DSP・FIRフィルタによるデジタル・オーディオ機器

 無償ルームチューニング  オーディオルーム実験棟の建設スタート
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右上にロフトがある傾斜天井の6畳間

 勉強部屋を占拠した6畳間横使いのオーディオルームです。後ろの壁に寄りかかる位置がリスニングポイントで鑑賞姿勢は正座です。

 学生さんの勉強部屋として作られた部屋ですから、壁はプラスターボードに壁紙で、叩けばドスンと響きます。その響の長さから、中空構造、或いは断熱材としてグラスウールが軽く入っただけの標準仕様の間仕切り壁であることが分かります。

 オーディオルームの壁は重さと強度のある揺れない壁がベストですが、それらが確保できないときは揺れを直ちにストップする仕組みを壁に作り込めばブーミーで退屈な音は回避できます。

 たとえばLVパネルやGallery waveパネルの構造を壁に仕込んでしまえば良いのです。

 既設のブーミーな部屋(石膏ボードに壁紙仕上げの部屋は概ねこのレベル)をそのままオーディオルームとして使うなら、ミッドバス(125〜250Hz)の振動音を吸音する必要があります。

 軽度のブーミーであれば、右図に示すLV1200パネルの標準配だけでブーミーなかぶり音が減少または消滅して、立体感を伴うサウンドステージが得られます。

 本件の無償ルームチューンは、”LV1200sp×2” と ”LV1200ct” が既に設置されており、普通に音楽鑑賞ができるレベルからのスタートです。

 オーナーのご不満は
@:音の定位が左に偏る。
A:音楽の躍動感が足りない。
B:低音の沈み込みが足りない。

など・・

  
@ : 音の定位が左に偏る

 左にガラスの反射壁があり、直接音と一次反射音の音道の差が50cm程度。時間差に直すと1.47msecです。

仮想の発音ポイント
 実音と鏡面反射音の時間差が2msec以内であるとハース効果が強く現れて仮想の発音ポイントがスピーカーの外側に作られます。

 ガラスにレースのカーテンが下がり、高音域のハース効果は改善されているのですが、定位のズレが気になってしょうがないボーカルの帯域にはあまり効果がありません。

 また音域によってハース効果の量が変化する環境では、楽器の定位がふらふら動きフォーカスの定まらない再生音になります。

吸音では解決しない
 では、ぶ厚いカーテンでミッドバスくらいまでハース効果を殺せば解決か? さにあらずで、ボーカルの自然な佇まいや明瞭な存在感が失われて、改善より改悪が勝ってしまいます。



       右側の直近には反射壁がなく、ハース効果は現れません。
 

ハース効果

 一次反射音のように直接音より遅れて耳に到達する音が、0dBの直接音と同じ大きさに聞こえるために必要な音圧をディレータイムを横軸にグラフ化したものが下記グラフです。

 ディレータイムが20msecであれば、直接音の約10倍のエネルギーを持つ一次反射音と直接音が同じ大きさに聴こえます。2msecでは4倍、1msecでは2倍程度で同じ音量に聞こえます。

 ハース効果の危険ディレータイム領域は
2msec以内です。

 この範囲に反射音の非対称があれば、吸音または拡散反射の処理が必ず必要です。


 反射音の質を揃える意味で左にLV600を1枚、右にLVパネルを複数(写真参照)置いてセンターずれはほぼ解消されました。しかし右は通路ですから自立型として普段は片付ける工夫が必要です。

サイドパネルがステージの幅を広げる
 縦長配置も選択技の一つです。「縦長配置は体験済みで、ステージの幅が狭くなりすぎてボツ」とのことでしたが、左右一次反射付近にサイドパネルを置けば、ステージの幅が広がり体を包み込む低域の包容力もアップします。

