無償ルームチューニング 122

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音がブーミーで音楽が楽しめない

 もともと倉庫であった部屋を改装したオーディオルーム。「音がブーミーで音楽が楽しめない」とのことで、ルームチューンに伺いました。

 壁は薄いベニア合板、フロントに3枚のフラッシュドア、右窓下も全てフラッシュドア、後も3枚のフラッシュドアで、振動するものばかりで構成されています。


 典型的な壁鳴りによるミッドバス過多の症状を呈しており、測定せずとも残響時間の周波数特性が推測できてしまいます(下記グラフの青ライン)。

<グラフ 1>


 柱強度が低かったり、ダンプされていない薄い壁材があると、スピーカーが出す低音で壁が揺れ、振動する壁材が低音を吸音する(グラフb,c)のと同時にミッドバスの輻射音(グラフa)を部屋に撒き散らします。

 残響時間を測定すると上記グラフの青線のような周波数特性を示し、a の帯域(ミッドバス)の響き過多により必ずブーミングが発生します。


ブーミングの真の原因

ブーミングの原因になりそうな物理現象を拾い出すと、下記3種類。

@:床・壁・天井の振動による残響特性の凸
A:位相干渉による伝送特性の凸
B:定在波による伝送特性の凸

伝送特性

ブーミングが<A・B>の伝送特性の乱れにより発生するのであれば、電気系にグラフィック・イコライザを入れ、リスニングポイントの伝送特性をフラットに補正すればブーミングが消えるはず。

しかし、グラフィック・イコライザにより伝送特性が一直線になった、とのブログの記載はよく見かけますが、音楽の躍動感が増した、つまりブーミングが解消した、と言う記載は見かけないのでは・・・。

部屋の横使い

部屋を横使いにすると、リスニングポイントのすぐ後に壁が立ち上がるので、定在波により低音の音圧が上昇する。ブーミングの原因が定在波であれば、ブーミングが発生して音が悪くなるはず。

それなのに横使いの方が音が良いと言われることが多い。理屈に合わないのです。

部屋を横使いにすると低音が豊かになって、むしろ音楽の躍動感が増加する。つまりブーミングが減ったときに起こる変化の傾向を示します。

定在波による低音域の音圧上昇は、音楽再生にとって、むしろプラスの効果をもたらすことが多いのです。

SVパネルがブーミングを解消する

無償ルームチューンの数百のケースによる検証から、ブーミングがある部屋には必ず壁振動があり、振動音の強さに比例してブーミングも強くなる傾向です。

ブーミングの原因は壁振動であろうと推測できます。

その部屋にミッドバスを選択吸音する特性のSVパネルを搬入するとブーミングが解消して音楽の躍動感が増加します。

壁振動がブーミングの原因と断定して良いでしょう。

<SVパネルのミッドバス吸音特性>


<突っ張り棒により天井の振動を小さくするとブーミングも小さくなる>


ブーミング退治

 ブーミング退治には、柱の補強、壁材の補強と振動ダンプが特効薬ですが、壁を剥がす工事に躊躇があれば、SVパネルによるミッドバスの吸音が次善の策です。<グラフ 1>の"a"の部分の比率が1.0以下になる量のパネルをオーディオルームに搬入するとブーミングは消滅します。

 ミッドバスの残響時間が1.0以下になると、存在するが聞こえなかった低音(b)が聞こえるようになり、パネル配置を整えることで部屋中に分散していた低音楽器のフォーカスが本来あるべき位置(通常センター)に収束し、奥行きと広がりのあるサウンドステージが姿を表し、そのステージに楽器やボーカルの凛とした佇まいが浮かぶオーディオシステムが完成します。

 本件は壁振動・フラッシュ扉振動が絡み合った最も難しい部類のルームチューンで、滅多に使わない吸音も組合わせてチューンを行いました。

1.床全面に敷かれていたカーペットのフロント側を撤去(SPとリスナー間のカーペットは百害あって一利なし)。
2.スピーカーの後ろの床面にバスタオルを左右各1枚。
3.スピーカーとGallery-bassoの間にバスタオルを小さく畳んで左右各1枚。
4.床の一次反射ポイント付近に折りたたんだシーツを一枚。

●左のスピーカーパネルは部屋のコーナーに90度より若干開き気味(100〜110度)に設置。右は対称配置(後ろに空間)。

●センターパネルは1200ctを2セット(壁振動が多い部屋では、2セットになることが多い)。Vの数が増えると低音も締まります。

●サイドパネルは左右壁面に900サイズ各1枚が標準ですが、左右の壁が、材質違い・形状違い・振動大なので、片側3枚(1200,900,900)左右計6枚になりました。部屋の非対称を補正したため、サイドパネルの配置も若干左右非対称。

●壁振動が多い部屋やRC打ちっ放しの部屋のとき、リアパネルがフロントに匹敵する効果を現すことが多く、本件でもリアに1200sp x 1、600 x 2 を配置。

●製品パネル納品後に備えて、デモパネルの位置全てに養生テープで印を付けて無償ルームチューン完了です。


RC躯体打ちっ放しの部屋の 残響特性

a.低域上昇ポイント500Hz
 低域の上昇が500Hzから始まり、再生音に厚みが付き過ぎて音楽の躍動感をスポイルする。

b.ミッドバスの残響時間が長過ぎる
 石にぶつかりながら減衰する正真正銘の残響音なので不快な音ではないが、ミッドバスに厚みが付き過ぎてオーディオ的な透明度が低くなる。

c.超低音の残響時間が長過ぎる
 不快と感じる可能性がある耳への圧迫要因だが、中音域の残響時間が長くて音楽の透明度が低ければマスキングされてほぼ無害。

 しかしオーディオ的な透明度を追求してミッドバスの残響時間を最適値に整えると超低音だけ遊離する不快な音になる。


木造躯体に石膏ボード内装の 部屋の残響特性

a.ミッドバスの(残響+振動)時間が長過ぎる
 100Hz以下の低音で揺さぶられた石膏ボードが200Hz前後の震動音を出す。真の残響音ではない振動音でミッドバスがだぶだぶして不快感山盛りのボンツキ音が発生する。所謂ブーミング。

b.低音(60〜80Hz)がタイトにならない
 60〜80Hzの残響音は実在感のある低音に不可欠だが、石膏ボードが振動して力のない低音が増え、低音楽器のヌケが悪くなる。


c.超低音の残響時間が短か過ぎる
 壁質量が低いので40Hz以下の残響音が室外にこぼれてしまう。地を這う超低音を体感しずらい。