天井、壁の傾斜について

現在、新居を計画中です。

 リスニングルームは定在波、フラッターエコー等を対策する目的で天井全体と左右の壁全体に傾斜を設けようと考えています。設計段階でしかできない事をあらかじめ実施しておき、その後LVパネルで理想の音響特性を作り上げていきたいと考えています。自分にとっての理想の音響特性は、高域はみずみずしく響き、低域はしまりがあって、こもらない感じにしたいです。

 前置きが長くなりましたが、天井や左右の壁に傾斜を設ける上で注意点、アドバイスなどをいただけるとありがたいです。(部屋の寸法は横幅4m、長さ5m、高さ2.6mです)

1.天井の傾斜は、スピーカー側とリスナー側のどちらを高くした傾斜がよいですか。下記の掲示板では、天井全体に5度程度の傾斜をリスナー側が高くなるように施工するのが良いという回答がありましたが、傾斜の方向についてそれぞれどんな特徴になるのでしょうか。

ルームチューンに先立って静岡県のオーディオ仲間が集合し、フラッター対策用のスダレを設置した。フラッターの減少は測定結果に表れるのだろうか?
● 5度程度のかるい傾斜で、のこ歯型であれば傾斜方向による音質差は出ないでしょう、視覚的な好みで傾斜の方向を決めてください。リスナー側UPにして垂直面が見えないようにすると、平面天井のように見えます。片流れであればリスナー側が高くなるように作ってください、音の密度感と開放感が両立します。


2.天井の傾斜は5度もあれば十分ですか。もっと付ける事が可能であれば理想はありますでしょうか。
● 5度はフラッターエコーを避けるための最小値で、5度以下になるとフラッター感が聞こえるようになります。上に部屋がなければ屋根勾配をそのまま使えば密度感と開放感を両立させることができます。


3.左右の壁の傾斜の向きはスピーカ側とリスナー側のどちらが狭まるように設けるのが理想的でしょうか。また、傾斜の角度はどの程度が理想的でしょうか。
あるHPではリスナー側を狭める方が音像が前方に広く展開すると書かれていた様に思います。
● リスナー側が広くなるように計画してください、傾斜角は3度(両側合わせて6度)が最小値です。
● サウンドステージは拡散反射音を増やすと壁を突き抜けてその方向に拡大します。従って使い勝手の悪いリスナー側が狭くなるような設計は無意味です。
● SP両サイドの空間が広く且つデッド気味であると、左右からの初期反射音が不足する可能性が高く、この場合サウンドステージはSPの外側にはひろがらずモノーラル的な音像定位になります。ステージの広さは空間の広さとは無関係です。むしろ左右に大きな空間が無い方が拡散パネルのレイアウトが容易で、任意の大きさのサウンドステージを構築できます。


4.壁の傾斜は既設の壁の上に追加で板を貼ることによって行うようです。追加の板は石膏ボードと、13mm程の合板が選べるようです。合板の方が良いでしょうか。また、もっと厚い方が良いでしょうか。
● 石膏ボードは表面の紙が高音域を吸音します、音楽の躍動感に必須の高音域の残響時間が、理想値の半分程度になります。
● 下地の強度にもよりますが、13mmでは強度不足になると思います。
● 表面硬度が高いほうが高音域の改善になります。合板をお勧めします。


5.既設の壁と追加の壁の間は例えばグラスウールの様な吸音材を挟むべきでしょうか。それとも空気層にすべきでしょうか。
● 必要な機能は板振動の制動で、高密度のグラスウールに圧力をかけて挟み込む必要があります。断熱に使うような軽量のグラスウールでは何の役にも立ちません。

BBSに続きがあります  ・・・ No.452 ・・・



リスニングルームの現状について・・・

 新築したリスニングルームの状態ですが、せっかく村田さんのアドバイスを頂いたものの、当時の予算面、施工工務店がうまく施工できるか心配などで、合板を重ね合わせる事による傾斜を設ける事はできませんでした。そもそもリスニングルームを作るには向いていないハウスメーカを選択してしまったという後悔は大きいです。RCにして傾斜壁にしたかったと今では思います。

 現状、音の方は著しく聞けないというほどではないです。今まで賃貸住宅のリビングの片隅で聞いていたので、専用の静かな部屋ができているだけ大きな進歩です。

 傾斜壁ではないので当たり前ですが、強いフラッターエコーに見舞われています。また、縦横高さの比は高さが足りない為、低在波の状態は良くないと思われ、低音がこもり気味で周波数特性にムラがあります。

