無償ルームチューニング 145

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 デモパネルをお借りしている○○です。普段仕事で音楽制作をしております。SVパネルを試した結果とても良い方向に向かっているので購入に向けてサイズなどを検討しております。

 そこでご相談したいのですが、パネルによって低音域の量感(120Hz付近)はとても調整しやすくなったのですが、100Hz以下がまだ安定しないので
http://www.salogic.com/AudioRoomDesign/ProStudio01.html
 
の下の方にあるような共振周波数をずらしたパネルはどうかと思っております。

 目指す方向性としては、低音域の逆相、ディップ、ブースト、が分かる状態にしたいと思っております。特にエレキベースのC#(69Hz辺り)のロングトーンが今のモニターポイントだとほぼ消えてしまいます。前のめりになると聴こえますが、50Hzなどローエンドが消えてしまうポイントに入ってしまいます。

遮音過多は音に有害?

 この部屋に限ったことではないが、広さが20畳を割り込んだ部屋で音漏れを防ごうと遮音性能を高めれば高めるほど、壁強度を上げれば上げるほど、定在波による伝送特性のトラブルが目立つようになります。

 低音のトラブルは、壁振動と定在波の二つが原因の全てであり、その二つがトレードオフの関係にあるから厄介極まりないのです。騙しだましバランスを取って折衷案で我慢するも良し、清水の舞台から飛び降りるつもりで大枚はたいて大きなオーディオルームを新築するも良し、それしか解決策が無かったのです。

ブーミング&ボンツキ(振動)
 振動のトラブルはブーミングとボンツキの二つに大別できます。ブーミングは 125〜250Hz の帯域(ミッドバス)の振動音がその原因、ボンツキは 100Hz 以下の帯域(バス)の振動音がその原因です。

 壁強度を上げればブーミングが減少し、柱強度を上げればボンツキが減少するので、これからオーディオルームを新築するのであれば、設計技術&施工手法で解決可能です。

 既築であっても、SV パネルによるブーミング対策で殆どのオーディオルームが音楽を満喫できる音場に仕上がるのですが、柱強度があまりにも低い場合や吸音材をサンドイッチにして柱に支えられていない壁を作ってしまった場合など、ボンツキが強すぎてお手上げのこともありました。それがいよいよ全て解決できるようになります。

伝送特性のピーク&ディップ(定在波)
 音楽鑑賞が目的の部屋であれば、聴感で伝送特性のピークが目立たなければディップも含めて見て見ぬふりをするよう従来お薦めしていましたが、上記のような音楽制作のスタジオでは事情が異なります。経験による勘を加えて低音楽器のバランスを決めざるを得ず、作品の完成度が下がります。

 見て見ぬふりをするようお薦めしていた理由は、ブーミングに比べれば音への悪影響が軽微であり、計測するとパニックになるほど酷い特性であってもSVパネルで音楽鑑賞に耐える部屋に改造できるからです。また世界中見渡してみても手頃な大きさで 100Hz 以下のみを吸音する吸音材が見当たらなくて、手の打ちようが無かったことも事実です。

定在波吸音パネル
 100Hz以下のみを集中的に吸音する狭い部屋でも設置可能なサイズの吸音体があれば、
「遮音過多は音に有害」 の項は定在波パネルを持ち合わせない別世界のスラングに追い遣ることができます。

 定在波パネル完成後、初めての門外テストなので、ワクワクして設置と試聴、そして測定開始です。お相手が音楽そして音のプロなので、作業はとてもスムーズです。音場に変化があれば然る可き言葉で直ちにリアクションがきます。

試作定在波パネルは2種類4枚
 左側の画像が試作完成品の定在波吸音パネル(1枚)。右は簡略構造の間に合わせパネル(3枚)。左のパネルの吸音帯域が下がり過ぎたので、右の3枚は吸音帯域を若干上方修正。
<左のパネルの ”定在波吸音” ”振動音吸音” 特性>

 4枚の定在波パネルを使い、時間の都合で測定ポイントを二箇所に限定して伝送特性を測りました。測定位置は、音楽制作をするときのモニターポイントと、低域の伝送周波数特性がガラリと変わるモニターポイントの少し後ろです。

