5月19日発売 Stereo(音楽の友社)から、ルームチューニングのページのPRです。解説編、測定編の2部構成の中から、解説編の抜粋です。村田が撮影した写真のみで構成しているので、写真なしの部分があります。

■■■ 解説編 ■■■
プラスター(石膏)ボードのオーディオ専用ルーム

  今月ご紹介するオーディオルームはマンションの一室のオーディオルームと共通項が多いプラスター(石膏)ボードで内装した16畳のオーディオ専用ルームです。床はコンクリート下地に木コンパネと防音シートと木フローリング。壁・天井はプラスターボードの表面に壁紙を貼り、裏側にグラスウールと空気層を設けて遮音性能を確保しています

  プラスターボードは遮音が必要なオーディオルームでは定番の壁材です。安価で施工が簡単で遮音性が高いのがメリットですが、施工に手抜かりがあると完成後にチューニングパネルによる音響調整が必ず必要になります。下地の間柱や桟木の配置を十分密に(300mm以下)且つランダムに配置しないと、ブーミーな響きがまとわり付く覇気の失せた躍動感の乏しい再生音になります。


図1、床の遮音構造

図2、天井の遮音構造


図3、壁面の遮音構造


オーナーの悩み
  防音工事だけで音響工事をしなかったためJBL-K2の高域の抜けが悪くまた低音はボンツクという最悪の状態が発生。これに対し各社のパネルを使用し、色々なセッティングを試みたが高域の抜けの悪さはかなり改善するものの低音は殆どかわらない。またコンサートホールで聞くような上下左右から音が降ってくる感じも少ない。


  プラスターボードの部屋はブーミーなミッドバスが充満し低解像度の音場になるケースが多いのですが、今回の症状は、楽曲全体を包み込むはずの超低音のゆらぎ(ホール録音のオーケストラ)が欠落し、ミッドバス(100200Hz)がボンつくケースです。

  原因はプラスターボードを支える桟木の配置が均一であるためで(特段の注文を付けなければ必ず均一になる)、部屋中が同じ周波数で共振し、ゆったりした低音が熱に変換され、JBL-K2の再生帯域の下限周波数付近が不足しているためです。部屋の中のどの位置でも同じように低音が不足しているので、ボードの影響であることが分かります。またプラスターボードの壁振動はミッドバスを再放射するので、ボンツキの症状も出ています。


ルームチューニングの途中経過とオーナーコメント(残響時間データあり、写真省略)

1 センターパネル+スカラホール

少しモノーラルっぽい感じで左右、上下への広がり感あまりなし。



2.  スピーカーパネル追加

広がり感がプラスされるが上下への広がりは殆ど変わらず。


3.リスニングポイント後方にスピーカーパネルを追加。

音の広がりがさらに広がる感じでとてもよい。パネルを高くすると天井の高さも感じられるようになる。



4 前方スピーカーパネルの両サイドを高くする。

上から音が降ってくる感じがかなりプラスされ、ほぼ満足のいくものとなった。


5 リスニングポイントのほぼ横にやや低めのパネルを追加

音が前方に出てくる感じが再現され音場の広がりも更にプラスされる。なぜか低音の響きもよくなる。


仮設パネルによる調整完了後の伝送特性

F特の40Hzにディップがある。40Hzの2分の1波長は4.25mで部屋の横幅に近い(部屋幅の4mは42.5Hz相当)。



低域は10Hzで-15dB程度。SW2000Dを増設したときの変化を確認し報告したかったが、時間の都合で実施できなかった。



完成後のオーディオルームと調整の詳細

仮設パネル設置による測定の結果を踏まえて、後日完成したオーディオルーム。

図4、家具・機器・チューニングパネルの平面配置図

フロントのStainVeilパネルは、センターが1500、外側に向かって600, 1500, 1800, 1800, 2000の順序。左側ソファーの後ろはLV1300が4枚。背後はStainVeil1800が2枚。


