奥行きのあるステージを再現し、楽器の佇まいを際立たせるテクニック

1.チューニング編

見覚えがある部屋 ・・・、と思われた方も多いかと思います。オーディオベーシックのマルチフォーカスチューニングで4回連載されたリビング兼用のオーディオルームです。

佇まいが作り出されるメカニズム
このページでは、2ch ステレオ再生で奥行き方向の佇まいが作り出されるメカニズムについて理解していただき、その応用編として自室のオーディオルームに奥行き方向のステージを作り出す方法を解説いたします。

オーディオベーシック
難解な文章になるかも知れません、2002年のオーディオベーシック、マルチフォーカスチューニングも参照していただき、想像力でカバーして3次元定位のオーディオルームを手中に収めてください。

  04年6月27日に初めてお尋ねしました。細かい詮索をしなければ、大きな不満の無い、広々とした音の良いオーディオルームです。オーナーの意向を伺い、更なる音質向上を企てたのですが、ミッドバスのカブリの原因が中々見つけられず、過去最長のチューニングバトルとなりました。ベストの状態まで辿り着くことはできましたが、リビングと兼用のオーディオスペースの制約に阻まれて採用できず、次点の状態がLV600-2set による上記写真のセッティングです。

  アップライトピアノの布製カバーをまくり上げ
2setのLV600ctをフロントに配置しただけというシンプルな構成です、これまた過去最小量のLVパネルによるチューニングで、Pfからの反射音を利用して600mmのパネルだけでチューニングが完成しました。

早速メールを頂きました。

 私も最近は少ないオーディオの知識ながら、徐々に音の変化に対する事が少しは理解できるようになったかと思っておりました。自分の音に対しても良く鳴ってきていることが実感出来る様になってきていると感じていたのですが、それから先、(もう一息)音が良く鳴らないのが、何故か解らないでいました。今回の村田さんの訪問で、今まで考えていたことの半分以上が間違いあるいは理解不足であったことに気が付きました。

 特に、LVパネルを使った音響特性の変化は感激でした。ちょっと無骨な(すみません)パネルだけで立体的な音場が現れる様は見事という他はありませんでした。その音を探し出す課程も、村田さんの執念のようなモノを感じます。初めて来た私の部屋で数時間のうちにあの音が出てきたのにはビックリします。村田さん自身は時間がかかる部屋だと言っていましたし、フリースタンディングにおいたSPの部屋で本格的にやるのは初めてと言っておられましたが、すばらしいセッティングでした。

 ただ残念なことに私のリビング兼オーディオスペースでは、このセッティングが現実的に設置出来ないので、実践して頂いたセッティングを参考にあの立体的な音が、再現できるように もう一度セッティングをやり直しをしてみます。さらには、このセッティングされた状態でのD.Cube2TX の効果は抜群であり、今まで不満と思っていた部分と感じていた、音の潤いと厚み、深みが表現されて、いつまでも聴いていたくなる音が出てきました。以前試したときの
(昨年デモ機をお貸しした)、D.Cube2との繋がりの違和感も全く感じませんでした。

 特に家内の好きなケニーGのモーメントは、家内曰く「涙が出るほど感激的な音」だそうです。器械をポンと入れれば終わりではなく現状の器械でどこまで音が良くできるかがD.Cubeを導入するときの鍵であることが十分理解できました。現状の音を早く良くしてD.Cube2を導入する音にしたいと思います。

ケニーGのモーメントの試聴は床のカーペットを手前に30cm程度たたみ、SP手前の床面をフローリングにして聴いていただきました。

確かにデモ用のパネルは無骨ですね、傷だらけだし、端材で作ったものですからリブの色がバラバラです。商品はずっと品良く仕上がっていますから、ご安心ください。

今後商品と同じ仕上のパネルも持参することにいたします。ご指摘有り難うございます。確か下の写真の川崎さんのHPにも同じ事が書かれていたかと思います。


オーディオルームの完成度を確認する

フラッターエコー
  フラッターエコーは完成度の大敵です、まず最初にハンドクラップで確認し、ビーン、パラパラなどの症状があればバスタオル、Tシャツなどで仮止めをしておきます。上下であれば玄関マット、座布団、吸音スカラホールなどが有効です。エコーを感じるポイントで、耳を左右、前後、上下に向けたとき、響きが最も大きい方向が原因壁です。
  フラッターの有無は残響特性のディケーグラフから読み取ることもできます。下記グラフは今井商事(株)のHPにあるSpectraの体験版(30日間有効)によるものです。フラッターがあると250Hzのグラフのようにディケーが途中からなだらかになります。このなだらかな部分が音の鮮度を落とすフラッター成分です。
400Hz、残響時間0.5sec 250Hz、残響時間0.45sec

高音域の残響音
  部屋の響きの完成度を左右するのは低音域と高音域の特性です、中音域はフラッターエコーが無いこと(有れば消去)を確認すればOKです。高音域で大切なのは5kHz〜8kHzの初期反射音と残響音の成分で、無声音の量で判断できます。”さ・し・す・せ・そ”の発音の歯の間を通る息の音が響く部屋は音楽鑑賞に適した弾む音が得られる部屋です。壁紙や壁布でも吸音されてしまう帯域です。

