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勉強部屋を占拠した6畳間横使いのオーディオルームです。後ろの壁に寄りかかる位置がリスニングポイントで鑑賞姿勢は正座です。 学生さんの勉強部屋として作られた部屋ですから、壁はプラスターボードに壁紙で、叩けばドスンと響きます。その響の長さから、中空構造、或いは断熱材としてグラスウールが軽く入っただけの標準仕様の間仕切り壁であることが分かります。 オーディオルームの壁は重さと強度のある揺れない壁がベストですが、それらが確保できないときは揺れを直ちにストップする仕組みを壁に作り込めばブーミーで退屈な音は回避できます。 たとえばLVパネルやGallery waveパネルの構造を壁に仕込んでしまえば良いのですが、建物の改装にまで踏み込める例は非常に稀なケースです。
本件の無償ルームチューンは、”LV1200sp×2” と ”LV1200ct” が既に設置されており、音楽鑑賞が普通にできるレベルからのスタートです。 オーナーのご不満は @:音の定位が左に偏る。 A:音楽の躍動感が足りない。 B:低音の延びが足りない。 など・・ |
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左にガラスの反射壁があり、直接音と一次反射音の音道の差が50cm程度。時間差に直すと1.47msecです。
<右側には反射壁がなく、ハース効果は現れない>
反射音の質を揃える意味で左にLV600を1枚、右にLVパネルを複数(写真参照)置いてセンターずれはほぼ解消されました。しかし右は通路ですから自立型として普段は片付ける工夫が必要です。
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<@:スピーカーが目の前にあって音楽が鳴っている>と受動的に感じる音楽と、<A:スピーカーが意識から消え、アーティストの感性に引き込まれてしまって、奏者と一体化した躍動感・わくわく感が享受できる>という能動的に感じる音楽の違いが何処から生まれるのだろう? と意識しながら多数のオーデルオシステムを視聴させていただくと、徐々にその姿が見えてきます。 結論として、縦長配置、横長配置、フリースタンディングを試したにもかかわらず、受動的にしか音楽を感じられないオーディオシステムでは、電気系をいかに弄ろうとも能動的に音楽に入り込める状況に変化する可能性は確信を持ってゼロ%と断言できます。
アンサンブルの和音の構造が明瞭で残響音の動きが見えるオーディオシステムはサウンドステージが確立されています。そこに物理特性の向上が加わると、音楽に勢いが増し、演奏家の緊張感や演奏のスリリングさが見えるようになって努力が十分報われます。 しかしサウンドステージ無しでこのカテゴリーをとことん追求すると、和音の中に組み込まれるはずの内声部の音たちが我が物顔にバッフル面にしゃしゃり出てしまい、ソリストやコンダクターの阿吽の呼吸が織り成す間合いの美が掻き消され、曲のテンポが上がったように聴こえる、落ち着きの無いサウンドが出来上がります。クラシック再生では致命的な欠陥です。 サウンドステージの完成度は、 @:ボーカルに、きちんと立ち上がっている立体的な佇まいがあるか。 A:低い位置で演奏する楽器が低く定位しており明瞭な存在感があるか。 の二つでおよそ判定できます。この二つが曖昧であればサウンドステージは完成しておらず、音の解像度の追求=スピーカーやアンプのとっかえひっかえに陥り、散財の原因になります。
そしてこの解像度が確立されたオーディオシステムでは、張り詰めた緊張感の中に間合いの静けさが加わって、曲のテンポが遅くなって聞こえます。クラシック再生では非常に大切な解像度です。
この響きの成分を楽器の実音に重ねて定位させると実音の鮮度が落ちて音楽の躍動感が失われるのですが、響きの成分だけ分離して実音の背後に廻り込ませると、ボーカルや楽器に距離感を伴う陰影がついてきちんと立ち上がっている凛とした佇まいのボーカルが姿を現します。これがサウンドステージです。 LVパネルやSVパネルは、残響音のみ、その表面に引き寄せる構造です。実音を引き寄せる効果を持たないため、実音が前、響きが後ろに廻り込む立体的な音像が姿を現します。佇まいの見えるボーカル、陰影のはっきりした楽器の前後が分かるオーケストラなど、音楽の躍動感に溢れたオーディオシステムが出来上がるのです。 そして嬉しいことに、サウンドステージはミニコンポからハイエンドまで、分け隔てなく恩恵を与えて音楽の解像度をアップします。
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低音の延びや沈み込みの最大量は壁強度と壁重量に比例します。LVパネルの設置は壁重量増に匹敵するので、設置前に比べれば低音の豊かさが改善されたものと思います。 ところで一般的な木造の建物の場合、低音のエネルギーを跳ね返すほどの壁強度は考慮されておらず、むしろ天井や壁が低音のエネルギーで振動し、音エネルギーが熱エネルギーに変換されて沈み込み不足になるケースが大半です。 壁面に重量ブロックを積み上げる、Gallery waveで壁面を覆ってしまう、など低音の沈み込みを深くする手段は複数ありますが、2Fであることとコストパフォーマンスを考えたとき、ルームチューンの写真から背面パネルを省いた程度のLVパネルを設置するあたりが落としどころでしょう。 下記写真はGallery waveで大半の壁面を覆った事例です。壁の作り直しを提案したのですが大工仕事になるためオーディオ販売店の賛同が得られず却下、30枚強設置されていたQRDが下取となってGallery-waveで埋め尽くした部屋です。 ![]() 測定結果にも表れている通リ効果は絶大でしたが、強度と重量のある傾斜固定壁には当然敵いません。2年半後、再度の改装でこのGallery-waveも外され、二つに切断されてオーディオ店のサイトに中古で出ていました。商売上手ですね。
![]() NY住まいが長く、マンハッタンのライブハウスの音を追求して出来上がったサウンドとのことです。躯体がコンクリートのライブハウスの低音を期待するのは無理がありますが、木造の限界点まで使い切った音造りで、とても上品な仕上がりです。 あるブログに下記の記載があることを知人が教えてくれました。 「・・・体型が逆三角形に近いくらい低域の抱擁感を押さえた音。」 このブログの主催者の部屋にお尋ねしたことはありませんが建築途中の写真から躯体構造がわかります。 http://plaza.rakuten.co.jp/afublog/diary/200611100000/ 壁面の床付近がRCの完全反射、上部は木造。オーディオルームの理想形状の一つと言えます。きっとバランスが取れた再生音を奏でているに違いありません。RC部分がリスナーの足元を低音で支えます。この部屋の音に馴染んだオーナーが木造の二階のオーディオルームの音を聞くと低域の抱擁力不足を感じるでしょう。 豊かな低音は豊かな壁質量が支えるのです。 床の荷重強度が許せばフロントの壁面周辺にブロックを積むと効果てきめん、低音域に厚みが増して音楽の土台が安定します。 |