長岡式バックロード”D-58ES”システムのチューニング
15畳リビングをオーディオルームに兼用しており、左右の条件が異なるのが悩みです。
 マンションの二階で、写真のようなリビングを使用しており、スピーカーの背後にはキッチンがあります。左右のスピーカーの間にはスーパーウーハーが設置してありますが、現在は使用しておりません。

視覚的に左右が対称である必要はない

 左の壁はRC打ちっ放しの躯体、右側は木質の変形内装壁である。視覚的に左右が対称である必要はないが、初期反射音のエネルギーバランスが左右非対称であると、奥行き方向の立体感を出すときに苦労する。

 視覚的に左右が非対称な部屋では、視覚から受ける先入観を捨てて、耳だけで左右からの反射音の量を確認する。この部屋も ”RCの方が反射音の量が多いであろう” との先入観を捨てて試聴すると、反射音が右側に偏っていることに気付く。

 RCのような硬い壁は反射音が多いに決まっていると思うのは間違いで、RCの壁から聴覚が感じる反射音の量は予想よりずっと少ないことが多い。

RCと木、どちらが反射音が多い?

RCで得られる反射音は入射角と反射角が一致する一点からの反射音のみ。

拡散壁であれば、壁全体から反射音が届く。

鏡のような硬い壁のRCに比べ、年輪の凸凹が拡散面になり、板振動の輻射音も加わる木壁の方が、聴覚が感じる間接音の量が多いのが普通である。
反射音のバランスを整える

左側RC壁面にLVパネルを置き、前後に移動して左右からの反射音が均衡する場所をさがす。

Vocalがセンターからずれる。心持ち音圧が片側に寄っている。などの症状がある場合、まず最初に実施しなければならない作業。

●左右壁面の一次反射音を目立たなくする目的で一次反射のポイントに拡散体を置くと、聴覚が感じる一次反射音はかえって増える。平らな壁面のままの方が一次反射音は目立たない。







仮チューニングでは、600mmのデモパネルを積み重ねオーナーの嗜好を確認する

2004・06・07
 パネルの効果には大変に驚きました。音を出さなくても、静かな図書館や森の中のような気持ちよさで、オーディオ的にも非常に良くなったと感じました。紙のスーパーウーハーの問題点も確認できました。仮チューニングの様子はオーナーのHPから転載させていただきました。原文は日記の6月7,8です。
2004年06月07日
SALoic効果


 機械をとっかえひっかえしてお気に入りで固めた。ケーブルやセッティングも決まった。自分としては、マンションでここまで出れば十分と言うレベルには達したと思う。さらなる飛躍をするにはルームアコースティックに手を入れなければいけない。定評ある音響パネルは使っているが効果がはっきりしない。

 となるとプロに来てもらうしかない。SALogicの村田さんだ。スーパーウーハーでは最高のブランドだが、最近はルームチューニングでも有名。村田さんの凄いところは視野が広いことだ。古典的な音響理論だけでなく、構造物の振動によるロスや放射音まで考えてある。非現実的な提案はいっさいなし、独自の重量パネルで左右差を補正、吸音に頼らずに一次反射音の質を上げるという考え。

 このパネルは本当に重い。片手で持てるような音響パネルは自身が振動して低音を吸音、余計な音を輻射してしまうという。まず、部屋の特性を調べていただく。「音楽鑑賞用にはギリギリのライブだが、フラッターエコーは目立たないのは良い。中音にコモリがある。」との診断。住み慣れてしまうと自分では分からないものだ。

 次いで、スーパーウーハーを含めたシステム
SPD-P1によるサブウーファシステムで現状の音を聴いていただいた。ソフトはもちろん「four play」。「ペーパーコーンのSWはSALogicのチャンデバとは合わない」というお話だったので、酷評を覚悟していたのだが、意外や意外、「この低音、気持ちいいね〜。JBL、いいかも・・・うちでも使ってみようかな〜。」とリズムを取られている。これは出だし快調だ。・・・これは間違いだったが。

 音を聴きながらパネルを増やすと、センターのSWが邪魔になってきたので、左に移動した。59Hz以上を100dB/octでカットしているので、どこに置いても大丈夫な筈なのだが、一発でSWの場所が特定出来てしまう。これはSWから高周波(歪み)が漏れている証。「やっぱりペーパーコーンは駄目ですね。」 トホホ。
  仕方なくリスニングポジションの後方(背後)に移動させたが、真後ろからの音は前から聴こえるという耳の特性があるそうで、確かに問題はない。