低音域
  D.Cube2は殆ど聞こえない音を再生するサブウーファです。main のシステムのクォリティーが十分に引き出されていて、欠落している超低音が(聞こえていないことが)認識できるシステムであれば、いとも簡単にmainのシステムに馴染んで名脇役の座に収まります。低音域の良し悪しはウーファの特性に依存するのは当然ですが、より大きな影響力を持っているのが部屋の低域特性です。ウーファ直前の音と、リスニングエリアの音を耳で比較して、
@:周波数特性的質感が同じであれば、部屋の低音域の特性はOK、木造のオーディオルームに吸音材を入れる必要性はまずありません、吸音グッズは高音域をより多く吸音するためブーミングは解消されません、音楽の躍動感を減らすのみです。心当たりがあれば吸音系の材料を一旦室外に出して確認する必要があります。
  音楽を楽しむための部屋であれば6〜12畳の最適残響時間は0.4〜0.6秒程度です。6畳で0.6秒あってもまったく問題ありません。ところが木造のリスニングルームにソファーなど、多少の家具が入ったとき、残響時間は0.2〜0.3秒になります。部屋が完成した時点で既に残響過小なのです。そこに吸音系のパネルを配置すると高音域が更に短くなり、低音域の残響音が目立つようになってブーミングと勘違いします。
木造のオーディオ専用ルーム 約16畳の洋室、4.0m×6.5m×2.46m

床:フローリング、壁:壁紙、窓:カーテン
マンション内の専用ルーム(吸音処理+StainVeilパネル) 8畳の洋室
16枚のStainVeilパネルを配置したオーディオ専用ルーム。パネルにより一次反射が増え、音楽に躍動感が蘇ったが残響時間は長くならなかった。広い面積の吸音処理層があると、二次反射以降が吸音されるため、残響時間を回復するのは難かしい。吸音処理はミッドバスまで行き渡っており、初期反射音を増やしただけで理想的なオーディオルームになった。150Hz前後が盛り上がっていなければ、残響時間の長短は初期反射音で補える。

A:リスニングポイントの超低音が増えている場合も、部屋OK。

StainVeilパネルでチューニングした後の残響時間特性。低音域がシエルビングカーブで上昇するようになればとりあえずOK。中高音域の反射面を増やし、残響時間が0.3秒を超えると低音域の上昇ポイントが100Hz以下となり、理想的な特性になる。

B:リスニングポイントのミッドバスが増えているようであれば、部屋NG。
この場合も吸音系の材料を一旦室外に出してください。状況が一変することがあります。
150Hz前後の残響時間(定在波も含む)の盛り上がりは再生音のボンつきの原因になる。スピーカー、アンプ、ケーブルなどのハードウエアにどれだけ投資をしても常に不満が付きまとう音しか得られません。

  音楽の楽の字が欠落し、長時間の鑑賞に絶えられない圧迫感(逆位相感とも言える)を伴う音になりがちです。


@に加えて奥行き方向の解像度が確立できているシステム、つまり 「楽器の佇まいが立体感を伴っている」、「オーケストラがステージの奥行き方向にも並んでいる」 が得られていれば、D.Cube2の設置調整は30分で終了します。臨場感、立体感、楽器の解像度などが更に向上します。

Aの場合はD.Cube2は不要かもしれない、と思えるのですが、やはり実音の(定在波ではない)超低音による、臨場感、立体感、楽器の解像度には敵いません。部屋が作り出した遅れた低音に惑わされるため、D.Cube2の設置調整の時間が長くなることは避けられませんが、仮設のLVパネルで mainスピーカーの解像度をUPしてから調整すると、比較的短時間で調整が完了します。LVパネル無しで奥行き方向の解像度が得られている部屋であれば、調整完了後LVパネルは撤去可能です。撤去によりD.Cube2の設定が変わることはありません。

Bの場合はまず部屋を直してからD.Cube2を設置します。「ミッドバスのカブリをとる」、「ステージの奥行き、楽器の佇まいを再現をする」、の2点を目標に調整を行います。

  本件の低音域はAとBの中間くらいの状態でした、部屋の調整が5〜6時間、D.Cube2TXの設置が30分程度であったと記憶しています。main のシステムのクォリティーを極限まで引き出し、それでも必ず不足する揺らぎのようなホール感を加えることがD.Cube2の存在意義ですから、ご希望があればとことんお手伝いさせていただきます。7月25日前後に再訪問の予定です、初回の調整過程の再現写真なども撮り、オーディオルームのウイークポイントの探し方のコツを公開いたします。

フリースタンディング配置が作り出す音場感 vs LVパネル
  フリースタンディング配置が作り出す奥行きを伴う音場感と同じ効果を、壁置きのスピーカー配置で作り出すのがLVパネルの役目です。従って既にフリースタンディングでチューニングされたシステムをLVパネルでチューニングするのは相当に困難であろう・・・、と思いつつ初めての本格的なトライでした。

  過去に川崎さんのフリースタンディングのセットで、壁置きのスピーカーと同じ考えでLVパネルを設置し試聴した例があります。個々の楽器の解像度と演奏家の熱気が伝わるようになる反面、音場感が減少してしまう経験をしています。


川崎さんのHPの後半も参照してください。



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