 部屋はニ間を連結した空間で、真ん中左に仕切りがあります。



1.まず伝送特性の変化量がかなり大きかったモニターポイントの少し後ろのポイントの伝送特性の変化です。右のグラフの 70〜120Hz の改善が顕著。


●Mic:モニターポイントの後方
●定在波パネル:SPの間の前方>
●Mic:モニターポイントの後方
●定在波パネル:モニターポイントの後方壁際
 

 背後の壁に1枚の定在波パネルを置いただけで伝送特性が大きく改善されることが右のグラフから読み取れます(パネル無しを測り忘れたので絶対値は不明)。聴感特性が大幅改善され、
<このポイントの音では音楽制作不可能が --> 製作可能> に変わりました。

 2日後の<無償ルームチューニング147> で定在波パネル3枚をリアに配置したところ、それまでとは別格の沈み込む低音が確認できたので、リア配置は設置方法の定番決定です。

 この部屋も製品版が完成したらリアの2枚設置を試すことにします。設置機材とバッティングして適所の配置が確認できなかった左右のパネルも要再確認です。



2.次はモニターポイントに Mic を置き、定在波パネルは上記と同じ前方と後方設置です。20〜120Hzに変化がありました。

●Micモニターポイント  
●定在波パネル:SPの間の前方
●Mic:モニターポイント  
●定在波パネル:モニターポイントの後方壁際

 <エレキベースのC#(69Hz辺り)のロングトーンが今のモニターポイントだと消えてしまいます> が右のグラフでは完全復活です(定在波が一つ消えた模様)。



3.定在波パネルの数が一気に 4倍になりました。左右に置いたパネルが Mic を囲んでいないためか、伝送特性に姿を表しません。機材を整理して空き地を作り、要再テストです。

●Mic:モニターポイント  
●定在波パネル:前後左右
●Mic:モニターポイント  
●定在波パネル:前後右と作業テーブルに上向きにして乗せ、その上に機材(上下の定在波対策))

 右のイラストの機材を囲む赤線も定在波パネルです。定在波パネルを作業テーブルの上に置き、その上に機材を置いて、天井〜床の定在波の影響を確認。

 天井〜床に定在波があれば伝送特性に変化が出るはず -> 110Hzの深いディップが解消した。



 定在波パネルが定在波の通り道の定在波の腹の部分(音圧が最も高いところ)に当たれば効果てきめんの模様、

● 後ろの壁際は定在波の音圧が最も高い定在波の腹、上記測定例のフロント側は部屋の中央で基本定在波の音圧が最も低い定在波の節、従って後ろの壁際の定在波パネルは伝送特性を大きく揺るがすが、フロント中央の定在波パネルは影が薄い。

● 定在波パネルの効果的な設置場所は下記3箇所であろうと予測しています。
1.リアの壁際
2.リスニングポジションの左右壁面の壁際
3.フロント壁面の壁際

 フロントに置く定在波パネルはその形状や材質がボーカルや楽器の佇まい&音質に大きなインパクトを与えます、材の選別に時間がかかりそう。リアは現状の試作完成品の延長線上で商品化が可能と思われます。


 この日を含め 3日間のデモの結果を押し並べて検証すると、
リア設置の定在波パネルは 100Hz 以下の壁振動の吸音にも絶大な効果があり、所謂フロントライブ&リアデッドが構築される

 しかし過去のライブ&デッドと同じではない、
低音〜超低音域のみ、フロント<ライブ>、リア<デッド>の音場になる。中音域以上はライブ&ライブのままなので、一次反射音が低音楽器の倍音に作用して低音楽器に凛とした輪郭が現れる。

 振動音を吸音すると低音楽器の豊かな響きも吸音されてしまって低音楽器が痩せ細ってしまうのではないか、と危惧したのだが、楽器の音とは無関係なボンツキ音が吸音されることで楽器の形が明確になり、低音楽器はむしろ活きいきと豊かに鳴ってくれます。