1.-spパネルと-ctパネルを置き、バッフルにへばりついている楽器の音を空間に引き離してサウンドステージを作る。

2.サイドパネルでサウンドステージを壁の外側まで広げる。

 LVパネル、SVパネルが作り出す水平拡散反射音は視覚的な壁を取り払う効果が大きく、正面の壁の更に奥・左右の壁の更に外側にサウンドステージを広げることが出来ます。

 サイドパネルの高さは耳より若干低めが良く、正座であればLV600が良いでしょう。

 サイドパネルをSP側にスライドすれば効果が減少し、リスナー側にスライドすれば増加します。好みの広さ、好みの包容力に微調整することができます。
 
A : 音楽の躍動感が足りない

<@:スピーカーが目の前にあって音楽が鳴っている>と受動的に感じる音楽と、<A:スピーカーが意識から消え、アーティストの感性に引き込まれてしまって、奏者と一体化した躍動感・わくわく感が享受できる>という能動的に感じる音楽の違いが何処から生まれるのだろう? と意識しながら多数のオーデルオシステムを視聴させていただくと、徐々にその姿が見えてきます。

 結論として、縦長配置、横長配置、フリースタンディングを試したにもかかわらず、受動的にしか音楽を感じられないオーディオシステムでは、電気系をいかに弄ろうとも能動的に音楽に入り込める状況に変化する可能性は確信を持ってゼロ%と断言できます。

<音の解像度>はオーディオ機器の精度に支配される
 CDの読み取り精度の向上、D/Aコンバータのジッターの減少、アンプの過度レスポンスの向上、等々、オーディオシステムの物理特性に支配される解像度です。

 アンサンブルの和音の構造が明瞭で残響音の動きが見えるオーディオシステムはサウンドステージが確立されています。そこに物理特性の向上が加わると、音楽に勢いが増し、演奏家の緊張感や演奏のスリリングさが見えるようになって努力が十分報われます。

 しかしサウンドステージ無しでこのカテゴリーをとことん追求すると、和音の中に組み込まれるはずの内声部の音たちが我が物顔にバッフル面にしゃしゃり出てしまい、ソリストやコンダクターの阿吽の呼吸が織り成す間合いの美が掻き消され、曲のテンポが上がったように聴こえる落ち着きの無いサウンドが出来上がります。クラシック再生では致命的な欠陥です。

サウンドステージの完成度は、
@:ボーカルにきちんと立ち上がっている立体的な佇まいがあるか。
A:低い位置で演奏する楽器が低く定位しており明瞭な存在感があるか。

の二つでおよそ判定できます。この二つが曖昧であればサウンドステージは完成しておらず、音の解像度の追求=スピーカーやアンプのとっかえひっかえに陥り、散財の原因になります。

<音楽の解像度>はオーディオルームの完成度に支配される
 音楽の解像度が高いシステムではアンサンブルの和音の構造が良く分かります。各パートが立体的に折り重なりつつも分離良く聴こえます。しかし内声部はあくまでも全体の響きの中に溶け込んで、けして目立ちすぎることはありません。人の心を動かす力が漲った解像度です。

 そしてこの解像度が確立されたオーディオシステムでは、張り詰めた緊張感の中に間合いの静けさが加わって、曲のテンポが遅くなって聞こえます。クラシック再生では非常に大切な解像度です。

残響音を分離すると音楽の解像度が上がる
 音楽の解像度を上げる素材はCDなどの音源に含まれる演奏を取り巻くホールやライブハウスの初期反射音や残響音です。センスの良いエンジニアが付加したリバーブ音も同様です。

 この響きの成分を楽器の実音に重ねて定位させると実音の鮮度が落ちて音楽の躍動感が失われるのですが、響きの成分だけ分離して実音の背後に定位させるとボーカルや楽器に距離感を伴う陰影がついてきちんと立ち上がっている佇まいの見えるボーカルが姿を現します。これがサウンドステージです。

 LVパネルやSVパネルは、残響音のみ、その表面に引き寄せる構造です。実音を引き寄せる効果を持たないため、実音と響きが立体的な音像を結んで佇まいの見えるボーカルや陰影のはっきりしたオーケストラが姿を現して音楽の躍動感に溢れたオーディオシステムが出来上がるのです。

 そして嬉しいことに、サウンドステージはミニコンポからハイエンドまで、分け隔てなく恩恵を与えて音楽の解像度をアップします。LVパネル+50万円のスピーカーで、ルームチューン無しの500万円のスピーカーの音楽の解像度を凌駕することだって簡単なことです。

LVパネルで音楽の躍動感を高める方法

 躍動感不足の2大要因はミッドバス過多と、壁面が跳ね返す音の拡散不足です。

ミッドバス帯域(125〜250Hz)の残響(振動)音過多がブーミーの原因
 RC打ちっ放しの部屋では125〜500Hz帯域の残響音過多、プラスター(石膏)ボードの部屋では125〜250Hz帯域の振動音過多の症状が出ることが多く、ブーミーなかぶり音が発生して音楽の躍動感を損ないます。