 パネルを増やすにつれて、部屋が静かになり、音が聴き取りやすく、音場は部屋やSPを無視して広がって音像の密度が増す。スーと爽やかなのに艶も出ると言う感じ。反射音の影響に驚く。オーディオ機器やケーブルのグレードアップとは違うベクトルの変化ではあるが、変化量としてはフォスのド級ケーブル以上と言える。コンポで言えば、プリとパワーをいっぺんに交換した位は違う。会話が非常に通るようになり、コンクリートマンションから静かな図書館や(大袈裟に言えば)森の中に移動したような気分になる。健康に良さそうだ。

パネルを外すと、オーディオ的人工音に聴こえてしまうから怖い。

2004年06月08日
お話

 村田さんは話を沢山してくれた。ああいうお仕事の方にしては珍しい。お世辞ばかりでもなく、堅物でもない、僕らにも親しみやすいお人柄。評論家や出版社試聴室の話などオフレコと思われる話はさておき、SWのユニットについて企業秘密では?と言うような事まで教えていただいた。SALogicのSWを開発する時にはカーオーディオ用ユニットを端から購入して音と耐入力をチェックするという。小容量の密閉箱に入れるので紙コーンは不可、アルミやケプラーでないと使い物にならないという。僕なんかはSALogicに大型のSWを期待してしまうが、商売にならなければ困るので小型にしているようだ。「本当はSWの箱は大きい方が低音が逃げないから有利です」と言われていた。正直な方である。

他にも・・・

■ 150Hzのコントロールは非常に大切。ここらへんが出過ぎるとブーミーになるし、足りないと痩せてしまう。
■ 高音は7KHzをきちんと(質的にも)出してあげると、色気が出る。
■ お客さんで最も多いのはB&Wのモニターだが、あのSPは使いこなしが超難しい。まともな音で鳴っているのはだいたい10軒に1軒。部屋の環境を相当整えないと位相特性の良さが出ない。
■ 最近のJBLはとても大人しい。滑らかすぎてホーンとは思えないほどだ。
■ 中高音の解像度さえとれていれば超〜重低音はいくら出しても可。聴いて気持ちよければそれでよい。F特なんて関係ない。
■ ソフトには空間情報があらかじめ入っているのだから、部屋は全域デッド、SPはホーン型の方が良いのではないか?と訊くと、
理屈としてはそうだが、リスニングルームをデッドにするとなぜかつまらない音になる。デッドだと耳が演算できないのかもしれない。とにかくライブの方が良い。SPは全指向性がベスト。ただし金がかかるので、パネルでそれに近い効果を出す
(注1)実際にパネルを聴いてしまうと、どのお話にも「なるほど」と頷いてしまう私であった。

  6月6日の仮りチューニングではOZさんの友人も同席された。その顛末がHPに記載されているので拝借させて頂きました。原文は なんでも日記の 6月7日、9日、29日です。

ルームチューン



昨日、OZさんがサーロジックの無償ルームチューンを受けた
SPやアンプが一段落したので
本格的なルームチューンに取り組むみたいだ
僕も今年1月に受けて
いろいろと勉強になったのだが
ルームアコースティックは80%経験の世界
理屈はあっても
現実には経験を積むしかないらしい




早速、LVパネルを運び込む
部屋に入るなり
村田さんは拍手を打って残響をチェックする
割合素直な特性で
ライブネスもちょうど良いという
ただ、声の通りが悪く
音も耳に届きにくいという
これは部屋の形や構造からくるもので
賃貸では変えようもない
この辺はOZさんも以前から気にしていて
LVパネルを使って
一番改善したい部分らしい

まずはそのまま音だし
数曲チェックした後
村田さんはSPの周りに次々とLVパネルを置く
リスニングポジションにもどってチェック
またLVパネルを追加して
チェック
これを数回繰り返して
そこそこのイメージを創るらしい
最初はJBLのH-1500という80Kgもあるサブウーファーを隠すように
高さ1200mmのLVパネルを設置したけど
低域が被るようなので
左サイドにSWを置いたが
コレはダメだった
SPD-P1のクロスを下げても判ってしまう
高調波ひずみが位置を知らせてしまうらしい




