定在波吸音パネル
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 オーディオ再生の難問をザックリ分類すると、ボーカルの口元がずんぐりむっくり霞んでしまうブーミング(125〜250Hz)の帯域に起源があるものと、

バスドラムとベースに押し潰すような圧迫感が発生する定在波(50〜100Hz)の帯域に起源があるものの二つに分類できる。

■ブーミング■

住まいとして建築した木造住宅の一室をオーディオルームとして使う場合、低域不具合の原因は、壁材の石膏ボードや合板が振動し、その振動音が部屋に滞留してあたかも楽器の音の残響音であるかのように振る舞ってしまった結果のブーミングです。

ブーミングの有無は対話の相手が話す会話の声で判定します。野外で話す声に比べ、室内の声が図太く下膨れに聞こえる部屋には必ずブーミングが発生しています。ブーミングが酷くなると、渾身の演奏が彼方のBGMに聞こえてしまうくらい音楽から魂が失われます。

オーディオ再生に適した部屋は、会話の声が、華やかに、そして艶やかに響く部屋であり、コンサートホールの起伏に富んだ反射構造がそのことを物語っています。

http://www.operacity.jp/

一方、現代住宅の標準仕上げである石膏ボードに壁紙の部屋は、壁紙が高音域を吸音するので反射音から高音域が失われ、下ぶくれの反射音が楽器の音に混入してコンサートホールと正反対の音を醸します。

重ねて石膏ボードがブーミング帯域(125〜25Hz)で振動し、その振動音がボーカルや楽器に付帯するため、石膏ボードに壁紙仕上げの部屋をそのままオーディオルームにしたって楽しい音楽を奏でる筈がありません。

つまり普通の部屋をオーディオルームに仕立て上げるには、

@ : 中高音域の初期反射音を増やす
A : ブーミングを吸音する

が必須である。との結論が出ます。

■ブーミング吸音パネル <LV、SV、SVU>■

オーディオルームからブーミングを駆逐するのは極めて簡単で、LVやSVパネルを部屋に運び込むだけで(正規の位置に置かなくても)ブーミング帯域の余剰な響が吸音され、音楽の表現者たちの思いがダイレクトに伝わる音に直ちに改善されます。

正規の位置に置けば、パネルおもて面が撥ね返す中高音域の水平拡散反射音が部屋中を満たし、録音現場さながらの奥行き感を湛えたボーカルや楽器の佇まいが再現されます。

<SVUパネル>

<SVUパネルのブーミング吸音特性>


■定在波■

ところがたまに下記のようなケースにぶち当たることがあります(木造では稀、RCや地下室では可能性大)。
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デモパネルをお借りしている○○です。普段仕事で音楽制作をしております。SVパネルを試した結果とても良い方向に向かっているので購入に向けてサイズなどを検討しております。

そこでご相談したいのですが、パネルによって低音域の量感(120Hz付近)はとても調整しやすくなったのですが、100Hz以下がまだ安定しないので http://www.salogic.com/AudioRoomDesign/ProStudio01.html の下の方にあるような共振周波数をずらしたパネルはどうかと思っております。

目指す方向性としては、低音域の逆相、ディップ、ブースト、が分かる状態にしたいと思っております。特にエレキベースのC#(69Hz辺り)のロングトーンが今のモニターポイントだとほぼ消えてしまいます。

前のめりになると聴こえますが、50Hzなどローエンドが消えてしまうポイントに入ってしまいます。
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コンクリートで周囲を囲まれた地下室に代表される遮音性能が高い空間で起こる現象で、石膏ボードや板壁の振動が原因のブーミングは SVパネルで改善されたものの、定在波による伝送特性の凸凹が改善されずに残る物理現象です。

特定の周波数が聞こえない(上記例では69Hz)、あるいは特定の周波数だけ飛び抜けて大きく聞こえる、などが主な症状ですが、木造住宅のオーディオルームではあまり問題視されない現象なので、石膏ボード1〜2枚、石膏ボードに合板、石膏ボードに杉板など、壁の遮音性能が低ければ定在波も小さくなることが分かります。

