050610

 私と同じD58ESに貴社のD.Cubeを加えたことがある友人に聞き
ましたところ、D58ESは200Hzから補強が必要なのでなかな
か繋がりが難しかったとのことですが、やはりそうなる可能性
高いのでしょうか?


 また、もしそうであるなら何とか繋がるようにカスタマイズし
て頂くことは可能でしょうか?

 導入の可能性があるのはSWとスカラホールです。(専用ルーム
ではないのでパネルはなるべく部屋に置きたくないのですが・・・。)

 RCの部屋でD58ESのルームチューンの例があります、この部屋を調整したときの感触で、中音域が目立つSPとは思いましたが、ミッドバスの補強が必要なシステムと感じた記憶はありません、改めてOZさんの日記から部屋を含めた伝送特性の測定結果を確認して見ると、左のグラフでは ”80〜100Hz” が凹み、”200Hz” も凹んでいますから、このディップは部屋の定在波によるものでしょう。

 StainVeilパネルの設置で上記凹みが解消されているので、定在波によるディップであったことの裏づけがとれました。フォスターのユニットは中音域にハリがあるので、一般のSPならさほど気にならない定在波による低域の凹みをSPの低音域不足と勘違いする可能性がありそうです。

 DSPの係数ファイルのカスタマイズは可能ですが、D58ES以外のところに原因が無いことを確認してからでないと、SPの配置や、家具の配置が変わっただけで再カスタマイズが必要になってしまいます。

 F特(L.P.)はどうなったか?

       導入前            パネル導入後       パネル導入後 (SWオン)

 記録として撮ってみた。F特に変化はないだろうと予想していたので結果に驚いた。80〜100Hzのディップが見事に埋まり、中高域もフラットに近づく。1KHz前後の山は208ESの癖。普通のスペアナだと縦軸がもっと圧縮されるので、ほぼフラットに見えるはず。D-58ES単体としては文句なし。31.5Hzからフラットに出ているが聴感上では超低音は聴こえない。そこでSWを加えてみる。鼓膜を押すような空気感、ホール感が再現される。F特はブースト気味だが、村田さんによるとこのくらいの方が良いとの事。


050613
 ちなみに私の部屋は(W)3.2×(L)6.9×(H)2.83m RC構造(壁、天井打ちっ放し)床は土間床構造(コンクリートに無垢桜材のフローリング直張り)で、リスニングポイントより後方の左側壁に3×0.6×2.8mのクローゼット(シナ合板太鼓張り)があります。

 窓はリスニングポイントやや後方と3m後方に40×80cm程度のものが二つあります。また出入り口ドア (シナ合板フラッシュで内部に吸音材含)は左SPのやや前方リスニングポイント付近の位置と後方にあります。

 RC打ちっ放しのオーディオルームは響きが強すぎて心地よく聴ける音楽に制限が付いてしまいます、しかし少し家具が入り幾つかの条件が重なると素晴らしいオーディオルームになる可能性を秘めています。

 故意にその条件を作り出すのがルームチューンですが、「パネルはなるべく部屋に置きたくないのですが・・・」 とのご依頼ですから、工務店が非力で、たまたま壁が傾いているなどの好条件?に恵まれなければ手の打ちようがありません。

> ところでオーディオルームの何を確認したいのですか?
 
現在の低音の状況を「プロの耳」でご判断頂きたいということ
と、SW追加で改善するかどうか(うまく繋がるのかどうか)ということを主にご検討頂きたく存じます。加えまして部屋のフラッターエコー・低音の定在波が一体どういう状態なのかもご診断頂きたく存じます。


050702、D.Cube2TXのデモに伺いました
 手の打ちようがないかも ・・・ と思いつつ、お訪ねしました。
フリースタンディングとコーナー配置をミックスした音で、フリースタンディングの特徴である奥行きの豊かさを備え、RCの特徴である高い天井を想わせるサウンドでした。特にオルガンやバロック音楽が素晴らしい。しかしテンポの速い曲は苦手です。

