RC(コンクリート)構造のオーディオルーム
<フロント側壁面の解析>
フロント以外は別ページ(制作中)で扱います。

既設のオーディオルームのチューニング法について、理論的な根拠を解き明かすためのページです。新設に必要な”遮音と低音の吸音層”については触れておりません、別ページ(制作中)をご参照ください。

人の聴覚は”音の周波数特性””音の位相”を聴き分けることができます。ルームチューニングとは、部屋に起因する、この二つの要素を適正値に整えることで、アンプやスピーカーが素のままの特性を発揮できる環境を作ることです。

伝送特性と残響特性の両面を検証して、既存の居間あるいはオーディオルームのチューニング法を解き明かす試みです。文章で表現するのが難しい時間の領域が含まれますので、不明な点はBBSメールなどでご質問をお寄せ下さい。難解な部分は後日全面書き直しをすることもございます。繰り返しご覧下さい。


鏡像法により、フロント側壁面の初期反射音を検証する。
(鏡像法は Stereo Sound No.146 のP232 に分かり易い記載があります
鏡像法による反射音ルート作画
直接音と水平方向の一次反射音だけを示す図です。壁の材質がコテ仕上げのRC(コンクリ)で、完全反射と仮定すると、リスナーの耳に届く音は、壁面を取り去り、8本のスピーカーを同時に同じパワーでドライブしたものと等価になります。

正面を向いているスピーカーが2本、背中向き4本、横向き2本の合成音ですから、無指向性と考えられる低音域は 6db程度上昇します。中音域は半分の2〜4dB上昇、高音域は1〜2dBの上昇です。スピーカーメーカーのスペックシートの無響室特性に比べれば、低音域過多の音質になります。

壁面を完全吸音とし、虚像を全て消すことができればスペックシートの音が耳に届くのですが、実現不可能なことは明らかです。従って低音を吸音し、高音を反射するチューニングアイテムが必要不可欠との結論になります。



●RC剥き出しのフロント壁面は完全反射(全帯域を100%反射)だが、スピーカーに指向性がある。低音のユニットは表向き・裏向きにかかわらず同じ音圧をリスナー側に跳ね返すが、高音域になるほどスピーカーの指向性により反射音の音圧が下がる。

低音域の初期反射音 中音域の初期反射音 高音域の初期反射音
SPの低音域の指向角はほぼ360°従って低音域はスピーカー4本の加算音圧で +6dB程度となる。この上昇をブーミングと勘違いして、吸音材などを配置すると逆効果。 SPの中音域の指向角は高低のほぼ中間。従って中音域は +4〜+2dB程度となる。 SPの高音域は指向角が狭く、反射音に含まれる高音域は極僅か、従って高音域は +2〜+1dB程度となる。
直接音と反射音の合成音である
耳に到達する楽器音の周波数特性
聴覚が感じるSPの周波数特性は、@直接音、A初期反射音、を加算し、B残響音の音色を少し加えたものです。
RC打ちっ放しの部屋の@、A、Bの特性は、

● 直接音 : フラット
● 初期反射音 : 中音域以下が大きく上昇
● 残響音 : 低域が少し上昇

となります。
従ってRC打ちっ放しの部屋で、楽器の音が低音域過多になる原因は、初期反射音によるものであることがわかります。




●RC剥き出しのフロント壁面を、吸音系のグッズでチューニングすると、一次反射音による低域上昇傾向は変わらない。高音域は反射音が減り音圧が更に下がる。


低音域の初期反射音 中音域の初期反射音 高音域の初期反射音
吸音系のソフトなパネルは低音の吸音力がない。従って低音域は +6dBとなる。この上昇分をブーミングと勘違いする事が多い パネルにより吸音され、RC壁より更にレベルが下がる。従って中音域は +1〜+2dBとなる パネルにより、殆ど吸音される。従って高音域は +0〜+1dB となる。
直接音と反射音の合成音である
耳に到達する楽器の音の周波数特性
聴覚が感じるSPの周波数特性は、@直接音、A初期反射音、B残響音の複合されたものです。RC打ちっ放しの前方壁面を吸音系のパネルで調音すると。

● 直接音 : フラット
● 初期反射音 : 低域のみが大きく上昇
● 残響音 : 低域が少し上昇

となり、RC打ちっ放しの正面壁面を吸音系のグッズで整音すると、中高音域の音圧が下がり、低音域の上昇傾向はパネル無しよりも悪化したように聞こえる。

100〜200Hzが聴覚に最もブーミーさを感じさせる音域。100Hzまで吸音するパネルであれば、ブーミーな部分が吸音され、楽器の音がクリアになったと感じる可能性がある。しかし高音域の反射音が無いため、楽器の佇まいは表現できず、平面的な分離が確保されるに留まる。