例えば下記シミュレーターに自分の部屋の寸法を入れ、スピーカー位置とリスニングポイントを設定すると、http://homepage2.nifty.com/hotei/room/download/001.htm

ほぼ100%の確率で酷い伝送特性を見せつけられて唖然とします。複数のモードの定在波がごっちゃになって位相干渉を起こした結果なので、スピーカー位置やリスニングポイントを常識の範囲で変更しても大きな改善は望めません。

■ダイヤモンドプロポーション■

上記シミュレータのTopページに、石井式ダイヤモンドプロポーションのシミュレーション結果が記載されており、定在波の振る舞いの説明に最適なグラフなので、同じ数値を用いてグラフを再現したものが <画像1> と <画像2> です。

<画像1>


<画像2>


<画像2> で、 No.1(26.5Hz)、No.2(31.3Hz)、No.3(36.6Hz) が伝送特性に幅の広い大きなピーク&ディップを作る半波長モードの基本定在波の周波数。横長配置なので部屋の3辺のなかで距離が最も長い横幅方向の定在波が一番低い周波数になり(26.5Hz)、<画像1> のグラフの @に大きなディップができています。
●注)<画像1> の @、A、B は <画像2> の No.1、No.2、No.3に対応します。(以下同)


■横方向の半波長モード基本定在波

<画像3> の青のラインが部屋の横幅方向に発生する半波長モードの基本定在波の元になる右から左に向かう進行波を表し(動画ではゼロ点のドットが左に移動する)、赤がその反射波で左から右に向かいます。

緑のラインが耳に加わる定在波の音圧を表し(動画で確認してください)、その振幅(音圧)は同位相の進行波と反射波が加算されて壁際が最大、リスナーが座るセンター位置は進行波と反射波が逆位相で加算されるため、コンクリート壁のように反射率が100%に近ければ、加算音圧は常にゼロであることが分かります。

横方向の定在波はその中間位置にリスナーが座るため、半波長モードの基本定在波の節に当たって伝送特性は必ずデイップになります。<画像1> の @ のディップ。

●注)定在波関連の用語は石井式の解説に準じています、リンク制限があるので、詳細は 「伝送周波数特性に影響を与える基準振動モード」をキーワードにしてご自身で検索してください。http://www.google.com/webhp?hl=ja Topに出ると思います。

<画像3 半波長モードの基本定在波の動画> 
緑のラインの振幅が定在波の合成音圧を表す。左右壁際の音圧が最大、真ん中のリスニングポイントの音圧は進行波と反射波が逆位相で加算されるため、壁の反射率が100%であれば合成音圧は常に0となる。但し定在波の音圧が0になるだけで、直接音が打ち消されるわけではない。



■前後方向の半波長モード基本定在波

次に距離が長いのが前後方向で、リスニング位置は定在波の端っこの後ろの壁際です(<画像1> の右側の配置図参照)。壁際は定在波の腹に当たり、伝送特性は必ずピークになります。<画像1> 左のグラフの A(31.3Hz)。

■上下方向の半波長モード基本定在波

次が上下で、石井式は天井が高いのでリスニングポイントが床に近い定在波の端っこになって定在波の腹に当たり伝送特性は必ずピークになります。 <画像1> の左のグラフの B(36.6Hz) 。

但し天井高 2.4mの普通の部屋ではリスニングポイントが天井〜床の真ん中付近になって B の位置にディップができる可能性があり、伝送特性が上下に暴れる原因となって横長配置のメリットが失われます。

天井が低い部屋の場合、横長配置と縦長配置に優劣の差はつきません。

<画像1> は 22畳の広い部屋のシミュレーションなので @、A、B の周波数が 30Hz 前後、且つ横長配置のため No.1 のディップが最も低い周波数になって最低域が切り下がり、とてもスムーズな伝送特性が得られています。

一見低域のルームチューンは不要のように見えますが、部屋が狭くなって 30Hz が 50Hz に上昇すれば 50Hz 以下の音が無い部屋になります。更に
天井が低ければ B の位置にもディップができるため、@のディップにより低域の沈み込みなし、Bのディップにより楽器の低域なしの再生音となります。

一方縦長配置だと@とAの並び順が逆転するため、横方向の定在波のディップが縦と高さの定在波のピークの間に挟まって伝送特性が暴れた格好になりますが、ディップは1箇所で済みます。