今度はセンターに戻して
短めのLVパネルをSWの上に置く
バックの配置も変更しながら
ベストポジションを探る
「これでどうですか?」という言葉が出るまでに
およそ2時間はかかっただろうか?
改めて聴いてみると素晴らしいの一言!
直接音と間接音のバランスが素晴らしく
耳に心地よい
アコースティック対策はクオリティは下げないので
ケーブルやアンプの交換とは根本的に違う
高域に効きそうなLVパネルだが
実は低域に効く度合いが大きいと感じた




微調整は続くが
センターのSWが邪魔になるらしい
そこでリスニングポジションの真後ろに置く
「これはちょっと?」と思ったけど
意外に判らないというか
大成功!
大入力時にコーン紙からでる高調波歪みも聴こえない
人間の耳は真後ろは前と同じ判断(錯覚)をするらしい
これが本日のベストだった
デモパネルだったが
これで専用パネルでの構想が決まったようだ
最後に撤去した時の音は
やはり元に戻ってしまい人の声も聞き取り辛くなる

位相

オーディオでは良く使われる言葉だが
僕には説明できない
先日のOZさん宅のルームチューンで
最終的なセッティングでの試聴は大変心地よいものだった
直接音と間接音のバランスが良く
聴いてて気持ちがいい

再生装置のクオリティをいくら上げても
人間の耳は生と勘違いすることはないと思う
大ホールの演奏録音を一千万のコンポを使い8畳間で再生しても
大ホールだと勘違いはしない
逆に
クオリティが低くても生と勘違いすることがある
たとえばテレビで鳴っているケイタイ電話の呼び出し音などは
時々勘違いする

村田さんはアンプやスピーカー、電線で大騒ぎする前に
部屋を考えたほうが良いと断言する
8畳間に一千万のコンポより
百万円のコンポに一千万の部屋を用意したほうが良いということらしい
現実的に体育館の広さは無意味だが
広いほどアドバンテージは高く
スピーカーを壁に押し付けるより
周りに空間を持たせたほうが直接音と間接音のバランスが良くなる
LVパネルはSP周りに空間を作るのと等価な効果があるらしい

信号の伝送も音波の伝達も
位置(時間)情報の再現が大事なようだ
この辺の研究がもっと進むと生と勘違いする再生音も不可能ではない?


LVパネル

OZさんとこでLVパネルを本格的に導入したらしい
日曜日に連絡があったのだが
僕は寝込んでいて電話も取れなかった
あのパネルの良さは僕も体験済み
というか
OZさんに薦めたくらいだから
想像はつく
下手なコンポの入れ替えより効果がある
クオリティが落ちないという表現が適切だと思うけど
印象はクオリティが上がる感じだ
特に人の声と低域は確実にクオリティが上がる

順序から言えば
コンポの入れ替えよりこちらが先だ
我家の現状では設置する場所さえ確保できない
こうなると地下室だが
いろいろ検討はしているのだが
村田さんからはシンプルな構造をアドバイスされた
しかし
シンプルは難しい
ゼロから作るなら可能だが
現状が解っていると
かえって
シンプルな構造を想像しづらい
やはり広い空間が第一のアドバンテージだと思う
あとは
コストと相談しながら理想と現実をすり合わせていく

面積的に広い空間は確保できるのだが
どこでどう切るのかがむずかしい
狭い空間を広く使うのは
案外簡単だが
広い空間を効率よく使うのはむずかしい
広い土地と充分な資金があっても
最高のマイホームがつくれないのと一緒だ
(ちょっと違う?)
これって
長岡先生も何処かに書いていたっけ?





LV-oilパネルを設置

原文は日記の6月27,29、 7月11,13日です。
2004年06月27日
終了!



 サーロジックのパネルを導入した。ステンレス入りは高価で重いので、一番安いパネル(オイル仕上げ)で揃えた。写真の他に両サイドにも置いてある。総重量150Kg。発砲スチロールとシルクで出来た某パネルは音色が変わる程度で根本的な改善はみられなかった。また、ハイエンドショップご用達の某某パネルはとにかく高価。すぐさま100万、200万コース。600万使ったマニアもいるそうだ。ハイエンドショップの異様な静けさは効果の証であるが、平行面があるため、フラッターは除去しきれないと言う。軽いので低音の吸音効果が大きくマンモスパワーアンプが必要になるというオマケつき。ショップにとっては一石二鳥。

 箱庭での音楽鑑賞では直接音と一次反射音のレベルが圧倒的に大きく、残響音はあまり問題にならないらしい。一次反射音を拡散、ダブついたミッドバスを板振動で吸音させるのがこのパネルだ。その造りと効果を知ってしまうと他のパネルは全く使う気がしなくなる。