●RC剥き出しのフロント壁面を、反射系のグッズでチューニングすると、初期反射音のエネルギーバランスは平坦化の方向に向かう。


低音域の初期反射音 中音域の初期反射音 高音域の初期反射音
反射系のパネルは木質が使われることが多い、木は低音から高音まで均等に吸音する性質を持つので、RCの低音上昇カーブをやや平坦にした特性になる。
直接音と反射音の合成音である
耳に到達する楽器の音の周波数特性
聴覚が感じるSPの周波数特性は、@直接音、A初期反射音、B残響音の複合されたものです。RC打ちっ放しの前方壁面をF特がフラットな反射系のパネルで調音すると。

● 直接音 : フラット
● 初期反射音 : RCの特性をやや平坦化した低域上昇
● 残響音 : 低域が少し上昇

となり、改善の方向に向かう、しかし高音域の反射エネルギーが増えるわけではなく、根本的な解決にはならない。



●RC剥き出しのフロント壁面を、低音域吸音・高音域拡散反射のLVパネルでチューニングすると、高音域の増加が初期反射音の周波数バランスを改善する。

低音域の初期反射音 中音域の初期反射音 高音域の初期反射音
LVパネルは低音域を吸音するので低域の上昇が軽減される。しかしRCの壁面による低域上昇の全てを吸音することはできない。低音の吸音パネルを設け(別項で扱います)LVパネルと併用するか、LVパネルを2重に配置する。 拡散パネルなので、中音域以上では鏡像法に従う明確な虚像は発生しない。パネルの配置(左右への張出し量)と角度の調整により、実音と虚像を直線上に重ね合わせることができる。前後方向の明確な佇まいと、ピンポイントの定位が得られる。 パネル表面の凸凹により、高音域の有効拡散面積が60%増加。実音と虚像を直線上に重ねる効果に加え、高音域の反射エネルギーが増加することにより、楽器の音に生の躍動感が加わる。
直接音と反射音の合成音である
耳に到達する楽器の音の周波数特性
聴覚が感じるSPの周波数特性は、@直接音、A初期反射音、B残響音の複合されたものです。RC打ちっ放しの前方壁面を低音域吸音、高音域拡散のLVパネルで調音すると。

● 直接音 : フラット
● 初期反射音 : 軽減された低域上昇、高音域上昇
● 残響音 : 低域が少し上昇

LVパネルは木造の部屋を想定し、低域の吸音量、高域の拡散反射量が決定されています。従ってRCの部屋では低域の吸音力が不足し、低域上昇を全て押さえきることはできない。LVパネルを2重に配置すると低音の吸音量だけが2倍になります。本が沢山並ぶ扉の無い本棚も低音域吸収、高音域拡散の性質があります。SP周りに置くとLVパネルに似た効果が得られます。お試しください。



●お勧めするチューニング方法
LVパネルを2重にして
低音の吸音力をアップする
広いへやであれば、あまり苦労せずにRCの長所が引き出せるのですが、狭い部屋では、低音域の吸音処理が最優先課題になり、フロントの一次反射音の処理だけでも多数のLVパネルが必要になります。

左の図では、高音域の拡散反射は8枚が有効、低音域の吸音は12枚全てが有効で、低音域の吸音力を強化した配置です。

低音域の余分なエネルギーが吸音されると、中高音の解像度も格段に改善されます。ステージの奥行きが表現できるようになり、Vocalが立体的な佇まいを見せるようになります。その佇まいの精度を更に向上させるのがセンターパネルの反射角の調整です。

・センターパネルの開角の決定法
左のSPの反射音が左のエリア、右のSPの反射音が右のエリアに納まる角度が標準配置で、楽器の解像度と、ステージの奥行きのバランスが整う位置です。楽器の分離が格段に向上するので、クラシックであればホールの余韻の拡散の方向、ポップスであればエンジニアが付加したエコーの種類などが分かるようになります。

パネルの先端付近にVocalが定位するので、最初に好みの前後位置を決め、次に開き角度を調整して解像度と奥行きのバランスを好みに合わせます。


RCの部屋をLVパネルだけで調整するのは経済的ではありません。新築または改築であれば、予め躯体で低音の吸音処理を済ませ、LVパネルは楽器の定位の調整に使うことをお勧めします。躯体による方法は別ページ(制作中)をご参照ください





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