 リスニングポイントには”×印”があり、×より前の音は普通のコーナー配置に近い平面的な音。×印は立体感を伴うスケールの大きな音、クリアで豊かな響きに包まれています。×より後ろは立体感が急激に萎み音が遠くなります。

 ×印のポイントでステージの視界が開ける理由は、低音域の位相干渉にあります。壁振動が無い(または少ない)部屋であれば、聴覚を頼りにSPの配置を変えることで運が良ければ見つけることができます(オーディオラックなど、背の高い音の障害物はフロントからどける)。反射音を増大させるLVパネルはその運の確立を100%にUPするためのものです。


ルームチューンの手がかり
 ルームチューンの最初の手がかりは会話の響きとその音質です。この部屋はかなりライブですが会話に支障をきたすミッドバスの響き(150〜200Hz)はありません、しかしそのすぐ下あたりに残響音のカブリがあります(100〜125Hzと思われる)。

伝送特性と残響時間を測定
 最初に聴感でルームチューンを実施し、チューンが完成してから測定がいつもの手順ですが、今回はいきなり測定に取り掛かりました。リスニングポジションと、1.5m後ろの位置の伝送特性を下記に示します。さすが耳で選んだリスニングポイントは伝送特性も優れています。

伝送特性
D58ESの低域再生限界は60Hz。D.CubeのPassbandは56Hzまたは59Hzでしょう。
リスニングポジション


リスニングポジションの1.5m後ろ

残響時間特性
50Hz未満はSPの再生帯域外。
衣類などの入った大きなクロゼットにより低音域が吸音されているようである。125HzはRCの残響音またはクロゼットやドアなどの板振動による輻射音と思われる。残響の実測データ
<表1> 残響時間
周波数 31.5 40.0 50.0 63.0 80.0 100 125 160 200 250
チューン前(秒) - - 0.9 0.95 0.9 1.0 1.2 0.57 0.65 0.7
チューン完了(秒) - - - - - - - - - -

周波数 315 400 500 630 800 1000 1250 1600 2000 2500
チューン前(秒) 0.57 0.6 0.75 0.7 0.66 0.65 0.7 0.68 0.65 0.7
チューン完了(秒) - - - - - - - - - -

周波数 3150 4000 5000 6300 8000 10k 12.5k 16k 20k  
チューン前(秒) 0.7 0.7 0.65 0.57 0.52 0.45 0.36 0.28 0.25  
チューン完了(秒) - - - - - - - - -  

 部屋の広さが13.4畳で室容積は 62.48立法メータ.。最適残響時間は0.52秒程度です。

 会話の響きとその音質から100〜125Hzに残響のピークあり、と予測したが、正にその通りであった。ルームチューンが必要と思われる特性です。

 LVパネルで吸音すると200Hz前後が凹むと思われるが、直接音の伝送特性が良好であれば、ミッドバスの多少の凹みは無視して差し支えない、むしろ解像度アップの効果が期待できます。

 125Hzのピークだけを押さえる目的で気柱共鳴器のようなQの高い吸音体を導入するのは逆効果。逆位相感の強い不快な音になります。

ミッドバスに残響音の塊があるとD.Cubeの超低音がマスクされてしまうことがある、デモに先立ってLVパネルで残響時間を整えることになりました。

できればパネルを置きたくない、とのことですから、低いパネルと桟木を組み合わせたところ下記のようになりました。




050702
本日は朝早くから遅くまで誠にありがとうございました。

実例を挙げたいろいろなお話、非常に勉強になりとても有意義
な一日を過ごさせて頂きました。
また、ほとんど諦めかけていた低音についても希望がもてるよ
うになりました。導入が非常に楽しみです。

D-CUBEに引き続きパネル導入の際にはまたよろしくお願い致し
ます。


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