無償ルームチューニング 172

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今年6月に新宿から横浜に転居したところ、「高域情報が吸い取られているような出音(知人曰く)」になってしまいました。

部屋は、3.6m×4.8mの部屋の縦使い、右は全面がガラス窓、左は和室との仕切り襖、前面は隣戸とのコンクリ壁、背面はキッチンとの境壁(石膏ボード)でキッチンへの通路が1m程空いています。

床はフローリング、天井と前面壁はコンクリートに直にスイス漆喰仕上げ、左の襖の表面にもスイス漆喰を塗ってあります。

高域情報の吸い取られが漆喰によるものだとしたら打てる対策があるのかを懸念しております。  なお、音響ボードは、センター、左右SP、左右サイドに設置、和心をセンターボードと併用しております。

高域情報の不足に加え中低域に濁りがあり解像度が低いです




無責任発言

昨年の12月に無償ルームチューンで新宿をお尋ねしたのでオーディオ機器の音は記憶にあります。広さ11畳の部屋で、前面と天井がコンクリートに漆喰、左が襖に漆喰、右がガラス、後ろが石膏ボードの構成であれば、高域情報が吸い取られているような出音にはならないはず。ちょい聴きの無責任な発言に惑わされているに違いない。



RCの部屋

コンクリートで囲まれた部屋の響は、500Hzあたりから低域に向かって残響時間が必要以上に長くなります。壁が揺れて響くわけではないので、逆位相の圧迫感を伴うブーミングにはなりませんが、ジャズやポップスの再生では邪魔になる響きです。



二面のみがコンクリートの場合、その傾向が現れたとしても軽微のはず。若干の低域過多を高域不足と思い込んでいるに違いない、と判断して定在波パネル二枚を用意してルームチューンに伺いました。

<ルームチューン前のレイアウト 非常に美しく配置されている>


センターのタンデム配置

センターパネル と WASIN がタンデムに配置されています。センターパネルが低域をタイトに締め、和心がふわっと浮かぶ実体感のあるボーカルを醸し出す構成。<147>にもタンデムについて記載があります。センターパネルと和心の両方をお持ちであれば、ぜひ試してください。

<和心とセンターパネルのタンデム配置>


片側2枚のサイドパネル

1200のサイドパネルが片側2枚、左右で4枚配置されている。

ルームチューン開始

高域不足は感じないが、ベースの特定の音が部屋中に広がって逆位相感を伴う聴感音圧の上昇がある。60Hz前後。

定在波パネルを持ち込めば立処に解決と思ったが、部屋の強度にトラブルの原因は発見できない。現状のパネルの配置変更で改善できるかもしれない。

手始めにスピーカー真横のサイドパネルを撤去。この位置のサイドパネルは反射音の非対称の改善に使うのだが、撤去しても殆ど変化なし。左の漆喰と右のガラスの反射音に大きな差はないようだ。



SV1200をリアパネルに流用。サウンドステージがスピーカーの外側まで大き過ぎるほど拡がった。理由不明だが低域の音圧上昇が消えた。



リアパネルを2枚にした。サウンドステージの拡がり過ぎがやや解消。低域は改善されたまま変化なし。



リアパネルを後ろに下げた。サウンドステージが程よい拡がりになり、ベースがセンターに定位して60Hzの音圧上昇もない。2枚のパネルを移動しただけでルームチューン完成である。



結果はサーロジックチューンの標準配置そのものになった。床パネルをバッソに変えれば低音域が更に充実するはず。

補足のコメントを頂きました

先日は拙宅のチューニングにお出で下さりありがとうございました。目の前でアレヨアレヨと言う間に村田様のご説明通りに良くなっていく様を拝見しておりますとまさに村田マジックとしか言いようもなく、改善して頂いたことに心より感謝申し上げます。

共同住宅ですので節度ある音量を前提として、今はクラシック音楽であれば不満なく楽しむことが出来ます。JAZZ/POPS系でのベースがもう少しカッコヨクなればと、日々精進しております。

なお、知人の感想にある「高域情報が吸い取られているような」について補足させてください。これは、村田様にご訪問頂けることが決まってから小生なりに取った対策実施前のものです。

対策で大きな効果があったのは2つ。 

(1)SPとリスポジのSP寄りに敷いてあったシルクのカーペットの撤去。

(2)SPパネルとCTパネルの間の漆喰壁面(拡散反射と思われます)に平面反射板(ポリカーボネイト板)を吊るす。

いづれも村田様がHPでお書きになっていることですね。これが中高域の解像度・情報量に大きな改善をもたらしました。お礼方々補足させて頂きます。

  
(1)床のカーペット撤去は鉄則ですね。カーペットは低音楽器の力強さを損なって音楽の安定感を失わせるし、高域情報を吸い取って音楽の躍動感も台無しにします。

ルームチューンの基本は、何はさておき、聴いていて楽しいかどうかが第一ですから。お尋ねした時はこの部分が改善済だったのですね。

例えば天井〜床に強いフラッターエコーがあるとき、ぶ厚いカーペットが有効です。しかし失われるものが大き過ぎるのです。フラッター対策は天井側に任せましょう。

(2)フロントの壁面が均一反射性または均一吸音性だと、スピーカーのバッフル平面に唄も楽器も全部張り付いてしまうサウンドステージの平板化が発生します。オーディオ全盛期のころの昔々の音像定位で、演奏者以上にスピーカーが存在感を誇示します。

左右のコーナーとセンターに水平拡散反射音を配置し、スピーカーを若干でも手前に引き出したとき、サウンドステージに奥行きと深みが醸されます。

そしてそれ以外のエリアを強すぎない平面反射に仕上げたとき、解像度や透明度が上がって、ミュージシャンのセンスやテイストが伝わってくる再生音になります。

<コンクリートに漆喰の強すぎる反射音を若干抑制>


但しブーミングの原因であるミッドバスの響を吸音しておくことが大前提で、ブーミングがあると水平拡散反射音の音響効果は半減または失われます。

ミッドバスは LV、SV、SVUパネルが効率よく吸音します。

<LV(左),SV,SVU(右)パネルのミッドバス吸音特性>