 躍動感を取り戻すには過剰なミッドバスを元から絶つのが正攻法ですが、壁面を解体する改修工事は中々踏み切れるものではありません。次善の策が過剰分の吸音です。しかしこれも中々難しく、実用的な厚みでミッドバスの吸音が可能なものは、LVパネル、SVパネル、Galleryパネル、ラスク、くらいなものでしょう。

LVパネルの吸音特性(10〜1000Hz) RASKパネルの吸音特性
背後空気層45mmで設置したときの厚さ6mmの鋳鉄ラスクの吸音特性。ラスクの厚さと背後空気層の組み合わせで吸音率の周波数特性を変えられる。

 ぶ厚いグラスウールもミッドバスを吸音しますが、ミッドバスの吸音量に比べ、はるかに多くの中〜高音を吸音するため、相対的にはミッドバスが更に上昇したのと同じになってブーミー感は解消しません。高音域の残響音が失われて音楽の躍動感のみ明確に後退します。

 ボーカルや楽器の立体感・奥行き感・佇まいを形創る中・高音域の間接音が失われた直接音が支配する音場は、ホーンタイプのシステムで特に顕著ですが、音量を上げたならば立体感のない突き刺さるような楽器の音を所在不明なミッドバスが包み込む、五月蠅音であるにもかかわらずブーミー感にどっぷり浸かった典型的なデッドルームサウンドになります。中・高音域の残響音が失われ、ミッドバス以下に残響音が残ってしまった音場の特徴です。

中・高音域の拡散不足が、躍動感・立体感不足の原因
 ステージ上の楽器の前後関係まで分かる佇まいのはっきりしたサウンドステージを再現すれば、音楽の躍動感が確実にアップします。その方法はボーカルや楽器の実音から、残響音の成分を分離抽出して実音の背景に定位させることです。

 LVパネルやSVパネルのような水平拡散体をスピーカーの背後に置くことで得られる効果ですが、実音の定位にはほぼ感知せず、残響音のみを引き寄せる水平拡散音の効果によるものです。

 LVまたはSVパネルのミッドバスを吸音する効果はパネルがスピーカーの影に隠れても有効ですが、サウンドステージを作る水平拡散の効果はパネルがリスナーから見える部分が多くないと発揮されません。大型スピーカーではパネルの設置数を増やすか隙間を大きく取る必要があります。

サウンドステージを体験してみよう
 ブーミーなボンツキ音がない部屋であれば、ホームセンターで売っている風呂場の床に敷く -すのこ- でも拡散音によるサウンドステージの効果を体験することができます。板の幅が広すぎるので丸ノコで縦割りを入れてください。中心を外すのが成功の秘訣。

すのこ画像

 自作LVパネルも表面の凸凹をLVパネルと同形状にすることでサウンドステージを体験することが出来ます。但し、中・高音域の拡散音が効果的に働くには、残響音のミッドバスがフラットまたは若干短縮されていることが必須の要件ですから、LVパネルのミッドバス特性や、ラスクのミッドバス特性(空気層45mm)を参考にしてパネルの構造をカット&トライする必要があります。測定システムが必須です。

 自作パネルの共振周波数が低域にずれれば、低域の沈み込みが減り且つブーミー感が残ります。高域にずれれば音の密度感が薄れ且つブーミー感が残ります。

測定システムが無いとミッドバスの最適化は困難なので、中高音域の拡散とミッドバスの制御を同時に実施するチューニングパネルの自作はお勧めは出来ませんが、自作の注意点のみ述べておきます(LVパネルと同寸法で作る場合の注意点。幅を変えると板厚の最適値が変わります)。

 針葉樹合板は、節の少ないロットの、叩いて硬い音がするものを選んで下さい。LVパネルに比べ軟らかいと共振周波数が低域にずれてしまいます。針葉樹合板、リブ材共に、年輪の詰まったロシア材(寒冷地)の老木が最適です。

 ピンポイント吸音を狙って共振のピークを鋭く(ラスクの空気層90mm)すると、ヒトの生理に不快な圧迫音(逆位相と類似の音)が混ざります。振動のダンプ材が硬すぎると「ミッドバスのボンツキ+不快な圧迫音」というルームアコースティック改悪パネルになります。