 SP裏のパネルは我が家においては左右の条件を揃える役割があり、これは音を聴かずに導入。V字型のセンターパネルは開き方によってセンター定位のフォーカスが変わる。サイドのパネルは音の広がりを出す。有/無で広がり感がまるで異なる。これを体験してしまうとSPのバッフル効果、位相特性・・・云々というのが馬鹿らしく感じてしまうほどだ。

 な〜んだ。音場創成・・・つまりインチキじゃないかと思うのは勝手なのだが、SPのセッティングを試行錯誤している人はこれを絶対に否定できない。SPを動かして音場感と定位を調整するというのは、部屋の反射音とSPの直接音のバランスを調整しているわけで、パネルを動かして調整することと全く同義。レコーディングの現場は無響室ということはなく、リスニングルームはモニタールームの延長に近い方が製作者の意図とする音場、定位が再現できるという理屈らしい。(ダミーヘッド録音であれば、ヘッドフォンで聴くことが前提となるが。)

 村田さんとじっくり音楽を聴きながら調整していったが、最終的には前回よりも更に素晴らしい結果となった。声を出してみても、ライブで通りが良いのに静かという気持ちよさ。コンクリートの箱庭の圧迫感が減少、野外で喋っている感じになる。エアコンの送風の定位が良い! 音楽を聴いても、定位を探す必要がなく、音像の大きさがよく分かる。もちろん定位をぼかしている楽器はそのまま広がって聴こえる。ボーカルとベースがセンターに重なったソフトでも音像の高さと大きさの違いにより分離して聴こえる。音場、定位は僕自身、聴いた中ではBEST 3に入る状態。

 音質はとにかくシャープで艶っぽく、力強い。低音はスピーカーから出ている感じが全くなく、筋肉質。フォスの飛梅ケーブルを聴いた時、コンポに同額払うよりも効果があるのではないかと思ったものだが、我が家においてはパネルのC/Pはそれ以上だと感じた。いつの間にかAUDIO BASIC試聴室にも進出している様子。

2004年06月29日
目で見る違い

F特(L.P.)はどうなったか?


       導入前            パネル導入後       パネル導入後 (SWオン)

 記録として撮ってみた。F特に変化はないだろうと予想していたので結果に驚いた。80〜100Hzのディップが見事に埋まり、中高域もフラットに近づく。1KHz前後の山は208ESの癖。普通のスペアナだと縦軸がもっと圧縮されるので、ほぼフラットに見えるはず。D-58ES単体としては文句なし。31.5Hzからフラットに出ているが聴感上では超低音は聴こえない。そこでSWを加えてみる。鼓膜を押すような空気感、ホール感が再現される。F特はブースト気味だが、村田さんによるとこのくらいの方が良いとの事。

 トンコンやグライコでF特を補正すれば良いのでは? EQの類はFIRでない限り、位相に乱れが生じ、奥行き方向の分解能が駄目になる。FIRも演算速度にまだ問題がある。アコースティックに補正すべし・・・とのお答え。

 最終的に出た音は個人的には文句なし。市販SPと比べてどうですか?と訊ねると、「最近のJBLやB&Wとは違う。そうねえ、TADに近いかな?(誉めているのかどうかは不明)。フォスターは普通、紙臭くなるから・・・なかなかこういう風には鳴らないでしょう。このくらい解像度が高いと気持ちいいですね〜。」ということで終了した。箱庭にTAD(木下モニター)を入れてもこのまとまりを得ることは困難と思われる。このままユニットをTADにしたらTADを超えちゃう??

  遊びで、49800円のアンプに変えてみたのですが、「楽しさ」という点ではパネル導入以前の200万のアンプよりも良いくらいで驚いています。このパネル、底上げ効果が凄いですね!今になって驚きました。

  センター定位が前に出るのが好きではないので、センターパネルを少しだけ後ろにずらしましたが、それ以外は触っていません


2004年07月11日
底上げ効果

SM-9S1と222ESJ

 もう10年経つか。こないだまでTE27邸で通電していたヤツを繋いでみた。最新200万超セパレートと10年前の49800プリメイン。価格差は実に40倍。これは楽しみだ。先日、STR-VZ555ESでD-58ESを鳴らした時には、だらしない音がして驚いたのだが、222ESJはどうだろうか?