遮音性能が高い部屋の場合、縦長、横長、共にルームチューンが必要と認識出来ます。

●注)ページの後半にある <画像14> がサーロジックデモルームのシミュレーション。縦長配置のため A:29.2Hz に横方向の半波長モード基本定在波によるディップが発生している。

■半波長モード基本定在波■

では <画像2> の No.1〜No.3 の定在波を個別に見て行きましょう。

No.1 : 部屋の左右の壁による半波長モードの基本定在波。半波長モードの定在波は壁際の音圧が最も高く(定在波の腹)、二つの壁の中間位置(リスニングポイント)の音圧が最も低くなる(定在波の節)。<画像1> の @:26.5Hz のディップが、左右の壁がリスニングポイントに作る半波長モードの定在波による幅の広いディップです。

No.2 : 部屋の前後の壁による半波長モードの基本定在波。リスニングポイントが壁際なので定在波の腹に当たり A:31.3Hz にピークができている。

No.3 : 部屋の天井〜床による半波長モードの基本定在波。天井が高い(4.7m)のでリスニングポイントが定在波の腹に当たり B:36.6Hz にピークができています。(●注 : 一般住宅の高さ 2.4m の天井では、リスニングポイントが上下の中間位置になりディップになる)

ところで <画像1> のシミュレーションは左右のスピーカーの間隔が 5.22m あります。スピーカーの間隔を音楽の集音現場の標準サイズ程度に狭め、立体的な存在感を醸すためにフリースタンディングにするとシミュレーション結果が別物のように変化します <画像4>。

<画像4 横長配置でSP間隔2.74m、正面壁からの距離1.11m>


ダイヤモンドプロポーションをもってしても、配置によっては定在波は一筋縄では克服出来ない模様です。なお横、縦、高さを等倍に縮小して6畳間くらいにすると <画像1> の配置でスピーカー間隔が3m弱程度になって普通のスピーカー間隔になります。

しかし天井が下がるので上下の定在波の中間に頭がはまり B にディップができます。横長配置を採用しても、定在波に対するルームチューンが必須と思われます。

■半波長モードの基本定在波対策■

基本定在波について理解が深まったところでその対策について考えて見ましょう。定在波の影響を減らすための対策として有効なものは、

1.部屋の遮音性能を下げて低音を外に逃がす。 2.100Hz以下を吸音する。の二つです。

どちらの方法を採用しても吸音であることに変わりはなく、再生音楽から演奏家の情熱を引き剥がす方向に作用することに変わりありません。マイクロフォンで伝送特性を追いかけて、イケイケドンドンで吸音を強めていくと、気がついたら音楽が大往生していた、なんてことになります。

<画像5> の残響時間の周波数特性の法則に従えば100Hz以下の低音域は残響時間が長いほうが良い、つまり吸音してはいけない。しかし定在波の発生を防ぐには低音を吸音しなければならない。と実現不可能と思われるような大トレードオフが発生します。

<画像5 残響時間の周波数特性>詳細はルームチューニング徹底解明参照


解決策は、部屋の基本的な作りは反射性として低音域の残響時間を十分長くして音楽の浸透力を確保する。その上で、広い部屋であれば、<画像1>の @ のディップを解消するべく、リスニングポジションの左右の真横の壁の一部のみ低音透過形状として外に逃すか、壁を透過した背後で低音を吸音する。または定在波吸音パネルを設置する。

昨年12月の無償ルームチューニングでこの状況に近い部屋に遭遇しているので後述します <画像10>。

■定在波吸音パネル■
12畳程度以下の狭い部屋であれば、半波長モードの基本定在波の音域が50Hz前後になるので、@ の対策として外に逃がしても良いし、定在波吸音パネルを設置して吸音で対処することもできる <画像6>。

A のピークもボンツキ音が目立てばリスナー背後の壁面に定在波吸音パネルを設置する。

B の制御が最も難しい。<画像6> の表面をフローリング材に変更して床に敷き、その上に椅子を乗せれば解決だが、椅子が落ちる危険を伴う。椅子の周辺にピラミッド型の Joser を置く手もあるが、歩きにくい。天井を斜めに作るのが正攻法だが、新築でなければ対応できない。