 LV構造のパネルに枠を付けてはいけません。パネル設計の根幹ですから理由は開示できませんがが、二種類作って音を聴けば一聴瞭然です。分からないとしたら、判別が不可能なほどひどい部屋、または、ひどい耳と言ってよいでしょう。特に水平拡散型センターパネルに枠は厳禁です。

パネルの高さが躍動感の質を決める

 正座または胡坐(あぐら)の姿勢に最適なスピーカーパネルの高さは1500mmで決定です。1800mmも試したのですが、1200 -> 1500で密度を増した躍動感が -> 1800 では拡散し過ぎて音楽が散漫になることが分かりました。

本件より部屋が広い下記正座の例でも
スピーカーパネルは1500mmがベストであった


スピーカーパネルの最適背丈
 -spパネルの最適背丈は、部屋の広さや天井の高さには影響されず、単にリスナーの耳の高さで決定される。
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正座など椅子なし : 1,500mm
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椅子あり : 1,800mmがベストだが、1,500mmでもそれほど見劣りしない。
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 本件のような小型スピーカーの場合、1,200sp によるチューニングで「十分満足できる音になった」と思うはずです。しかしまだ上限にはとどいておらず、1,500sp & 1,800sp を体験してしまうと通常1,200spには戻れません。

 なお大型スピーカーに1,200spの組み合わせは、SPキャビネットに拡散反射面が隠れてしまい水平拡散の効果が出にくいので1500sp以上の背丈を選んでください。

センターパネルの最適背丈
 -ctパネルはボーカルの口元の高さを決めるため、部屋の広さ・天井の高さ・着座形態とは係わりなく1200〜1300mmが最適値です。
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正座など椅子なし : 1,200mm
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座面の低い椅子あり : 1,200mm
座面の高い椅子あり : 1,300mm
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サイドパネルの最適背丈
 いつから定説になったのか不明ですが、オーディオ雑誌などで必ずと言って良いほど 「吸音せよ」 と書いてあるポイントあたりに置くパネルです。LV,SVパネルの場合、900mmが標準サイズで、若干の増減で音場のスケール感が大きく変化します。

 サイズの増/減と、位置スライドに類似性があり、パネルを手前(リスナー側)に引き寄せればサイズ増の効果、遠避ければ(SP側)サイズ減の効果があるので、窓などがあって設置場所が限られる場合を除き、標準サイズでOKです。
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正座など椅子なしの標準サイズ : 600mm
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椅子ありの標準サイズ : 900mm
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サウンドステージを熟成するGallery basso
 低い位置で演奏する楽器に低い定位と明瞭な存在感を与えます。LV300〜600で代用できますがサウンドステージの高さが若干犠牲になります。

 LV・SVシリーズは物性上飾り枠を付けることができません。視界に最も近いパネルなのでインテリア性にもこだわった作りのGalleryシリーズをお勧めします。

Gallery basso(ギャラリー・バッソ) LV600

 サイドパネルとbasso(バッソ)はスピーカーパネルの特性を引き立てる女房役、-spパネルなしでは効能が生かされません。


B : 低音の沈み込みが足りない

 低音の延びや沈み込みの量は壁強度と壁重量に比例します。LVパネルの設置は壁重量増ですから、設置前に比べれば低音の豊かさが改善されたものと思います。

 ところで一般的な木造の建物の場合、低音のエネルギーを跳ね返すほどの壁強度は確保されておりません。むしろ天井や壁が低音のエネルギーで振動し、音のエネルギーが熱エネルギーに変換されて沈み込み不足になるケースが大半です。

 壁重量が増えれば低音の沈み込みも比例して増えます。Gallery waveで壁面を覆う方法がありますがシステムとのコストバランスが良くありません。床の耐加重が許すようであればLVパネルの裏側などに重量ブロックを積み上げる方法が最善の策でしょう。

 ルームチューンで印象に残ったことなど、各ページに簡単なコメントを付けることにしました。コメントは筆者の印象であり勘違いや間違いが含まれる可能性があります。間違いのご指摘やルームチューンの感想など、ご意見をお寄せください。 mur@salogic.com  村田宛。 本稿の続きに掲載させていただきます。


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