今回は反対の意味で驚いた。
 え〜! これで十分。「音の楽しさ」で言えば、パネル導入前のマランツペアよりも良いくらいだ。音を聴いて「さすがセパレート」だと騙される人がきっといると思う。そのくらいイイ音だ。音量を上げると耳に付く感じがあるので、専用リスニングルームでは大差がつくと予想されるが、箱庭で使う限り価格差40倍と10年の月日は感じさせない。良く聴くと、中高域に輝きがあって微妙な音が出にくいとか、低音がワンパターンだとか違いはあるのだが、基本的なクオリティーは確保している。かつてはハイエンドの色彩感に特徴を感じたものが、今回はそれほどでもない。

 部屋が良ければ、安いコンポでもいい音がすると言われるが、本当のことだった。底上げ効果が著しい。調理室の環境が整うと、こんなにも調理が簡単になるものか。そのうち、クリスキットが揃っているかもしれない。


2004年07月13日
No.29LとSM-9S1

どうみても上の方がカッコイイ

 マークレビンソンはあこがれだとか、冷徹なほどの解像度が一般的なイメージだが、以前の僕のように、どうせ癖の強い音なんだろうと思っているマニアもいる。僕の場合、これは「ステレオのすべて」の影響。長岡、金子対決(これは最高だった)でサンスイの方が良いとの結論だったから。実際に三機種使ってみると、国産と比較して「濃厚」なのは間違いないが、癖っぽいとは全く感じない。マークレビンソンも製造時期によってかなり違うみたいで、最新のものはすっきりワイドレンジ系に振られている感じ。自然な厚みは古いモデルの方がある。

 SM-9S1の換わりにNo.29Lを繋いでみた。メッシュが少し荒くなるのと、レンジが狭くなる感じはあるが、これで十分。エッジの強調が少なく、密度感があるので硬めの音なのに五月蝿くない。

 SM-9S1なんて要らないじゃん、と思いつつ確認のため元に戻してみる。これは明らかに違う。薄口にはなるが、オーディオ機器を感じさせないような鳴り方をみせる。音像自体に実在感があり、音が四方八方に拡散するとか左に伸びるとかが手に取るように分かる。ボリウムを上げるほど差が大きくなる。スピード感はさほど変わらない感じだが、低音の筋金加減が相当異なる。

 僕の場合、クオリティーアップの変化は良く分かるのだが、クオリティーダウンの変化はあまり感じないようだ。特にケーブルの違い。
例えば、(AがBよりも高音質と仮定して)A、B、Aの順で聴くと、Bを聴いた時には「それほど悪くない」と感じ、Aに戻して初めて「Bは良くない、Aは良い」という事に気が付く。反対にB、A、Bの順で聴くと、Aを聴いて「素晴らしい、全然違う」と感じるのに、Bに戻してみると「あまり差がないな」という感想になる。結局、相対評価しか出来ないんですね、私は。 また、初めて聴くようなソフトでは、1度目より2度目、2度目より3度目の方が情報量が多く聴こえる。これは英語のヒアリングテストと同様の現象だろう。なにくだらない事書いてるんだろう。所詮、こんな程度の耳だから当てにならないということ。

 SM-9S1はFの付く三人の評論家だけは絶賛しているが、アキュや海外製品に押されて人気がない。オーディオ機器は聴くと何かフレーズが浮かんでくるもの・・・例えば、TA-N1は「ストレート、筋肉質」で、HMA-9500は「切れ込み、野性味」とか・・・だが、SM-9S1は一言で表現するのが困難。どちらかというとしなやかな表現が得意なんだとは思うが、あえて表現すれば「凄まじいHi-Fi」としか言いようがない。ただ、No.29Lと価格差だけの違いがあるとは思えない。

 パネルを導入してから、機器の欠点が消えて長所だけが耳に入るような気がする。安い機器ほど底上げ効果が大きい。「これでなければ!」というようなシビアな機器選びが不要になった。小音量でも痩せないし、大音量でも全く五月蝿くないので、パワーメーターやボリウムを見ないと音量が良く分からない。これはマンションでは問題になりそうだ。

原文は なんでも日記の 7月17日 です。

青い鳥

青い鳥を探している「N」さんが再びお見えになった
なんでも
過去に二度ほど見たという
一度は現用機の「モアイ」の90度設置らしい
しかし「モアイ」では喰い足りないところもあるそうで
先月、カネコ木工製D-58ES-SAを導入されたけど
OZさんもそうだったように
超強力BHに手を焼いているらしい