 音の解像度が低く、長らく聞いていると疲れる感じがします。強いフラッターエコーが影響しているのでしょうか。試しに、壁に吸音できるカーペットを吊るしてみると、フラッターエコーは軽減されます(手を叩いた時の鳴き竜は減る)。しかし、高音域も吸われてとてもつまらない音楽になってしまい、吸音のみの対策は仮でもできないと感じました。(当たり前ですが)今回、パネルを導入することで改善を図りたいと考えています。



無償ルームチューンを終えて


残響時間の測定値

 横幅4m、長さ5m、高さ2.6m部屋サイズの最適残響時間は0.5secで、1kHz付近の中音域が丁度この値になっています。高音域は4kHz付近が0.6secで理想的な数値です。8kHzが短くなっているのがちょっと残念ですが許容範囲です。125〜250Hzのブーミング帯域の残響時間が長いのが気がかりですが、125Hzの青線と黄色線(マイク位置が異なる)に大きなズレがあることから、ミッドバスにフラッターエコーが集中的に残っていて残響時間が長く見えている可能性大です。ミッドバスのフラッターを消去し、若干吸音すると理想的な残響カーブになります。


 先日測定していただいた残響時間のデータをよく眺めます。残響時間のデータは部屋の周波数特性を密接な関係がありますか?

● 部屋の周波数特性というのは伝送特性(リスニングポイントのマイクに入る平均音圧)のことを指しているのだと思いますが、伝送特性と残響時間の周波数特性に相関はありません。

インパルス応答から算出したチューン前の伝送特性


インパルス応答から算出したチューン後の伝送特性


● ルームアコースティックも加味したオーディオシステムの理想的特性は下記のようになります。
 ・ SPの周波数特性 : フラット
 ・ リスニングポイントの伝送特性 : フラット
 ・ 残響時間の周波数特性 : 100Hz以下の低音域の残響時間が急激に長くなる。ミッドバスの残響時間は短かめ。8kHzに向かって高音域の残響時間が長くなる。

 以上の3要素が整うと、一昔前のオーディオ(音)マニアが志向した平面(左右)方向の解像度とライブらしさ、音楽らしさ、が得られます。

 そして近年の(オーディオ+音楽)マニアの要求である、奥行きと高さを兼ね備えた 三次元の立体的な解像度は、初期反射音を下記のように整えることで実現されます。

・SP周辺と後壁は拡散反射。左右壁面はフラッターレスの平面反射。下記に詳細があります。
http://www.salogic.com/home.files/RoomBuild/RoomBuild2.htm


 クロスが吸音しているため10KHz付近から上の周波数帯で残響時間が短くなっています。この周波数帯の残響時間が短いと音楽のみずみずしさが薄くなってしまうのでしょうか。
● 楽しめるオーディオの要素を作るのが残響時間の周波数特性です。高音域は8kHzに向かって残響時間が若干長くなる特性が好ましく、音楽の躍動感、みずみずしさ、などの要素が充実し、高揚した気分で音楽を楽しむことができます。この要素が少ないと、音楽の楽しさが欠如して、長時間の音楽鑑賞が辛くなります。

 測定結果では5kHzあたりから上の帯域の残響時間が短くなる傾向ですが、必ず直さなければならないほど悪くはありません。むしろ125〜200Hzのミッドバスの残響時間を更に短くする努力をするほうが改善効果が大きく出ます。


 10KHz付近から上も0.5secは欲しい所なのでしょうか。○○さんが作成している石パネルを置くことで高域特性が改善されるのではないかと思い、作成してみようと考えています。
● 中音域に比べて1.2倍程度と考えてください、中音域の平均残響時間が0.5秒なら0.6秒程度です。
● 石パネルの効果は大きいと思います、ぜひチャレンジしてください。石パネルは初期反射音が大きく増加するので置き場所を慎重に探す必要があります。リスナーの後方であれば比較的ラフで良かろうと思いますが、○○さんや石田さん、○○さんの経験が参考になるのでは・・。


 簾の効果に気を良くして天井にも取り付けてみましたが、今度は若干音がきつく感じるようになってしまいました。天井に簾を付ける場合はどのような箇所に付けると効果的でしょうか。
● スダレの向きを90度ひねって縦目にした方がきつさが出ないのでは・・。拡散スカラホールと同じく、頭上から後ろであればプラス面だけ強調されると思います。


 また、スピーカの後面は真ん中に寄せて取り付け、スピーカ背後は平面を残すべきとの情報を元に張り替えようと思います。
● LVパネルが無いところに配置してください。残響時間の測定データには殆ど変化が表れませんが、初期反射音の高音域が増えるので、残響時間の高音域が長くなったのと同様、音楽の躍動感を醸し出す効果があります。





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