、和心、 を設置して残響時間の周波数特性を測定

<残響時間周波数特性> 100Hz以下上昇/ミッドバス下降の理想的な形。40Hzの折れ曲がりは大きな面積の一体壁振動があると見られる形(2x4の建物で多発する)


  
 SVパネル(標準の2倍程度)、STWパネル(4枚)、Wasin、Bassoを配置して、残響時間の周波数特性は、ほぼ満足できる形になりました。しかし低域のダブツキは完全解消にいま一歩です。


<SVEパネルのミッドバス吸音特性>



<STW1500の低域吸音特性>
 

 3寸5分(□105mm)の柱に杉板貼りで、天井も 3〜4mと高いので振動面積がとても大きい、コストが許せば SVパネル、STWパネル を更に増やしたいところです。

 80年の歳月を生き抜いたビンテージスピーカーで現代スピーカー並みの三次元再生を目指すには、スピーカーバッフルがまだまだ大き過ぎる。

 バッフルの面積を小さくする箱直しをしてもらい、再度ルームチューンをすることにして本日は終了。

 なんと8時間を費やした最長時間記録のルームチューンでした。



<励磁SPとその電源>



2016.09.15 終了



2016.10.06 第二回目ルームチューン


スピーカーキャビネットがだいぶ小さくなりました、しかしまだまだ巨大です。オートグラフより二回り大きい。

<低音補強にサブウーファーを追加>




 ビンテージのお家芸である充実した中音域を何としても生かしたい、そして現代風の音にアレンジしたい。そんなオーナーのご希望に合わせ、DSPサブウーファの開発記念として保存してあったSW1600Aを持参し、Klangfilm・KI-L-401 ウーファーの低域につないでみた。

<SW1600A 800Wx2 アナログパワーアンプ>


<SW!600Aの周波数特性と位相特性(FIRフィルタで20~200Hzフラット補正)70Hz以下を使う>


<サブウーファ無し、SP前方1mの伝送特性>


<サブウーファ有り、SP前方1mの伝送特性 70Hzで位相を合わせてクロス>



 低域のレンジはオーナーのご希望に沿うものになりました。再生音はKlangfilm・KI-L-401そのものです。
 
続いて Klangfilm KL-L301・ホーンスコーカーの音色にマッチするツィーターを探さなければならずオーナーが物色中。





本日のチューニング結果は、

● STW1500 x2枚
● SVU1800sp x6set(300を2枚積み重ね)
● SV900サイドパネル x2
● SV600 x2
● Wasin1200

●SW1600A



上記に加え、未配置の STW1500 x2、SV600 x8 が床に平置きされ、低域の吸音に役立っている。

 バッフルがまだまだ大きすぎで現代SPらしい立体感を追求する要件を満たしていないので、キャビネットを更に縮小してもらいリトライすることにして本日終了。

2016.10.06 終了

ルームチューニング198 に続く