Nさんは理想的な音像と音場を求めて
日本中のオーディオマニア宅を捜し歩いているのは
承知の事実だけど
僕の印象では
小音量で音像や音場を捜し出すようなNさんの聴き方は
むしろ
BHよりコンデンサーSPの余裕を持った設置が
青い鳥を捜し出せるのでは?
と思ってしまうけど
それでは全く普通で面白くも何ともなくて
大型BHでコンデンサーSPの音を再現するのも趣味の世界で
ある
今回はOZさんが導入したサーロジックのLVパネルの効果を確認するのが目的だが
午前中に我家にお見えになって
午後からOZさん宅に向った

Nさんの求める音像と音場は
前に出るタイプではなくて
ひたすら奥行きと高さを求めるのだ
(注2)
しかし
この再現は不可能ではないが
録音と再生の条件が一致する必要がある
ソフトもハードも
聴く位置もピンポイントでしか再現できない

NさんはLVパネルはセンターパネルを取り去った状態が
好みで
LVパネルの効果は確認できたようですが
今後
どちらの方向へ向うのか

興味深々です





注1、注2
■ ソフトには空間情報があらかじめ入っているのだから、部屋は全域デッド、SPはホーン型の方が良いのではないか?
■ Nさんの求める音像と音場は前に出るタイプではなくてひたすら奥行きと高さを求めるのだ

説明が不十分だったようです、改めて・・・

無響の空間には高さを伴う臨場感は存在しない
初期反射音が無ければ空間情報は音の鮮度を下げるだけ


日東紡音響エンジニアリング(株)の無響室 
 無響室は反射音が殆ど存在しない部屋。この空間にシングルコーンのステレオセットを置いたとき、二つの点音源から高さや奥行きのあるステージが再現されるだろうか?・・・ むろん高さのあるステージなど現れる筈がない(頭部伝達関数参照)。答えは「高さは再現されない、非常に聞こえずらいが奥行きは再現される」である。ソフトに含まれる空間情報がある程度の奥行きを作るが、臨場感には程遠い。高さの情報が全く無いからテーブル板を真横から見るような奥行きができるだけである。

 居間などの臨場感と比較すれば、上にも下にも前後にも拡がらず、左右のコーンを結ぶ直線的なキャンバスに楽器が点として存在するように聞こえる。ソフトの制作者がイメージした立体的なアーキテクチャーは無響の空間ではその姿を現さない。

 楽器のフォルムに深みを与えるために盛り込まれた空間情報であっても、再生系の音空間に高さを表現する能力がなければ実音と同じ直線上に対等に並ぶことになる。実音より弱いレベルの空間情報はエネルギー差によるマスキングで殆ど聞こえてこない。この状態のことをクリアな音と勘違いする可能性が無きにしも非ずであるが、佇まいが表現されることは絶対にあり得ない。そして空間情報が少しでも多過ぎれば、楽器に纏わりつく邪魔者となり、空間情報が音の鮮度を下げる結果となる。

頭部伝達関数


仰角(正面0〜80°)により頭部伝達関数が変化する


音のなんでも小事典/日本音響学会 より

CDやSACDの楽曲の空間情報にこの頭部伝達関数が組み込まれているのか・・? 答えはNoである。バイノーラル録音、VR(バーチャルリアリティー)系のソフト以外では偶然に生成されたものを除いて含まれていない。 


顔の形が頭部伝達関数になる
 音の波が耳に入るとき、頭部の凸凹による反射・回込み、耳介内での反射などにより干渉を起し、鼓膜に伝わる波の強度にはディップやピークが生じる。周波数特性・位相特性がフラットな音圧を特定の方向から与えたとき、鼓膜に到達する音の特性(左のグラフ)がその方向の頭部伝達関数である。

水平方向
 音源が水平斜め方向にあれば左右の鼓膜に届く音の質や時間が微妙にずれる。人はこの現象を利用し音源の方向を知る手掛かりを得ている。無響室(カーテンだらけの部屋)であっても、ソフトに含まれる空間情報から水平方向の定位と奥行きを感じることができる。

垂直方向
 左のグラフは、周波数・位相ともにフラットな音を、顔の正面から上方向に移動したときに鼓膜に到達する音の特性を示す。顔の凸凹などを反映した頭部伝達関数である。グラフの一番奥のデータは上方80度の頭部伝達関数で、0度のものとは明らかに形が違う。
 
