部屋の固有波長の振動モード(定在波)は部屋の3辺の長さ(L,W,H)により一義的に決まるもので、1次(半波長モード)と2次(全波長モード)の振動モードの組み合わせを表にすると右のようになる。周波数は本件の値。
右の表の白く空いた升は斜め天井により定在波の発生が抑えられた振動モードのポイント。天井を斜めにするだけで総計’26ポイント’であった定在波のモードが’8ポイント’に激減する。
斜めの天井により白枠に相当する共振周波数が幅広い帯域に分散される。’8ポイント’の定在波の間の周波数帯が適度に埋まり、定在波が目立たなくなる。
更にLVパネルにより前後の平行壁または等距離の壁が消滅(100%ではないが100%と仮定すると)すれば
”表1” のように定在波の周波数は僅か’2ポイント’になる。壁や天井を斜めにすることがオーディオルームの設計にとって如何に重要であるか、お分かり頂けるものと思います。
■右の表は
L = 6.5m、 W = 3.2m、 H = --
による計算結果
■既存のオーディオルームのチューニングに関する限り、定在波による伝送特性の乱れを気に掛けても仕方が無い。リスニングポジションを多少前後すれば良いし、SPの位置を前後しても良い。LVやStainVeilパネルの設置によって、リスニングポジションの伝送特性をそこそこフラットに追い込むことも出来る。
■新設や改装であれば是非とも天井を斜めにして下さい、リスナーの側を高くした本件のタイプの天井が音が良い。
既設の住宅でも木造の在来工法の部屋であれば天井裏にスペースがあり改装が可能である。
6畳

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振動
モード |
周波数
Hz |
1,0,0 |
26.2 |
1,1,0 |
59.2 |
1,0,1 |
|
0,1,0 |
53.1 |
0,1,1 |
|
0,0,1 |
|
1,1,1 |
|
2,0,0 |
52.3 |
2,1,0 |
74.6 |
2,0,1 |
|
2,1,1 |
|
0,2,0 |
106 |
1,2,0 |
109 |
0,2,1 |
|
1,2,1, |
|
0,0,2 |
|
1,0,2 |
|
0,1,2 |
|
1,1,2 |
|
2,2,0 |
118 |
2,2,1 |
|
2,0,2 |
|
2,1,2 |
|
0,2,2 |
|
1,2,2 |
|
2,2,2 |
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■定在波の周波数を計算

■nx,ny,nzには左の表の振動モードの数字を当てはめる |
fxyz:基準振動数 |
L:長手方向の寸法(m) |
C:音速(常温で340m/s) |
W:幅方向の寸法(m) |
|
H:高さ方向の寸法(m) |
テクニクスのページから借用しました。
=表1=
振動モード |
定在波の周波数 |
0, 1, 0 |
53.1Hz |
0, 2, 0 |
106Hz |
斜め天井に加え、フロントにLVパネルを置くと’26ポイント’あった定在波の周波数が’2’に激減する。
定在波の振動モードの3つの数字(0〜2)のうち二つの数字が’0’であるような共鳴を軸波(axial
wave)、一つだけが’0’である共鳴を接線波(tangential wave)、いずれもが’0’でない共鳴を斜め波(oblique
wave)という。軸波は相対する2面だけが関与する一次元の共鳴であり、接線波は二次元、斜め波は三次元の共鳴である。この三種類の共鳴の中で軸波が最もエネルギー密度が高く、減衰にも時間がかかる。
グレーの表から軸波をピックアップすると、
No. |
振動モード |
定在波の周波数 |
1 |
1,0,0 |
26.2Hz |
2 |
0,1,0 |
53.1Hz |
3 |
2,0,0 |
52.3Hz |
4 |
0,2,0 |
106Hz |
部屋の寸法が、縦:6.5m、横:3.2m とほぼ倍数の関係にあるのでNo.2 と No.3
の定在波周波数の値が近似している、エネルギーが大きい軸波の重なりはブーミングの原因となるので、新築であれば避けるに越したことはない。
推奨されているオーディオルームの寸法比
石井 |
1:0.83:0.7
(1:1.186:1.428) |
石井 |
1:0.845:0.725
(1:1.166:1.379) |
ASHRAE |
1:1.17:1.47 |
ASHRAE |
1:1.45:2.10 |
BOLT |
1:1.28:1.54 |
IAC |
1:1.25:1.60 |
SEPMEYER |
1:1.14:1.39 |
 |
1:1.26:1.41 |
参考文献:
テクニクス/石井伸一郎
SOUND SYSTEM ENGINEERING/Don and Carolyn Davis
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