フロントのStainVeilパネル(600mmはLV)。天井は吸音スカラホール。


■ JBL-K2を囲む StainVeil-1500, 1800, 1800, 2000スピーカーパネルの置き方と微調整の方法

 JBL-K2のようなホーン構造のスピーカーすべてに当てはまることですが、左右方向の分解能に比べ奥行きの分解能がドーム構造に比べ不足する傾向があります。理由は高音域の指向範囲がドームに比べ狭く、初期反射音のエネルギーが小さいためです。

 360°指向性のスピーカーはステージの奥行きの表現が得意です。前後左右全ての方向に同じ音を送り出すので、質の良い(周波数特性が良い)初期反射音があらゆる方向からリスナーに届くからです。

 ホーンスピーカーの左右方向の分解能に、360°指向スピーカーの奥行きの表現力をプラスするのがStainVeilスピーカーパネルの役割です。

 スピーカーの左右に均等にはみ出し、上にも100mm程度以上パネル面が見える配置が基本的セッティングです。更に背を高くすると余韻が上方向に分離するようになり、天井の高いホールのような空間が表現されます。壁振動によるミッドバスの膨らみが顕著であれば、本件のようにパネルでスピーカーを囲い込み、壁に向う低音エネルギーを遮断します。

 K2に無指向性の特性が加わるとスウィートスポットのエリアが拡大し部屋の隅で聞いでもボーカルはセンターに定位します。聴く位置にかかわらずステレオ定位が崩れないようになればスピーカーパネルの配置完了です。

■ 正面センターのStainVeil1800センターパネルの置き方と微調整の方法

 スピーカーパネルが中高音域を拡散反射するためスピーカー周辺の音圧が上がります。相対的に低下したセンターの音圧を上げるのがセンターパネルの役目です。センターを山形に迫り出す置き方にするとピンポイントのセンター定位が得られます。その角度を微調整するとボーカルの口元の表情に変化を与えることができるため、クラシック主体の鑑賞では開き目の配置が好まれ、タイトな口元が気持ちよいロック系主体の再生では、とんがり目が好まれる傾向にあります。


■ センターパネルとスピーカーパネルの間のLV600パネルの置き方と微調整の方法

 
センターパネルとスピーカーパネルの間に平らな壁面を残すとステレオ定位の分解能が向上します。必要十分な分解能が得られると、分離の悪さが多少残っても良いからコンサートホールの緊張感が欲しい・・と思うようになります。コンサートホールで感じる圧迫感に似た体を包み込む低音感です。その量をコントロールするのが背の低いLV600パネルです。一部をセンターまたはスピーカーパネルの後ろに隠すことで反射面の大きさを可変し、解像度と低音の量のバランスを微調整します。左右の壁面にLV600を置くと低音が更に増加します。



■ 天井の吸音スカラホールの取り付け方と微調整の方法

 スピーカーの手前直前の床面に物を置くことはまずありません。従って上下方向のフラッターエコーの発生率が最も高いエリアです。このエリアにフラッターエコーがあると楽器の鮮度が極端に低下します。空気を十分に含ませたスカラホールにより広い帯域のフラッターエコーが減少します。左右対称をメジャーで確認して取り付ける必要があります。少しでも非対称になると音場が捻れてしまいます。


■ 左側にLV1300パネルを置く意味と調整の方法

 右側にオーディオ機器、左側にソファーが配置されています。反射音の周波数バランスを整えるために配置しました。LVパネルの反射音は存在感が強いので、1〜2枚の可動パネルがあればアンバランスの調整できます。前後に移動し聴感で最適位置を割り出します。

左側面のLV1300パネル


右側面のオーディオ機器



■ 背後にStainVeil1800パネルを置く意味と調整の方法

スピーカーの背後にStainVeilパネルを置くと奥行きのあるコンサートホールのステージが再現されます。その演奏のステージを丸ごと手前に引き出すのが背面のStainVeilパネルです。ラフに置くだけで演奏のステージを手前に引き出す働きをします。全面を埋めるほど置いても弊害が出ることはありません。

後方のStainVeilパネル



解説編終了。
6月号のハイライトは測定編です。ぜひStero誌をご覧ください。




 

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