ステレオ配置のスピーカーから直接音だけしか耳に届かない環境(無響室や吸音グッズだらけのオーディオルーム)では、0度の頭部伝達関数のみで音楽を聞くことになり、上下方向に拡がる立体感は発生しない。

音源の移動
 スピーカーを0度から80度の方向に徐々に移動し頭部伝達関数の影響を受けた音(頭部伝達関数が畳み込まれた音)が連続的に鼓膜に到達すれば、音源の移動がはっきり分かる。

高さの表現
 無響室では上方や下方からの反射音が皆無、従って垂直方向の頭部伝達関数が有効に働かない。音像定位と立体感はテーブルの板を真横から見るような2次元平面となる。デッドなオーディオルームが臨場感の再現を不得意とする理由である。


プロデューサー、エンジニアの感性
 レコーディングやリミックスでエンジニアのオーディオ的センスが問われるのが楽器やVocal にナマ音の存在感を盛り込むテクニックです。クラシックであればホールの残響音の集音ポイントの選定と実音に加えるホールの残響音のさじ加減。ポップスであればそれぞれの楽器の響きに相応しいリバーブレーターを選ぶセンスと、その量のさじ加減です。

 初めてあるいは久し振りに仕事をするモニタールームであれば、普段の生活の中で「音が良い」「録音が良い」と感じているCDを聴き直し、これから使用するモニターと普段の音とのズレを確認します。モニタールーム毎にスピーカーが異なり、初期反射音の量が違うからです。この作業を省いて空間情報を盛り込んだ音楽制作を行うことはできません。認識にミスがあれば音の悪い楽曲に仕上がってしまうからです。同じプロジェクトが制作した作品でも空間情報にはかなりバラツキがあります。プロのエンジニアだって、日によって・コンディションによってに補正量に誤差が生まれるのです。

 オーディオルームが作り出す初期反射音の方向を正しく設定し、オーディオルームの狭い空間でもブーミーにならない初期反射音の周波数特性を確保すると、初期反射音の量をかなり増やしても楽器の解像度が落ちなくなります。そしてエンジニアの平均的な想定より若干多目の初期反射音を確保しておくと、空間情報が不足気味のソースも含め、音楽をリラックスして楽しめる環境になります。この部分にオーナーの嗜好を反映させると音楽の楽しみがより深くなります。

コンサートホールのようなオーディオルーム
 Stereo誌6月号でご紹介した桂川さんから、暫く前に下記のようなメールをいただき、昨日久し振りにお尋ねしました。4月の取材で私自身予想を超える成果を手にしたのですが、チューニング手法の考え方を理解された氏のその後の進化はすざましく、今日聴かせていただいたフルオーケストラの佇まいは、指揮者の指揮台の上から眺めた景色のようでした。オーケストラ録音の集音マイクは指揮者のすぐ後ろの上方にあるので、マイクロフォンの位置からみたステージがそっくり再現されています。

 「上に積んだパネルは現在バラにしてセンターパネル側方とフローリング前方においてあります。これが実によくて昨日村田さんに聞いていただいたときよりもさらに音場空間が広がっています。音の実体感は少し減少しますがもうこの位置は動かせないです。フローリングを処置しているのに何故か天井の高さもたかくなっている感じです。フロントパネルの内側に背の低いパネルを2重にしておくと低音の密度が増し音の立体感がさらによくなる感じです。関係ないかもしれませんがパネルの見た目が悪いと何故か音も悪くなる気がします。入れれば入れるほど音が良くなる。」


 StainVeil(ステンベール)パネルを斜めに置いてドミノの駒のように重ねたり、2重に重ねたりしている。音の良いホールは複雑な壁面から多重の反射音を返すことで作り上げていくものだが、そのルールがそっくり実践されている。

ルームチューニング vs 機器購入
 ところで男女の仲だって付き合って2年もたつと新鮮な感情が薄れてくるもの、あるとき惚れ込んだオーディオセットだって時とともに新鮮さが薄らいでくるのではないだろうか? 欠点が無くたって薄れてしまう感動のレベルを新鮮に保ち続けるためには、再生音にはナマ音を超える芸術性が必要なのだと想う。

 ひとつの方法がオリジナルの楽器の指向特性を超えるスピーカーを使うことである。直接音と同じ音が壁に向かう360度指向性のスピーカーでは、生演奏を超える存在感の情報が部屋によって作り出される。例えば女性ボーカルの佇まいでは生唾をのみこんでしまうほどの色気がたち込める。普段の生活で生身の声を聞いて平常心を取り戻し、オーディオで感動するという好循環が成立する。スピーカーの背後にLVまたはSteinVeil(ステンベール)パネルを置くと、ホーンスピーカーの音であっても360度指向性スピーカーのような振舞をする。

