平行面のないコンクリート打ちっ放しの地下室の測定データです

 無響室が理想のオーディオルームであるとの思い込みが作り上げた極めて貴重な残響特性を示す部屋のレポートです。そしてそこから得られたデータから、残響音とフラッターエコーの係わり方を推測するに足る極めて貴重なデータが得られていました。

 この部屋の測定当時はその重要性に気付かずに見過ごしていました、ライブに徹した下記の部屋のデータと組み合わせて比較することで、
 残響時間の測定データを眺める限りでは、必ず良い音が出るはず、と思われる特性のオーディオルームの音が期待したほどではない場合があることの解明が出来ました。


LVパネルで拡散反射音を増やしたにも拘らず残響時間が短くなる部屋がある
 LVパネルでチューンをすると、初期反射音の高音域が増えます。にも係わらず高音域の残響時間が短くなる、という不可解な結果が得られることがあります。何故でしょう?・・・ フラッターエコーが大きく係わっているのです。
 
 
チューン前後の残響時間の比較
 
ルームチューン前測定データ
  カーテンを束ねた測定データ  LVデモパネル設置後の測定データ

周波数 16Hz 20Hz 25Hz 31.5Hz 40Hz 50Hz 63Hz 80Hz 100Hz 125Hz 160Hz
チューン前 2.0sec 1.74 1.4 1.1 0.7 0.54 0.5 0.38 0.41 0.39 0.29
カーテン束 - - - 0.78 0.66 0.64 0.53 0.36 0.41 0.4 0.27
チューン後 1.5sec 1.5 1.4 0.8 0.65 0.5 0.43 0.42 0.46 0.4 0.26
周波数 200Hz 250Hz 315Hz 400Hz 500Hz 630Hz 800Hz 1k 1.25k 1.6k 2k
チューン前 0.34sec 0.25 0.2 0.15 0.13 0.11 0.13 0.13 0.11 0.12 0.12
カーテン束 0.29sec 0.21 0.19 0.16 0.16 0.15 0.17 0.16 0.17 0.17 0.17
チューン後 0.25sec 0.25 0.21 0.16 0.17 0.16 0.17 0.17 0.18 0.18 0.18
周波数 2.5k 3.15k 4k 5k 6.3k 8k 10k 12.5k 16k 20k
チューン前 0.12sec 0.11 0.11 0.12 0.11 0.11 0.11 0.11 0.11 0.11  
カーテン束 0.17sec 0.17 0.16 0.16 0.16 0.16 0.16 0.15 0.15 0.15  
チューン後 0.17sec 0.17 0.17 0.18 0.18 0.17 0.17 0.16 0.16 0.15  
注:100Hz以下は目視で残響時間を修正



 ルームチューン前の測定結果は低音域のみ音楽鑑賞系の残響特性を示し、高音域は検聴ルームを通り越して無響室的残響特性となった。

 250Hz以上の帯域の残響時間に比べブーミング帯域(125Hz〜250Hz)の残響時間が長く、再生音はブーミーである。ブーミング帯域の残響時間は中高音域の平均残響時間と同等または若干短くすべきで、短めのとき分離の良い再生音になる。

 左右方向の解像度はデッドに徹しているためブーミーな割りに高いが、正面の壁面からの初期反射音が無いため奥行き方向の解像度は皆無である。奥行き方向のステージ感は正面壁面からの初期反射音が作るもの。

 検聴ルームにしたいのであれば500Hz以下の残響時間を0.12秒程度まで短くすればエネルギーバランスが整ってそれなりに実用になる。しかし0.12秒にするには無響室のような楔形状の吸音体が必要で、非現実的。

 鑑賞ルームにするのであれば500Hz以上の残響時間をブーミング帯域以上として高音域を上昇傾向にすればよい。平行壁面のない室形状であるから、カーテンを総て取り払いStainVeil(ステンベール)パネルを標準配置でセットすれば低音域と高音域が上昇した理想形状の残響特性になるはず。


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