<画像6 定在波吸音パネル 試作サイズは920x1000mm>
定在波を吸音する場合でも中高音域(低音楽器の倍音)は反射が必須、定在波吸音パネルの表面はSVパネルのように凸凹になる。




<画像7 定在波吸音パネル 初期試作の吸音特性> もう一息吸音帯域を下げたい・・


■定在波吸音パネルを部屋に当てはめると■
6畳の縦長使いの場合、伝送特性に大きなディップを作る定在波は部屋の横幅方向の半波長モードの定在波。その周波数は66Hz(幅2.6mで計算)。<画像6> の試作パネルは6畳間にドンピシャリの特性です<画像7>。

6畳の横長、8畳、12畳の縦長の半波長モードの定在波は49Hz(幅3.5m)。パネル構造にもう一工夫を加えて吸音帯域が下がったら商品化が可能になります。

但し定在波は <画像2> の表のように上記周波数の直ぐ上に沢山存在するので、現状でも十分効果が有ると思います。昨年末に定在波が原因と思われる事案が複数あったので、早速現場検証をスタートします。

■12畳も制御範囲に入った■
920x1000mm のサイズでは、44Hzが限界特性の模様。44Hzまで吸音するので 12畳も制御範囲に入った<画像8>。

<画像8 44Hzまで吸音するので12畳も十分制御範囲>


■試作完了■
下記試作パネルの完成サイズは 1500x1000x90mm。吸音帯域の上限周波数の制御が可能になったので、20〜30% 程度であればサイス違いでも同じ特性が維持できそう。更に 120mm(柱の太さ)の奥行きがあれば遮音構造も組み込むことができる。

定在波の消去と壁振動(100Hz以下)の吸音により、ベースやキックドラムのボンツキが解消し、6畳間のサイズで 20畳超のオーディオルームの低域特性が実現できる可能性が高いことが無償ルームチューンにより確認できました。

次回(4月20〜22日)は過去実績で音響特性が判明している部屋を選んで初回(3月)の結果の実証確認です。

<画像9 定在波吸音パネルの試作完成品 1500x1000x90mm>




■半波長モード基本定在波以外の定在波対策■
例えば <画像2> の No.4 は部屋の幅と奥行き方向から成る定在波の斜め波です。斜め波は壁全面が関与して発生する定在波なので、壁全面を吸音しないと 100% の対策にはならない模様、しかしそんなことをしたら音楽が壊れてしまう。耳を使って程々の吸音を心がけるしかありません。
●注)「2次元モードの節面」 をキーワードに検索すると動画があります。http://www.google.com/webhp?hl=ja

後述のマトリックスの項のように定在波で超低域の音圧を上昇させることができれば、サブウーファと組合せて空気感の帯域(40Hz以下)に制御可能な位相干渉(鑑賞の方が正しいかも)を故意に作ることができます。あたかもコンサートホールに居るかのような深みのある沈み込む低音は、時間が適度に狂った複数の低音が位相干渉して作り出されるもので、定在波の超低音を直接音や反射音の相手役として有効利用しない手はありません。

「定在波=必ず悪」ではないので、伝送特性への影響力が最も大きい半波長モードの基本定在波を制御する目的で、リスナー左右の壁構造を低域の吸音量可変構造とし、斜め波や高次の定在波は残響時間を短くしない程度に吸音するつもりで一部の壁面にSVパネルや定在波吸音パネルを少量設置して調整する。程度の考え方が妥当でしょう。

<画像2> の No.7 など、モードの数字が2以上の定在波はピークやディップが起こる空間の幅が狭いので、半波長モードの定在波が解消すれば、スピーカー配置やリスニングポジションの若干の前後移動で調整ができます。

また高次定在波による幅の狭い伝送特性の凸凹は音楽鑑賞においては無視して構いません。但し音楽制作のスタジオではアンサンブルのバランスを決めにくい、など支障を来すことがあるでしょう。仕事場だから解像度さえあれば良しと割りきって定在波吸音パネルを必要量設置し、低域不足になったら上質なサブウーファで補うべきでしょう。