 非日常的な感動の量を自分の好みに合わせて自由に制御できるオーディオルームが欲しい!、ホームシアターが欲しい!・・・ 皆さんそう願い可能性を求めてハードウエアを買い換えているのだと思います。しかしカーテンを巡らせ吸音グッズだらけになったオーディオルームでは音場の高さが表現できないことは頭部伝達関数の項で説明しました。高さの無い奥行きに埋め込まれたステージの臨場感は、ガラステーブルを真横から見る臨場感に等しく、ガラスの向こうの奥まったところに霞んでしまった空間情報の幻想を追いかける羽目に陥ります。

それでもオーディオ機器を先に買い換えますか?、 それともルームチューニングでしょうか?

 海外製品のオーディオ機器にナマ音を超える芸術性を感じているからハイエンドオーディオの機器類は海外勢が強いのでしょう、ビンテージオーディオもしかりです。しかし進化しきった現代のオーディオ機器の20万と200万の金額の差に、その差ほどの音色の変化が認められないとの声もあります。音楽再生には「周波数特性」、「ひずみ率」などの特性に代表される、記録された音情報を忠実に空気振動に伝達する機能と、人の頭部伝達関数を利用して音場を再創生する機能が要求されています。そして現代のオーディオ機器は余程安価なものを除いて、高忠実度伝送の機能は満たしているのです。しかし機器のグレードにかかわらず、ソフトに含まれる空間情報は単にスピーカーから送り出されるだけです。その後の振る舞いはオーディオファイルが任意に作るものなのです。

 空間情報は楽器の実音に比べれば遥かに小さく、しかも複雑な位相情報を含んでいます。ハイエンド機器のアドバンテージはこの部分の再現性にあります。従ってオーディオルームに頭部伝達関数が有効に働く環境がなければ、機器を買い替えても音場感は変化せず、20万と200万の差が分からないのです。


頭部伝達関数を利用した音場空間
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SPD-P1(P1-kit)によるサブウーファシステム
使用するウーファーユニットが?なSPD-P1では、タイムアライメントが理論値と合わないことがある

  SPD-P1を使ったサブウーファシステムの成否はスピーカーユニットの選択に依存する。SPD-P1の超低音の補正に耐えられるコーンは金属系とケブラー系に限られるようだが、あえて紙のコーンを使うのであれば、コーンの変形による高調波歪が耳に届きにくい位置に配置する必要がある。
  フロントに置くのであれば横向きが有効であるし、今回の事例のようにリスナーの真後ろに置く方法もある。真後ろからの音は聴覚が真正面に錯覚する位置であり、高調波歪も無視できる(聞こえ難い)のでお勧めのポイントだ。しかしタイムアライメントの設定がシビアになり過ぎるのでこれまで採用した事例はなかった。

  ところがいざ実施してみるとタイムアライメントの設定が非常に簡単であることに気がついた。フロント設置でタイムアライメントが正しいかどうか、不安がある場合、真後ろの配置で距離の感覚(メインとサブのSPユニットのレスポンスの誤差)を確認したうえでフロント設置のタイムアライメントを再設定すると良い。勿論D.Cube2やSW2000でも同じ手法が使える。


真後ろ配置のタイムアライメントの設定

ベストポイントが簡単に見つかり、メインとサブの位相差の補正値が求まる。
サブウーファをフロントに戻したときも、取り扱い説明書の理論値+下記の結果による値とすれば良い。

理論値は下記の図ように決定する。D.Cube2、SW2000Dでは通常理論値±0.1mで整合するが、
使用するウーファーユニットが?なSPD-P1では、理論値では整合しないことがある。



初期値は距離の差をセット

D2 = +1.0、
D1 = 0.0


耳を前後に移動し位相整合ポイントを探す

低音による耳への圧迫感がないポイントを探す。たとえば0.3m前方に良い所があれば、補正値は+0.6m(移動距離の倍の値)



正しい値をセットする

D2=1.0m
D1=0.6m

初期設定値は

D2 = -1.0、
D1 = 0.0


正しい値は
D2=-0.0m
D1=0.4m

補正値が+0.6mのサブウーファをフロントに配置すると、D1,D2は下記となる。





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